王様のねこ

つちやながる

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番外編☆だって僕はネコなの1

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 ゴロゴロゴロ

 喉が鳴るのは仕方がない。嬉しかったり甘えたかったりリラックスすると自然とそうなるの。だって僕はネコだから。




「ジオ、おはよう」

 大きな手に頭がすっぽり包まれる。

 んふぅ。
 王様なの。

 僕は低くて心地良い声に名前を呼ばれるのが好き。その人が何でか眩しく見えるの。お日様で金髪もきらきらしてるから?

 胸がね、ぽかぽかするのなの。
 そいでね、笑っちゃうし嬉しくなるの!

 ジオは頭を撫でる手を前脚でクロスして捕まえる。それは後脚もピーンッと伸ばす寝起きの背伸びのついでだ。

 もっと撫でてー。
 そいでね、触ってて!

 それは底なしの沼のように飽くることない貪欲でいて自然な欲求。この手の温もりは甘く感じるし、ただ容易く離したくないのだ。

 それが何を意味するのか未だ自覚はない。

 ゴロゴロゴロ

「ははっ寝ぼけてるな?今日から視察だから俺は行くぞ?留守番頼むよジオ」

 えー?
 留守番?

 くしゃっと頭を揺さぶられた気がした。

 視察ってあれなの。王様が仕事でね、外に行ってね、長い時間横に居なくて僕がひとりになるの。

 ・・・ひとり。

 ゴロ…

 調子良く鳴っていた音が止む。

 王様の部屋は広い。大きめの体躯とはいえジオはただのネコ。人の存在しない空間は空気の対流が減り温度も下がる。それに二日以上不在だと防犯上鍵を掛け、王様のネコだといえ締め出されるのだ。

「!」

 ようやく目が開いたジオは頭を起こし耳を前後に振り室内を把握した。扉は口を閉ざし既に王ウォリックはいない。
 飛び起きたジオは、最近出来た専用扉から長く広い廊下へ走り出た。まだ間に合う。走れば大好きなウォリックを見送れる。
 長く艶やかな銀色の毛並は流れ、獣である事を思い出したかの如くの速さだ。

 もう何度目か忘れたけど視察の朝は早い。寝覚めの悪いジオは、顔を見て朝の挨拶も食事も一緒に出来ないのが不満だった。

 またなの。なんでなの。寂しいって知ってるけどモヤモヤするの!だから。だから王様にちゃんと行ってらっしゃいするの!

 見慣れた城内は王の居城。
 三階から二階へ、そこから国を動かす中枢部に渡り一階の扉門と正門へと向かう。

『いいかジオ。視察というのはな、国は安泰だと知らしめる必要なパフォーマンスだ。民が見えない国と政策を王に置換して相互確認するいう…、まあ、仕事だ。わかるか?』
『えっとねー、ここにいるよってことー?』
『そうだな。ジオ、俺はここにいるぞ』

 いつかウォリックと話した事を思い出す。
 執政官と共に出発するのは正門からとわかったのは最近の事。

 王様のネコと言われてる事も、生き物なら何でも拾い飼育する事で有名な王様で、今や自分だけ飼われて可愛がられている事も理解している。

 王様が好きなの。
 仲良しで友達なの!

 ウォリックとジオは、王様とネコ。
 それは誰が見ても一緒にいる時間が多く、仲が良く愛情溢れる関係だった。

 もうすぐなの。
 門に出れるドアなの!

 何人もの官僚とすれ違おうと、王の飼い猫の邪魔をする者は皆無。しかし大きな扉に猫用扉は無い。尾でバランスを取り急ブレーキを掛けた。

 立ち塞がる強敵は重厚で彫刻が施された扉だ。猫には開けれない。前脚を揃えて座り、それを見上げて出来ることはひとつ。

「にゃー」

 と、ひと鳴き。

 誰がが開けてくれるしか手筈が無いが、それは直ぐ叶えられた。

「……何だクソネコ。遅かったな」
「にゃっ!」

 視界一面真っ黒な狼が牙を剥き出し、獲物を射抜く金色の目を細めて見下ろされた事に全身の毛が逆立つ。一瞬にして警戒の姿勢で身構えるのは本能。

「フーーッ!」
 ルードなの!

「毎度寝坊してご苦労なこった。今回も残念だったな」

 小馬鹿にした鼻息が聞こえた。つまり見送りは出遅れたという事だ。ぼんっと膨らんだ尻尾がしなっと垂れた。

「ぅに」
 う、うう。間に合わなかったの。

 しんなり萎れた白銀のふさふさの猫を、漆黒の人狼ルードが抱き上げた。

 ウォリックとルードは幼馴染。遠慮の無い関係の間に入る事になったジオは、口は悪いけど優しい狼も気に入っていた。

 ジオに触れるのはウォリックとルードだけというのが城内の暗黙のルール。

「日が暮れる前に帰るってよ」
「?!」

 ルードの言葉に耳をピンッと立て見上げた。

「にゃ、にゃぅにゃうなうなぁぁ!」
 二日って言ってたよ?
 ほんと?ほんとに?
 ほんとだったら僕ね、嬉しいの!

「何言ってんのか全っ然わかんねー。俺は狼だぞクソネコ」
「にゃー」
 クソネコ違うの。
「知ってるか?鳴くのは飼い猫だけだとよ。野良は静かでいいなあクソネコ」
「にゃ!にゃぅにゃ!」
 意地悪!優しいのどっちなの!

 ジオは訴える様にルードの腕から肩に前脚を置き立ち上がった。

「昼までだぞ」
「にゃ!」
 一緒なの!

 牙を見せ口角をあげたのは苦笑。仕事中だろうと自分の相手を昼までしてくれるという事だ。

「にゃ!」
 ひとりじゃないの!

「うるせえクソネコ」
「にゃー!」
 クソネコ違うの!

 立った姿勢で見えたのは視点の高さが変わった大きな扉。

 王様もルードもここから出れるの。
 僕はいつも誰かがいないと無理なの。

「……にゃー」

 ・・・王様に会える扉なの。

 ジオはまたよく分からない自分のモヤモヤを感じて小さく鳴いた。
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