枕営業から逃げたら江戸にいました。陰間茶屋でナンバー1目指します。

カミヤルイ

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ᒪove Stories 〈第二幕〉 ほぼ❁✿✾ ✾✿❁︎

The Other Side of Love 1

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『ねぇ、本当に後悔しない?』

『今更だろ。……後悔なんか、たくさんしてきたよ。ちっさい頃から一緒にいたのに気持ちに気付いたのが遅かった。気付いてからも素直に認められなくてなかなか伝えられなかった……もっと早くにリョウタとこうなれたはずなのに。それに、最初に抱いたのが教室の硬いい床の上……もっと大事にできたはずなのに……俺、後悔ばっかだよ』

『タツキ……』

『好きだよ、リョウタ。誰かが俺達を間違いだって言っても、例え他になにも残らなくても、俺はリョウタがいればいい。ずっと二人で生きて行こう』

『タツキ、好き……ううん、愛してる』

『バーカ。また俺に後悔させる気か? 先に言わせた、って。……愛してる。リョウタ。永遠に』



「──はい、カット!」
  監督の声が空間を切り、創造の空間は現実に還る。息を詰めて演技を見守っていたスタッフ、協賛関係者から安堵と賞賛のため息が漏れた。

  悠理は涙を拭い、楓真は一度瞬きをして、リョウタとタツキから離脱する。

「お疲れ様。最高のラストカットでした。これでオールアップです!」

「タツキ役柳田楓真さん、リョウタ役鏑木悠理さん、クランクアップです。お疲れ様でしたー!」

  抱き合っていた体を離した二人に豪華な花束と拍手が贈られた。
  拍手を送る中には、ドラマ「この世界の果てまでも」の主題歌を担当した、音楽プロデューサーA……篠宮彬の姿もある。
  ドラマに並び、主題歌「不時着の恋」のセールスも好調で、次の春には社会人になる彬も徐々に顔出しを始めているのだ。


  クランクアップの雰囲気は見世舞台の最終日に似ている。クランクインの時の緊張感も好きだが、やはり、役者達の一体感と満足感を最も感じられるこの時が好きだと悠理は思った。

  しかし余韻に浸る暇なく、このあともインタビューや雑誌の撮影が待っている。悠理は彬に目線だけで「行ってきます」と伝えて、マネージャーと楓真と共にスタジオを出た。
  今のところ二人の関係を知っているのは社長の湯島と悠理のマネージャー、そして楓真だけだ。



  たったニ十分の空きでも体を休めておけば楽で、移動の車の中、悠理も楓真も目を閉じていた。

(俺も後悔ばかりだな)
  楓真の頭に最後のタツキのセリフが浮かぶ。

  ────好きだよ。誰かが俺達を間違いだって言っても、例え他になにも残らなくても、ずっと二人で生きて行こう。

  自分かえでもそれが言えたら良かったと、三百年前の後悔を今でも引きずっている。しかもそれを悠理との共演で再認識させられるなんて。
 そして……これだけ時を重ねて後悔してもなお、やり直しが効かないことは楓真自身がもう一番良くわかっている。

  インタビューや番宣で回る番組で「お二人はプライベートも仲が良いとか。ドラマのファンからはお二人が本当のカップルであって欲しい。鏑木さんになら柳田さんを取られてもいい! なんて声がSNSでも多数上がっていますが」と定型文みたいに聞かれる。

  楓真はそのたびに「僕も悠理だったらって、フラッとは来ますよね、はは」と答えるのだが、悠理は「ないでしょー!」と屈託なく返すのだ。

「楓真は凄く芝居に熱くて、情も深い人間なんです。日本の芸能界……いや、世界を演技で引っ張る力があります。俺は役者として、人として楓真を尊敬してるんです。そして楓真の成功は俺の夢でもあります!」
  今日も悠理は、目をキラキラさせて楓真を見ながらインタビューに答える。
  悠理の……百合の答えは江戸あのころから一貫している。

  でも、もし百合と出会ったのが保科様より早ければ。
  もし百合と出会ってすぐ、自分が世話をしていたら……楓真はたくさんの「if」に苛まれた。

  けれど。
  ────因果だよ。私達の一切は因果で決まっているんだ

  忠彬の口癖。
  因果、と言うのは、今なら「運命」と置き換えることができるんだと思っている。

(もしも、があったとしてもきっと俺では叶わなかったんだな。保科様だから百合を見つけ、見初め、そして身を捨てて迎えに行けたんだ)

  ならば。
  自分が今、記憶を持って現代にいる理由は何なのだろう。
  初めはこの世でこそ百合と添い遂げる為だと思った。けれどそうじゃないのなら────

「柳田さん、視聴者の方からご質問が来ています」
  アナウンサーにフリップを見せられて、楓真は思いに耽っていたことに気づいた。

「はい」
  だが、ずっと聞いていたかのように余裕の笑みで返す。照明器具に照らさせて浮かび上がるように輝く楓真の美しさに、アナウンサーは思わず頬を染めた。

「えーと。こちらのフィリップですね……今後も鏑木さんと共演したいと思いますか。あるとしたら次はどのような作品が良いですか。とありますね。いかがですか?」

(今後の共演……)
  楓真はちらりと悠理を見やる。
  悠理はワクワクとした顔で楓真の答えを待っている。

「ああ、勿論。これからも互いに磨き合いたい役者ですから。……そうですね。共演か……オファーされる物だけでなく、なにか面白いことを自分達で企画して実現させたいですね」
  言いながら楓真の頭に浮かんでくること。

(そうだ。俺が百合と巡り会えた意味……わかった)


  ***


   夜はドラマの打ち上げがあった。三話目から助演に降りた花房瞬も、なんだかんだと見せ場があり、変わらずsakusi-do内での人気もドラマの役でも評判は高かった。

「鏑木クン、お疲れ様。良いドラマだったね」

「花房さん! はい。俺、花房さんと共演できて嬉しかったです」

  トゥンク……。

  大きくはないが、人懐っこい悠理の猫目にまっすぐ見つめられて、瞬のハートは高鳴った。
「あの、鏑木クン。良かった連絡先の交換……」
  交換をしない? と聞き切る前に背筋がヒヤリとした。
(ふ、ふぅまクン!?)
  しかし、左右を見回すと、楓真は向こう側のソファで女性スタッフに囲まれている。

  ではこの刺すような冷気は? と後ほうれん草をゆっくりと振り返る。
「……Aさん……?」

  打ち上げにも招待されていた音楽プロデューサーの篠宮彬が遅れて店に到着し、瞬と悠理の後ろに立っていた。
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