彼の人達と狂詩曲

つちやながる

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おもう

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俺は誰もいない家の中が怖くなった。
嵐だろうと暑かろうと外で過ごすようになった。
元々は感覚も無い魔獣なんだからこれでいいと思う。

中身は人間だったけど物欲があった訳でも無い。でも、もう今世で気になる物はこの家だけだった。だからなのか家からは離れられなかった。

そしてこの首輪のタグの組紐がいつか切れたら失くすんじゃないかと不安になった。
外して何処かに仕舞ったらいいとも思ったけど、それも嫌だった。離したくなかった。

手で触って確認出来るし紐に余裕が出来てタグが観れる。それだけで、もう人の形以外の擬態になる気が無くなった。

あれ?これって俺も病んでる?

人の形で魔獣だけど変に知能あるから、どうしたらいいかわからなくなった。

新天地?魔獣も縄張りあるって知ってる。弱い獣の俺には無理だ。
人の町?喋れないし擬態だし補食なんて見られたらもう。とけ込めないなあ。
ここに居るのが一番安全だと思った。

生まれたこの地で人間に擬態して、生まれたままの姿で毎日ボーッとして過ごす。
触手が伸びるから落ち葉を適当に捕食したり、小川も目の前だし生命維持は出来た。

たまに人だった前世を思い出した。

魔物より全然よかったんだなあ。

来世を考えるのは延々過ぎて辛いからしないんだけど最近また考える。

今世って何か意味あるの?
魔獣になったのは、最近人の転生を飽いて文句だらだら言ってた罰なのかなあ?
これはこれで大変だと身にしみたよ。生き物は皆同じで苦労してるんだね。

木に凭れ、ぼーっとして無になって、空腹感も無く本能で補食しては眠る。
ただそれだけだった。
ふふ、俺ちゃんと獣だね。

落ち葉を踏む音がして目が開いた。

体は雪で下半身が埋もれていた。首を傾げると頭上の雪がボトリと落ちる。冷たくもないし体も凍ったりしない。首輪を視認してホッとする。雪は白くて奇麗だな。
今度は雪を踏む音がした。
何か居るみたい。聞こえた方角に視線だけ向けたけど何もいなかった。ここ数年で道だった場所も草木で埋もれて無くなった。降雪した森に入ると危険だから人は寄り付かない。多分鹿や魔物だろうと目を閉じて音だけ聞き入るようにしたけど、俺はうとうとし始めた。


歩いてる音がする。
雪の森は危ないから気をつけて。


パチパチと火の粉が爆ぜる音に変わった。
目が開いて暖炉の淡い光が赤く照らすのを見た。
ここは入るのが怖かったキングスの家の中だった。無感覚なのに全身がゾワリとした。ここに居たくないって心身が拒否反応を起こしているのを自覚して、人の擬態が瞬間で解けた。

ずるずると影を踏みながら体を引きずり出口に向かう。首輪、ちゃんとある。体の中に大事に包み込んだ。これは俺の宝物だから。

ぐんっと何かに引っかかって体が進まなくなった。
やだよ。誰もいないここから出るんだ。
何に引っかかった?


「どこに行くんだモル」
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