6 / 6
6
しおりを挟む
「やばい、やばい、やばい! なによアレ! どうなってんのよ!」
エミリは爪を噛みながら部屋の中を行ったり来たりと落ち着かない。
階下からは怒鳴り声や何かを壊す音が絶え間なく響いている。
扉には鍵をかけ、念のため椅子や机置いて簡単なバリケードを作ったけれどとても安心などできない。
『悪役令嬢ローズ・ブラッド』を無事に王子と婚約破棄させ、待ちに待ったハーレムエンドに突入したのだが……聖女エミリの夢見た酒池肉林はたった一夜で崩壊した。
「シナリオは完璧にクリアしたはずなのに、どうしてこんなことになるのよ!」
攻略対象全員のフラグは回収してハーレムエンドへと繋がるローズの追放も無事に終わり、王家からは立派な屋敷を与えられ、聖女と王太子の婚約を祝うパーティーが開かれた。
そして昨夜、エミリはダニエルと結ばれた。
しかし翌朝目覚めるとダニエルの姿はベッドにはなかった。ここで少し違和感を覚えたけれど、どうせこの先は攻略したイケメンを取っ替え引っ替えだと気楽に考えていたのだが…。
何故かそれまで全く姿を見せなかった「宰相令息の母親」が乗り込んできたのである。
「可愛いボクチャンから手を離しなさい! このアバズレ!」
「やめてよママァ。ぼく聖女様とエッチがしたいんだよぉ! 初めては聖女様がいいよぉ。でも一人じゃ恐いから、ママもそばにいてね」
「仕方のない子ねえ。ちゃんとママがお手伝いしてあげるから、安心なさい」
ひっくり返って泣き叫ぶ宰相令息(マザコンと表記します)の遣り取りに、エミリは真っ青になった。
けれど騒ぎはこれで終わらない。
「聖女殿、このようなマザコン男はすぐに叩き出すべきですぞ」
バカにしたように言ってマザコンを蹴ろうとした騎士団長の息子(暴力男と表記します)のズボンを、マザコンが偶然掴んだ。次の瞬間、下着ごとズボンが引き下ろされてしまい暴力男の下半身が露出する。
「げーっ」
吐いたのはエミリではなく、公爵子息のグラズだった。他にももらいゲロをした男達の間から、ひそひそと声が聞こえてくる。
「あの噂は本当だったのか」
「上級娼館は、女性に対する暴力沙汰で軒並み出入り禁止だからな。おおかた場末の娼館か、性病検査もしない行きずりの女から病気をもらったのだろう」
「しかし…形が判別できないほどとは。確かあの性病は脳にまで影響を及ぼすと聞くが…おええっ」
吹き出物で覆われた下半身を晒され、笑いものにされた暴力男は怒りに顔を真っ赤にして暴れ始めた。
「うるさい黙れ! これは立派な男の証! ベッドでこのモノをお試しくださいエミリ嬢!」
相手かまわず殴りつけ暴れる暴力男の目的はただ一つ。エミリを我が物にすることだ。咄嗟にエミリは「この暴力男を取り押さえた人と、今夜ベッドを共にするわ!」と叫んで自室へと避難してきたのだ。
「どうしよう。あんなのとヤッたら、私まで変な病気移されちゃうじゃない。殿下はどこへ行ったのよ…まさかヤり逃げしたんじゃ……」
「エミリ」
「殿下!」
どこから入ったのか、王太子ダニエルの姿にエミリはほっと息を吐く。
「一体どうやってこちらへ?」
「この屋敷は王家の所有物だ。非常時に備えて隠し扉が幾つもあるんだよ」
やはりダニエルは自分を心配して戻ってきてくれたのだと、エミリは心の中でにやりと笑う。
(そうよ。フラグ回収は完璧だったんだから、攻略相手が裏切るわけないわ)
「ブラッド公爵家の財産没収と、爵位返上に関しての書類にサインさせるのに手間取ってね。全く使えない文官ばかりで嫌になる」
「財産…爵位返上?」
「ああ、ローズが自らの非を認めたからね。婚約破棄に関して違約金を請求したんだ。グラズも仕事ができる男ではないし、これ以上飼っていても意味ないからね」
笑顔で話すダニエルを前に、エミリの背を冷たい物が伝う。
「階下の騒ぎをグラズの責にすれば丁度いいだろう。それとエミリ、君は私の妾になることが決定した」
「え?」
「やっぱり平民の女は王妃にできないよ。それにもう「聖女の処女」はもらったし興味ないんだ。でも想像したより普通だったね。がっかりしたよ」
あははと笑うダニエルを前に、エミリは怒りと羞恥で真っ赤になった。
「じゃああなた、初めから私の体が目的だったのね!」
「当然じゃないか。神殿の連中はうるさいから、君を妻に迎えるとでも言わなければ手は出せなかったし。でももう恋愛ゲームは終わりだ」
階下での騒ぎに悲鳴が混ざる。誰かが「医者を!」と叫ぶが、怒声にかき消された。
「二階へ上がる前にナイフを何本か置いてきたから、誰かが使ったのだろう。精々殺し合ってくれると助かる。余計なお喋りをする口は少ない方がいい」
「最低っ」
「大人しくしていれば妾として飼ってやる。けど私に逆らえばどうなるか、分かるだろう?」
優しげな微笑みを浮かべるダニエルだが、その目に感情は無い。
「さてと、今頃路頭に迷って泣いているローズを迎えに行ってやらないとな。野盗にでも処女を散らされたら目も当てられない」
「どうしてローズを?」
「あれは顔も頭もいい。側妃として迎えれば、お前と違って色々と使える。妹は躾ければ外交の駒にもできるだろう」
恐る恐る問うたエミリに、ダニエルが平然と答える。
『冷血王ダニエル』とその名を知られた若き王が断頭台に散るのは数年先の事である。
エミリは爪を噛みながら部屋の中を行ったり来たりと落ち着かない。
階下からは怒鳴り声や何かを壊す音が絶え間なく響いている。
扉には鍵をかけ、念のため椅子や机置いて簡単なバリケードを作ったけれどとても安心などできない。
『悪役令嬢ローズ・ブラッド』を無事に王子と婚約破棄させ、待ちに待ったハーレムエンドに突入したのだが……聖女エミリの夢見た酒池肉林はたった一夜で崩壊した。
「シナリオは完璧にクリアしたはずなのに、どうしてこんなことになるのよ!」
攻略対象全員のフラグは回収してハーレムエンドへと繋がるローズの追放も無事に終わり、王家からは立派な屋敷を与えられ、聖女と王太子の婚約を祝うパーティーが開かれた。
そして昨夜、エミリはダニエルと結ばれた。
しかし翌朝目覚めるとダニエルの姿はベッドにはなかった。ここで少し違和感を覚えたけれど、どうせこの先は攻略したイケメンを取っ替え引っ替えだと気楽に考えていたのだが…。
何故かそれまで全く姿を見せなかった「宰相令息の母親」が乗り込んできたのである。
「可愛いボクチャンから手を離しなさい! このアバズレ!」
「やめてよママァ。ぼく聖女様とエッチがしたいんだよぉ! 初めては聖女様がいいよぉ。でも一人じゃ恐いから、ママもそばにいてね」
「仕方のない子ねえ。ちゃんとママがお手伝いしてあげるから、安心なさい」
ひっくり返って泣き叫ぶ宰相令息(マザコンと表記します)の遣り取りに、エミリは真っ青になった。
けれど騒ぎはこれで終わらない。
「聖女殿、このようなマザコン男はすぐに叩き出すべきですぞ」
バカにしたように言ってマザコンを蹴ろうとした騎士団長の息子(暴力男と表記します)のズボンを、マザコンが偶然掴んだ。次の瞬間、下着ごとズボンが引き下ろされてしまい暴力男の下半身が露出する。
「げーっ」
吐いたのはエミリではなく、公爵子息のグラズだった。他にももらいゲロをした男達の間から、ひそひそと声が聞こえてくる。
「あの噂は本当だったのか」
「上級娼館は、女性に対する暴力沙汰で軒並み出入り禁止だからな。おおかた場末の娼館か、性病検査もしない行きずりの女から病気をもらったのだろう」
「しかし…形が判別できないほどとは。確かあの性病は脳にまで影響を及ぼすと聞くが…おええっ」
吹き出物で覆われた下半身を晒され、笑いものにされた暴力男は怒りに顔を真っ赤にして暴れ始めた。
「うるさい黙れ! これは立派な男の証! ベッドでこのモノをお試しくださいエミリ嬢!」
相手かまわず殴りつけ暴れる暴力男の目的はただ一つ。エミリを我が物にすることだ。咄嗟にエミリは「この暴力男を取り押さえた人と、今夜ベッドを共にするわ!」と叫んで自室へと避難してきたのだ。
「どうしよう。あんなのとヤッたら、私まで変な病気移されちゃうじゃない。殿下はどこへ行ったのよ…まさかヤり逃げしたんじゃ……」
「エミリ」
「殿下!」
どこから入ったのか、王太子ダニエルの姿にエミリはほっと息を吐く。
「一体どうやってこちらへ?」
「この屋敷は王家の所有物だ。非常時に備えて隠し扉が幾つもあるんだよ」
やはりダニエルは自分を心配して戻ってきてくれたのだと、エミリは心の中でにやりと笑う。
(そうよ。フラグ回収は完璧だったんだから、攻略相手が裏切るわけないわ)
「ブラッド公爵家の財産没収と、爵位返上に関しての書類にサインさせるのに手間取ってね。全く使えない文官ばかりで嫌になる」
「財産…爵位返上?」
「ああ、ローズが自らの非を認めたからね。婚約破棄に関して違約金を請求したんだ。グラズも仕事ができる男ではないし、これ以上飼っていても意味ないからね」
笑顔で話すダニエルを前に、エミリの背を冷たい物が伝う。
「階下の騒ぎをグラズの責にすれば丁度いいだろう。それとエミリ、君は私の妾になることが決定した」
「え?」
「やっぱり平民の女は王妃にできないよ。それにもう「聖女の処女」はもらったし興味ないんだ。でも想像したより普通だったね。がっかりしたよ」
あははと笑うダニエルを前に、エミリは怒りと羞恥で真っ赤になった。
「じゃああなた、初めから私の体が目的だったのね!」
「当然じゃないか。神殿の連中はうるさいから、君を妻に迎えるとでも言わなければ手は出せなかったし。でももう恋愛ゲームは終わりだ」
階下での騒ぎに悲鳴が混ざる。誰かが「医者を!」と叫ぶが、怒声にかき消された。
「二階へ上がる前にナイフを何本か置いてきたから、誰かが使ったのだろう。精々殺し合ってくれると助かる。余計なお喋りをする口は少ない方がいい」
「最低っ」
「大人しくしていれば妾として飼ってやる。けど私に逆らえばどうなるか、分かるだろう?」
優しげな微笑みを浮かべるダニエルだが、その目に感情は無い。
「さてと、今頃路頭に迷って泣いているローズを迎えに行ってやらないとな。野盗にでも処女を散らされたら目も当てられない」
「どうしてローズを?」
「あれは顔も頭もいい。側妃として迎えれば、お前と違って色々と使える。妹は躾ければ外交の駒にもできるだろう」
恐る恐る問うたエミリに、ダニエルが平然と答える。
『冷血王ダニエル』とその名を知られた若き王が断頭台に散るのは数年先の事である。
65
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜
万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された
【完結】モブなのに最強?
らんか
恋愛
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢! お前との婚約は破棄とする! お前のようなオトコ女とは結婚出来ない!」
婚約者のダラオがか弱そうな令嬢を左腕で抱き寄せ、「リセラ、怯えなくていい。私が君を守るからね」と慈しむように見つめたあと、ミーシャを睨みながら学園の大勢の生徒が休憩している広い中央テラスの中で叫んだ。
政略結婚として学園卒業と同時に結婚する予定であった婚約者の暴挙に思わず「はぁ‥」と令嬢らしからぬ返事をしてしまったが、同時に〈あ、これオープニングだ〉と頭にその言葉が浮かんだ。そして流れるように前世の自分は日本という国で、30代の会社勤め、ワーカーホリックで過労死した事を思い出した。そしてここは、私を心配した妹に気分転換に勧められて始めた唯一の乙女ゲームの世界であり、自分はオープニングにだけ登場するモブ令嬢であったとなぜか理解した。
(急に思い出したのに、こんな落ち着いてる自分にびっくりだわ。しかもこの状況でも、あんまりショックじゃない。私、この人の事をあまり好きじゃなかったのね。まぁ、いっか。前世でも結婚願望なかったし。領地に戻ったらお父様に泣きついて、領地の隅にでも住まわせてもらおう。魔物討伐に人手がいるから、手伝いながらひっそりと暮らしていけるよね)
もともと辺境伯領にて家族と共に魔物討伐に明け暮れてたミーシャ。男勝りでか弱さとは無縁だ。前世の記憶が戻った今、ダラオの宣言はありがたい。前世ではなかった魔法を使い、好きに生きてみたいミーシャに、乙女ゲームの登場人物たちがなぜかその後も絡んでくるようになり‥。
(私、オープニングで婚約破棄されるだけのモブなのに!)
初めての投稿です。
よろしくお願いします。
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』
佐伯かなた
恋愛
卒業後の社交界の場で、フォーリア・レーズワースは一方的に婚約破棄を宣告された。
理由は伯爵令嬢リリシアを“旧西校舎の階段から突き落とした”という虚偽の罪。
すでに場は整えられ、誰もが彼女を断罪するために招かれ、驚いた姿を演じていた──最初から結果だけが決まっている出来レース。
家名にも傷がつき、貴族社会からは牽制を受けるが、フォーリアは怯むことなく、王国の中央都市に存在する全寮制のコンバシオ学園へ。
しかし、そこでは婚約破棄の噂すら曖昧にぼかされ、国外から来た生徒は興味を向けるだけで侮蔑の視線はない。
──情報が統制されている? 彼らは、何を隠したいの?
静かに観察する中で、フォーリアは気づく。
“婚約破棄を急いで既成事実にしたかった誰か”が必ずいると。
歪んだ陰謀の糸は、学園の中にも外にも伸びていた。
そしてフォーリアは決意する。
あなた方が“嘘”を事実にしたいのなら──私は“真実”で全てを焼き払う、と。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
出来損ないのポンコツ令嬢は、王子様に目を付けられても今まで通りに過ごしたいようです
こまの ととと
恋愛
「そうだ! 元々家格の低いお前が、俺に釣り合うはずが無い!! 惨めに捨てられるのがお似合いなんだッ!!!」
それまで己の婚約者だった少女を罵り上げた男は、当然だと言わんばかりに彼女を見下していた。
彼女は平穏を愛する者、ただそれを受け入れるしかない。
彼の言う通り、身分に差がある者同士では文句を付ける権利も無いのだ。
しかし、そんな彼女の為に立ち上がった男がいた。
彼女の従者として過ごした男は、孤児でありしがらみの無い立場であった為に、元婚約者の男を殴り飛ばしてしまったのだ。
事が終わった後、自ら家を離れる決心をする従者の男性を見送る事しか出来なかった彼女。
その夜に行われた学園の舞踏会に、どのような気持ちで向かったかなど誰に分かるはずも無い。
ただ一つ、それでも自身の平穏を貫いて行く事だろう。例え彼女を放っておかない者達が現れても……。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。
メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です
有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。
ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。
高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。
モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。
高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。
「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」
「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」
そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。
――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。
この作品は他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる