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最強の名
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結果から言うと、最強の名は伊達では無かった。
最初に向かってきたのはブライアンだった。彼は二刀流の使い手の様で、大きさの違う二つの剣を握っていた。その一つを振り下ろした。ユキは一歩ずれて避け、同時に横から薙ぎ払う様にして向かってきた剣を飛んで避けた。
止まない攻撃に、しかし彼女はその全てを避ける。
どんどんと早くなっていく速度にカイトは途中から両者の動きが見えなくなった。
ユキは、酷く楽しそうにこの戦いを満喫している様子だった。
ついにユキが刀に手を掛けた。向かってきた剣を刀で受け止め、力で薙ぎはらった。
一瞬で懐に飛び込み、鳩尾に拳を打ち込んだ。
吹っ飛ぶ彼は空中で姿勢を変え、足から着地した。砂埃を上げて後ろに下がる。目線を上げた。
その瞬間、目の前に現れた刀を剣で防ぎ、しかしそれ以上持たなかった。防いでいたはずの刀が消え、後ろからユキの声がした。
振り向こうとしたら、横に刀が添えられていた。
「初めてこんなにやり合えたよ。強いね」
そう言う彼女は、汗をかいていなかった。それどころが息すら上がっていなかった。ブライアンと正反対。
ブライアンは早まる鼓動を抑え、上がる息を整えた。自分よりも強い存在に初めて会った。
「はっ、……はぁ、…………君は、……素晴らしいよ!初めてだ!こんなにも自分が弱いと感じたのは!しかも、自分よりも幾つも下の女の子に!素晴らしい!!本当に!……俺もまだまだ修行が足りないな!」
まくし立てて興奮した様に話し、そのまま続けて戦おうとする彼に、ユキは面倒臭くなり、頭を殴りつけた。
大声を上げて頭を抱え、その場に蹲る彼を放置し、リチャードの元に戻った。
「協力、してくれるか?」
そう笑いかけるリチャードにブライアンは頷いた。
「もちろん!……ただし一つ条件がある。週に一度、いや、月に一度でいい!彼女と遊ばせてくれ!!」
この場合の遊ぶは、間違いなく試合、決闘の事だろう。リチャードは困った様にユキを見つめる。
「全然いいよぉ。なかなか骨のある人だしね。私も楽しかったし」
その後、先程の客間に戻り、話をした。驚くほど呆気なく終わった話し合いに、カイトは呆れつつ先ずは一安心した。
途中からブライアンに犬の尻尾が生えている様に見えてしまった。特にユキと話しているときは千切れんばかりに振り回している。
中々の大物に懐かれたなと言ったら、
「かっこいいし、強いし、可愛くない?」
そう答えた。やはりユキはユキだった。
呆気なく仲間に引き入れて、カイト達は城に帰ることになった。
城に帰って、次は誰に会いに行くか考えていた。国一番の頭脳を決める大会。オオアラセイトウと言う花の花言葉、知恵の泉、優秀からもじって、セイトウと呼ばれているこの大会があと二十日程で開幕するのだ。
カイトはここに出て現在の元老院と接触しつつ、行く行くは自身が元老院になってしまおうと思っていた。なので、消去法的に、他の人物で悩んでいた。
「魔物の研究をしている博士は今どこに居るんだ?」
「……確か、東の森に出かけているはずです。彼は城に自身の研究室を与えられているので、暫くすれば探しに行かずとも戻って来ますよ」
リチャードの問に答えるアレクは、殆どの元老院の情報を知っていた。感心した様に見つめていたら、仕事の一環なので当たり前だと拗ねた様に話した。
「次はエアリーにしようと思う」
エアリーとは現在の商人トップの女性で、最近元老院に入ったばかりで、貴族になりたてにも関わらず、その資産は貴族に収まらず、国家予算以外の王族の資産とほぼ同等というとんでもない金持ちだ。
今週中にでも会える様にアレクが手配してくれる事になり、話は終わった。
「いやぁ、……一気に暇になったね」
ユキがつまらなそうにそう呟いた。
「そう言うな、思ったよりも事が順調に進んでいるんだ。良いことだろう?」
不意にノックの音がした。ユキがそちらに目を向けたが特に警戒した様子は無かった。リチャードが入る許可をした。
「し、失礼します!!」
入ってきたのは一人のメイドとアレクサンダーだった。カイトは彼女を見たことがあった。城を出入りした時に、何度か此方に話し掛けたそうにしていたのを覚えている。彼女は目をキョロキョロしながら落ち着き無く此方の様子を伺い、アレクに目を向け、意を決した様に口を開けた。
「あ、あの!お料理を!……教ていただきたくて……」
最後の方は頼りなさろうに声を下げた。
「すみません、ついこの間ぽろっとカイト殿の料理の美味しさを漏らしてしまって……、彼女がどうしてもレシピを知りたいと……」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げた。それくらいの事、とカイトは思ったが、中々に真剣な眼差しをしてきたので、とりあえず苦笑し、立ち上がった。
「ユキ、少しユリウスを見ていて貰えるか?」
彼女にユリウスを託し、メイドに厨房に案内する様に言った。ここでやっても良いが、実の所、元々城の厨房に行ってみたかったのだ。どうせならそちらで作って見たい。
「じゃぁ、行ってくるよ」
ついて来ようとする彼らに、見ているだけだとつまらないだろうと部屋に残っている様に言った。作った物は持ってくると約束をして。
ユキは、この日の事を、一生後悔することになる。
最初に向かってきたのはブライアンだった。彼は二刀流の使い手の様で、大きさの違う二つの剣を握っていた。その一つを振り下ろした。ユキは一歩ずれて避け、同時に横から薙ぎ払う様にして向かってきた剣を飛んで避けた。
止まない攻撃に、しかし彼女はその全てを避ける。
どんどんと早くなっていく速度にカイトは途中から両者の動きが見えなくなった。
ユキは、酷く楽しそうにこの戦いを満喫している様子だった。
ついにユキが刀に手を掛けた。向かってきた剣を刀で受け止め、力で薙ぎはらった。
一瞬で懐に飛び込み、鳩尾に拳を打ち込んだ。
吹っ飛ぶ彼は空中で姿勢を変え、足から着地した。砂埃を上げて後ろに下がる。目線を上げた。
その瞬間、目の前に現れた刀を剣で防ぎ、しかしそれ以上持たなかった。防いでいたはずの刀が消え、後ろからユキの声がした。
振り向こうとしたら、横に刀が添えられていた。
「初めてこんなにやり合えたよ。強いね」
そう言う彼女は、汗をかいていなかった。それどころが息すら上がっていなかった。ブライアンと正反対。
ブライアンは早まる鼓動を抑え、上がる息を整えた。自分よりも強い存在に初めて会った。
「はっ、……はぁ、…………君は、……素晴らしいよ!初めてだ!こんなにも自分が弱いと感じたのは!しかも、自分よりも幾つも下の女の子に!素晴らしい!!本当に!……俺もまだまだ修行が足りないな!」
まくし立てて興奮した様に話し、そのまま続けて戦おうとする彼に、ユキは面倒臭くなり、頭を殴りつけた。
大声を上げて頭を抱え、その場に蹲る彼を放置し、リチャードの元に戻った。
「協力、してくれるか?」
そう笑いかけるリチャードにブライアンは頷いた。
「もちろん!……ただし一つ条件がある。週に一度、いや、月に一度でいい!彼女と遊ばせてくれ!!」
この場合の遊ぶは、間違いなく試合、決闘の事だろう。リチャードは困った様にユキを見つめる。
「全然いいよぉ。なかなか骨のある人だしね。私も楽しかったし」
その後、先程の客間に戻り、話をした。驚くほど呆気なく終わった話し合いに、カイトは呆れつつ先ずは一安心した。
途中からブライアンに犬の尻尾が生えている様に見えてしまった。特にユキと話しているときは千切れんばかりに振り回している。
中々の大物に懐かれたなと言ったら、
「かっこいいし、強いし、可愛くない?」
そう答えた。やはりユキはユキだった。
呆気なく仲間に引き入れて、カイト達は城に帰ることになった。
城に帰って、次は誰に会いに行くか考えていた。国一番の頭脳を決める大会。オオアラセイトウと言う花の花言葉、知恵の泉、優秀からもじって、セイトウと呼ばれているこの大会があと二十日程で開幕するのだ。
カイトはここに出て現在の元老院と接触しつつ、行く行くは自身が元老院になってしまおうと思っていた。なので、消去法的に、他の人物で悩んでいた。
「魔物の研究をしている博士は今どこに居るんだ?」
「……確か、東の森に出かけているはずです。彼は城に自身の研究室を与えられているので、暫くすれば探しに行かずとも戻って来ますよ」
リチャードの問に答えるアレクは、殆どの元老院の情報を知っていた。感心した様に見つめていたら、仕事の一環なので当たり前だと拗ねた様に話した。
「次はエアリーにしようと思う」
エアリーとは現在の商人トップの女性で、最近元老院に入ったばかりで、貴族になりたてにも関わらず、その資産は貴族に収まらず、国家予算以外の王族の資産とほぼ同等というとんでもない金持ちだ。
今週中にでも会える様にアレクが手配してくれる事になり、話は終わった。
「いやぁ、……一気に暇になったね」
ユキがつまらなそうにそう呟いた。
「そう言うな、思ったよりも事が順調に進んでいるんだ。良いことだろう?」
不意にノックの音がした。ユキがそちらに目を向けたが特に警戒した様子は無かった。リチャードが入る許可をした。
「し、失礼します!!」
入ってきたのは一人のメイドとアレクサンダーだった。カイトは彼女を見たことがあった。城を出入りした時に、何度か此方に話し掛けたそうにしていたのを覚えている。彼女は目をキョロキョロしながら落ち着き無く此方の様子を伺い、アレクに目を向け、意を決した様に口を開けた。
「あ、あの!お料理を!……教ていただきたくて……」
最後の方は頼りなさろうに声を下げた。
「すみません、ついこの間ぽろっとカイト殿の料理の美味しさを漏らしてしまって……、彼女がどうしてもレシピを知りたいと……」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げた。それくらいの事、とカイトは思ったが、中々に真剣な眼差しをしてきたので、とりあえず苦笑し、立ち上がった。
「ユキ、少しユリウスを見ていて貰えるか?」
彼女にユリウスを託し、メイドに厨房に案内する様に言った。ここでやっても良いが、実の所、元々城の厨房に行ってみたかったのだ。どうせならそちらで作って見たい。
「じゃぁ、行ってくるよ」
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ユキは、この日の事を、一生後悔することになる。
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