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7 解放
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彩香は符を書き上げると獏を見上げ、霊獣に向かって符を投げる。
手から離れた符は、まるで生き物のようにひらりと空中を舞い、獏の胴を締め上げている鎖に絡みついた。
符の紋様が輪を描いて広がる。
ぎ、と鈍い音が響く。
鎖の表面にひびが走り、そこから黒い汚れが噴き出した。
汚れは空中で霧散し、代わりにやわらかな光が鎖の内側から漏れ始めた。
「縛りはほどけよ」
彩香がそう唱えると、筆で描かれた線が淡い金色の光を帯びる。
「獣はそらへ」
獏の様子を見つつ、彩香は手にした次の符を投げる。それ自体が意思を持っているかのように、符が鎖の結び目へ次々に張り付く。
最後の一枚が黒鎖の結び目を覆うと、獏がまばゆい光に包まれた。
しゃらん、と乾いた音を立てて鎖が弾け飛ぶ。黒色の鎖は細かな粒となって消た。
獏の身体は鎖の呪縛を解かれ、ぶるりと体を震わせ黒の残滓をふるい落とす。
濁っていた瞳に、ようやく霊獣らしい澄んだ光が戻る。
獏はゆったりとした動作で、今度は静蘭の胸元へ鼻先を寄せると大きく息を吸い込む。
すると静蘭の胸から黒いもやが細い糸のように伸びて、獏の口の中へ吸い込まれていく。同時に部屋の空気もみるみるうちに軽くなってていくのが分かった。
静蘭の顔から、苦悶の色が薄れていく。
蒼白だった頬には赤みが戻り、こわばっていた眉間の皺がほどけ、まつげが震える。
「……っ」
喉の奥から、小さな息が漏れる。閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がり、部屋の天井を映した。
「静蘭!」
慧華が叫び、寝台のそばへ駆け寄った。泰然も息を飲み、妻の後に続く。
今度は彩香も止めはしない。
「……お父さま……お母さま……私、どうして……?」
「もう大丈夫よ」
「良かった、本当に良かった」
まだ焦点の合わない瞳で二人を見上げながら、静蘭が柔らかく微笑む。
両親の姿に安堵したのか、静蘭は再びまぶたを閉じた。しかし今度の眠りは穏やかなものだと分かる。
呼吸は規則正しく、表情も穏やかだ。
天井の近くに浮かぶ獏は、優しい眼差しで静蘭を一瞥してから、彩香に向かい僅かに鼻先を上下させた。
その様子はまるで「もう大丈夫だ」とでも言っているみたいで、彩香はほっとする。
獏の姿は淡く滲み、やがて光の粒となって消えていった。
(さてと、ここからが厄介だわ)
召喚獣には、当然「召喚した術士」が存在する。
己が呼び出した獣が消えれば、当然術者にもそれは伝わる。
つまり、静蘭を害そうとした人物に、計画が阻止されたことも気づかれるという事だ。
手から離れた符は、まるで生き物のようにひらりと空中を舞い、獏の胴を締め上げている鎖に絡みついた。
符の紋様が輪を描いて広がる。
ぎ、と鈍い音が響く。
鎖の表面にひびが走り、そこから黒い汚れが噴き出した。
汚れは空中で霧散し、代わりにやわらかな光が鎖の内側から漏れ始めた。
「縛りはほどけよ」
彩香がそう唱えると、筆で描かれた線が淡い金色の光を帯びる。
「獣はそらへ」
獏の様子を見つつ、彩香は手にした次の符を投げる。それ自体が意思を持っているかのように、符が鎖の結び目へ次々に張り付く。
最後の一枚が黒鎖の結び目を覆うと、獏がまばゆい光に包まれた。
しゃらん、と乾いた音を立てて鎖が弾け飛ぶ。黒色の鎖は細かな粒となって消た。
獏の身体は鎖の呪縛を解かれ、ぶるりと体を震わせ黒の残滓をふるい落とす。
濁っていた瞳に、ようやく霊獣らしい澄んだ光が戻る。
獏はゆったりとした動作で、今度は静蘭の胸元へ鼻先を寄せると大きく息を吸い込む。
すると静蘭の胸から黒いもやが細い糸のように伸びて、獏の口の中へ吸い込まれていく。同時に部屋の空気もみるみるうちに軽くなってていくのが分かった。
静蘭の顔から、苦悶の色が薄れていく。
蒼白だった頬には赤みが戻り、こわばっていた眉間の皺がほどけ、まつげが震える。
「……っ」
喉の奥から、小さな息が漏れる。閉じられていた瞼がゆっくりと持ち上がり、部屋の天井を映した。
「静蘭!」
慧華が叫び、寝台のそばへ駆け寄った。泰然も息を飲み、妻の後に続く。
今度は彩香も止めはしない。
「……お父さま……お母さま……私、どうして……?」
「もう大丈夫よ」
「良かった、本当に良かった」
まだ焦点の合わない瞳で二人を見上げながら、静蘭が柔らかく微笑む。
両親の姿に安堵したのか、静蘭は再びまぶたを閉じた。しかし今度の眠りは穏やかなものだと分かる。
呼吸は規則正しく、表情も穏やかだ。
天井の近くに浮かぶ獏は、優しい眼差しで静蘭を一瞥してから、彩香に向かい僅かに鼻先を上下させた。
その様子はまるで「もう大丈夫だ」とでも言っているみたいで、彩香はほっとする。
獏の姿は淡く滲み、やがて光の粒となって消えていった。
(さてと、ここからが厄介だわ)
召喚獣には、当然「召喚した術士」が存在する。
己が呼び出した獣が消えれば、当然術者にもそれは伝わる。
つまり、静蘭を害そうとした人物に、計画が阻止されたことも気づかれるという事だ。
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