70 / 88
第69話 ド・オデッセリアの攻防? 共同戦線⑥ 援護
しおりを挟む
カナタの叫びを聞きながらルミナが目をつぶり、さすがにドゥルグももう駄目かと思い目をつぶって心情的に死を覚悟した瞬間だった。小さな影が、ドゥルグとミノタウロスとの間に割って入ったのは。
「ハアアアアアッ! 魔蹴撃!」
閃光一閃、イルの魔力の込められた強烈な蹴りの一撃が、ドゥルグと一体化しているスカルドラゴンに止めを刺そうとしていたミノタウロスの右腕に一撃を加えて、スカルンを一刀両断しようとしていた巨大な剣の一撃を何とかそらせることに成功する。
しかし勢いあまった巨大な剣の一撃は、そのままの勢いで学院の外壁部分へと突き刺さり、まるで紙切れのようにして外壁を両断して崩壊させていた。
「何とか、間に合ったみたいだね♪」
巨人に一撃を加えた後、近くの崩れかかった建物の上に華麗に着地を決めたイルが、得意げな笑顔を浮かべて楽しげに言った。
どうやら近接戦闘のスペシャリストとも言うべきイルは、フィフスと別れた後この場に駆けつけると同時に、瞬時に事態を理解すると、壊れかかったレンガ造りの建物の壁を駆けつけた勢いそのままに駆け上がり、ドゥルグとミノタウロスとの間に割って入ったようだった。
イルの登場により予想外の反撃を受けたミノタウロスは、グウゥゥゥ……といった低い怒りの混じった唸り声を上げながら、先ほど自分に攻撃を仕掛けてきたものを探し始める。
そのせいでミノタウロスの注意が必然的に学院やスカルン、ルミナたちから離れることになった。それを目にしていたカナタが、もうチャンスは今しかない! そう思って、ルミナに向かって喉が張り裂けんばかりに声を張り上げて叫ぶ。
「ルミナ――っ!」
「わかってる」
カナタの呼びかけにルミナが、ここが戦場であることを忘れてしまうほどの落ち着いた、凛とした声音で答える。
「使うわ。カナタ、ここをお願い」
「ああ、わかってる。任せとけ」
コクリと頷くと、ルミナはもうなにも言わずにただ二つのオレンジ色の瞳を閉じて、自身の魔力を高めるために意識を集中させる。
そんなルミナの高まる魔力に感づいたのか、それとも野生の勘とでも言うべき物が働いたのかはわからないが、ミノタウロスは自分に攻撃を仕掛けてきた者を探し出すことよりも、魔力を高め始めているルミナのほうを優先して攻撃すべきと判断したらしく、彼女のいるほうへと急速に接近を開始した。
その様子に気付いたカナタが、そうはさせまいと、
「やらせるかよ!」
と、一人声を上げ、残っていた矢の設置されているバリスタの弦に手をかけると、それを一人引き絞りながら叫んだ。
「みんなっ頼む!」
そんなカナタの言葉に答えるようにして、彼の近くにいた何人かの学院の生徒たちが手を貸してくれる。
カナタは一度そちらを振り向き礼の意味合いを込めて力強く頷くと、カナタを手伝ってバリスタの弦を引いてくれていた生徒たちも頷き返してくる。
そして、カナタたちは気合の雄叫びと共に引き絞っていたバリスタの矢を解き放った。
「食らいやがれ!」
しかしミノタウロスの右目を狙って解き放たれたその一撃は、奴の振るう左手の一振りによってあっさりと打ち落とされてしまう。
だが、カナタの意図を察したのか、いつの間にか手近な建物の外壁を駆け上っていたイルが、ミノタウロスの死角に向かって跳躍すると、間髪いれずに足技による何十発もの連続攻撃を放った。
「僕のル~ちゃんには、指一本たりとも、触れさせないんだから! 魔蹴技、蓮華!」
死角から放たれた何十発ものイルの足技を、顔の左壁面でまともに喰らったミノタウロスは、思わずたたらを踏んでその動きを停滞させた。
そこへドゥルグが最後の力を振り絞り、ボロボロになった骨格で崩れ落ちそうになりながらも体当たりを仕掛ける。
「なんだかよくわからんが、邪魔はさせんぞ!」
しかし敵もさるもの攻撃を仕掛けてきたイルを腕で払いのけ、瀕死のドゥルグを肩であっさりと弾き飛ばす。
もうこれ以上の足止めは無理かと思われた矢先、そこへ学院から最後の力を振り絞ったのか援護の魔法や複数の矢が飛んだ。
しかしそれらの攻撃を、ミノタウロスはまったく避けるそぶりすら見せずに真正面から受け止めると、まるで何事もなかったかのように目標に向かって前進してくる。
そして、ミノタウロスはとうとうルミナの眼前までたどりつき、彼女を真正面に見据えると、自身の右手に持っている巨大な剣を振りかぶる。
しかも、それに左手を添えて大上段に振りかぶった。
そして、周囲に物凄い轟音と風圧を巻き起こしながら雄叫びを上げると、物凄い勢いで打ち下ろしてきたのである。
「グルオオオオォォ――ッ!」
「ルミナ――ッ!」
「ル~ちゃん!」
「ルミナ女史!」
辺りに彼女を心配する仲間達の声が響き渡った。
「ハアアアアアッ! 魔蹴撃!」
閃光一閃、イルの魔力の込められた強烈な蹴りの一撃が、ドゥルグと一体化しているスカルドラゴンに止めを刺そうとしていたミノタウロスの右腕に一撃を加えて、スカルンを一刀両断しようとしていた巨大な剣の一撃を何とかそらせることに成功する。
しかし勢いあまった巨大な剣の一撃は、そのままの勢いで学院の外壁部分へと突き刺さり、まるで紙切れのようにして外壁を両断して崩壊させていた。
「何とか、間に合ったみたいだね♪」
巨人に一撃を加えた後、近くの崩れかかった建物の上に華麗に着地を決めたイルが、得意げな笑顔を浮かべて楽しげに言った。
どうやら近接戦闘のスペシャリストとも言うべきイルは、フィフスと別れた後この場に駆けつけると同時に、瞬時に事態を理解すると、壊れかかったレンガ造りの建物の壁を駆けつけた勢いそのままに駆け上がり、ドゥルグとミノタウロスとの間に割って入ったようだった。
イルの登場により予想外の反撃を受けたミノタウロスは、グウゥゥゥ……といった低い怒りの混じった唸り声を上げながら、先ほど自分に攻撃を仕掛けてきたものを探し始める。
そのせいでミノタウロスの注意が必然的に学院やスカルン、ルミナたちから離れることになった。それを目にしていたカナタが、もうチャンスは今しかない! そう思って、ルミナに向かって喉が張り裂けんばかりに声を張り上げて叫ぶ。
「ルミナ――っ!」
「わかってる」
カナタの呼びかけにルミナが、ここが戦場であることを忘れてしまうほどの落ち着いた、凛とした声音で答える。
「使うわ。カナタ、ここをお願い」
「ああ、わかってる。任せとけ」
コクリと頷くと、ルミナはもうなにも言わずにただ二つのオレンジ色の瞳を閉じて、自身の魔力を高めるために意識を集中させる。
そんなルミナの高まる魔力に感づいたのか、それとも野生の勘とでも言うべき物が働いたのかはわからないが、ミノタウロスは自分に攻撃を仕掛けてきた者を探し出すことよりも、魔力を高め始めているルミナのほうを優先して攻撃すべきと判断したらしく、彼女のいるほうへと急速に接近を開始した。
その様子に気付いたカナタが、そうはさせまいと、
「やらせるかよ!」
と、一人声を上げ、残っていた矢の設置されているバリスタの弦に手をかけると、それを一人引き絞りながら叫んだ。
「みんなっ頼む!」
そんなカナタの言葉に答えるようにして、彼の近くにいた何人かの学院の生徒たちが手を貸してくれる。
カナタは一度そちらを振り向き礼の意味合いを込めて力強く頷くと、カナタを手伝ってバリスタの弦を引いてくれていた生徒たちも頷き返してくる。
そして、カナタたちは気合の雄叫びと共に引き絞っていたバリスタの矢を解き放った。
「食らいやがれ!」
しかしミノタウロスの右目を狙って解き放たれたその一撃は、奴の振るう左手の一振りによってあっさりと打ち落とされてしまう。
だが、カナタの意図を察したのか、いつの間にか手近な建物の外壁を駆け上っていたイルが、ミノタウロスの死角に向かって跳躍すると、間髪いれずに足技による何十発もの連続攻撃を放った。
「僕のル~ちゃんには、指一本たりとも、触れさせないんだから! 魔蹴技、蓮華!」
死角から放たれた何十発ものイルの足技を、顔の左壁面でまともに喰らったミノタウロスは、思わずたたらを踏んでその動きを停滞させた。
そこへドゥルグが最後の力を振り絞り、ボロボロになった骨格で崩れ落ちそうになりながらも体当たりを仕掛ける。
「なんだかよくわからんが、邪魔はさせんぞ!」
しかし敵もさるもの攻撃を仕掛けてきたイルを腕で払いのけ、瀕死のドゥルグを肩であっさりと弾き飛ばす。
もうこれ以上の足止めは無理かと思われた矢先、そこへ学院から最後の力を振り絞ったのか援護の魔法や複数の矢が飛んだ。
しかしそれらの攻撃を、ミノタウロスはまったく避けるそぶりすら見せずに真正面から受け止めると、まるで何事もなかったかのように目標に向かって前進してくる。
そして、ミノタウロスはとうとうルミナの眼前までたどりつき、彼女を真正面に見据えると、自身の右手に持っている巨大な剣を振りかぶる。
しかも、それに左手を添えて大上段に振りかぶった。
そして、周囲に物凄い轟音と風圧を巻き起こしながら雄叫びを上げると、物凄い勢いで打ち下ろしてきたのである。
「グルオオオオォォ――ッ!」
「ルミナ――ッ!」
「ル~ちゃん!」
「ルミナ女史!」
辺りに彼女を心配する仲間達の声が響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる