40 / 86
第6章:鹿ぶちのめし編
6-5. ソフィアの体を水魔法で洗ってあげる。水の出力が弱いから直接触れて……
しおりを挟む
大変なことをすっかり忘れていた。
音から察するにソフィアさんは手で熊の糞を払い落とそうとしている。そんなので完全に払い落とせるはずがない。
困ったな。
メイやユーノが泥まみれになった時は、俺の濡らした手のひらで拭いてやっていたが、同じことをソフィアさんにできるはずもない。
だが、俺たちの食事のために糞まみれになった彼女を、そのままにしておくのは忍びない。
ためらうのは一瞬。俺はソフィアさんに背を向けたまま言う。
「ソフィアさん。今から、誤解を招きかねないことを言う。冷静に落ち着いて聞いてくれ。お前のためを思って言うことだ」
「ええ」
「このあたりに川や池はない。もしあるなら、往路で司教一行が発見していて、野営地を水場の近くにするはずだ」
「分かってるわ。でも、少し違う。水場は近くにある。司教一行が発見できていないだけです。鹿は、水のないところにはいないわ」
「そうか。そうだな。いずれにせよ、俺たちが迷わずに歩いて行って帰ってこれるようなところに水場はないと思う」
「ええ」
「で、だ。言葉をどう選んでも選びようがない。だが、お前を傷つけたくないから言いにくいんだが……」
「いいわよ。分かってる。私は汚い。だから、野営地には戻らない。少し離れたところで待つから」
「そうじゃない。あ、いや、体に熊の糞がついていることは事実だが、汚いのは糞であって、ソフィアじゃない。だから、綺麗にすればいい」
「乾燥すればもう少し綺麗に落とせます」
「ああ。そうなんだが……。ああっ、もう、誤解してくれていいんだが、どうにもならないから、はっきり言う。俺はレベル1認定すらされない威力だが、水魔法が使える。手のひらを濡らす程度だが、持続時間はそれなりだ。妹たちが身体を汚して帰ってきたときに、そうしているんだが、ええっと、あーっ……」
非常に言いにくいから、聞こえなくても構わんとばかりに、早口で小さく言う。
「体を触って、洗おうか?」
「え?」
「あ、いやいや、あーっ! 変態と罵って断ってくれてもいいんだが、つまり、君の体を洗う手段はあるんだが、俺の魔法は弱すぎて、水は手のひらから離れるほどの出力はなくて、だから、つまり、えっと、直接体を触ることになって、あーっ。……いや、すまん。触られるの嫌だよな?」
「いえ。あの……。よろしいのですか?」
「あ、いや、それを俺が聞いていて……」
「清めていただけるのなら、こちらから頼みたいくらいですが……。私、汚いですよ……?」
「ああ、いや、汚いのは熊の糞であって、ソフィアさんは綺麗だ。あ、いや、変な意味ではなく体は綺麗で。あ、いや、見てない。/
:あー。くそ。なんかい「いや」と言えばいいんだ。
/裸は見てない。とにかく体だけでなく心も綺麗で。いや、待て。これもおかしい。初対面なのにすまん。狩人としての心構えに敬服したという意味だ」
「動揺しすぎではありませんか?」
「すまん……。こんな態度では下心があると思われてしまうな」
「私に対して劣情を催しているのですか?」
「言語化するな。否定しづらい。肯定すれば俺が変態だ。否定すればお前に性的魅力がないと侮辱することになる」
ソフィアさんの口調は穏やかなままだった。俺ひとりだけが自爆したかのように早口で声を高くしていた。
「……私が、3回、夫を亡くしていて、不幸を呼ぶ女だと言われているのを、知っていますか?」
「あまり村にいないから、よくは知らないが……」
「夫たちはみんな、私の体を汚いと蔑み、指一本触れようとはしませんでした……。だから、17にもなって子を成すこともなく、村で居心地の悪さを感じていました」
「ああ……。会ったばかりの俺なんかに気にするなって言われても意味はないだろうが、少なくとも俺はソフィアさんが汚いとは思わない」
「はい……。ありがとうございます。アレル様。お願いします」
「ああ」
汚れを洗い流すなら上からが妥当だから、俺は先ず、彼女の頬に触れる。水で頬をなでるようにして洗う。
熱っぽい瞳でじっと見つめてくるから、少しやりづらい。でも、俺が恥ずかしがっていたら駄目だ。ソフィアさんの方が恥ずかしがっているはずだ
俺は頬を洗い終えると、肩や鎖骨を洗ってあげる。
そして……。
胸。どうするんだ。
洗わないわけにはいかないが、触るのも気が引ける……!
無心だ。無心になれ。
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ほーん。はーん。
見られたくない回想シーンだなー。
お前、むっつりすけべだし、本当に、大きい胸が好きだなー
────────────────────
■自分
くっ……
────────────────────
音から察するにソフィアさんは手で熊の糞を払い落とそうとしている。そんなので完全に払い落とせるはずがない。
困ったな。
メイやユーノが泥まみれになった時は、俺の濡らした手のひらで拭いてやっていたが、同じことをソフィアさんにできるはずもない。
だが、俺たちの食事のために糞まみれになった彼女を、そのままにしておくのは忍びない。
ためらうのは一瞬。俺はソフィアさんに背を向けたまま言う。
「ソフィアさん。今から、誤解を招きかねないことを言う。冷静に落ち着いて聞いてくれ。お前のためを思って言うことだ」
「ええ」
「このあたりに川や池はない。もしあるなら、往路で司教一行が発見していて、野営地を水場の近くにするはずだ」
「分かってるわ。でも、少し違う。水場は近くにある。司教一行が発見できていないだけです。鹿は、水のないところにはいないわ」
「そうか。そうだな。いずれにせよ、俺たちが迷わずに歩いて行って帰ってこれるようなところに水場はないと思う」
「ええ」
「で、だ。言葉をどう選んでも選びようがない。だが、お前を傷つけたくないから言いにくいんだが……」
「いいわよ。分かってる。私は汚い。だから、野営地には戻らない。少し離れたところで待つから」
「そうじゃない。あ、いや、体に熊の糞がついていることは事実だが、汚いのは糞であって、ソフィアじゃない。だから、綺麗にすればいい」
「乾燥すればもう少し綺麗に落とせます」
「ああ。そうなんだが……。ああっ、もう、誤解してくれていいんだが、どうにもならないから、はっきり言う。俺はレベル1認定すらされない威力だが、水魔法が使える。手のひらを濡らす程度だが、持続時間はそれなりだ。妹たちが身体を汚して帰ってきたときに、そうしているんだが、ええっと、あーっ……」
非常に言いにくいから、聞こえなくても構わんとばかりに、早口で小さく言う。
「体を触って、洗おうか?」
「え?」
「あ、いやいや、あーっ! 変態と罵って断ってくれてもいいんだが、つまり、君の体を洗う手段はあるんだが、俺の魔法は弱すぎて、水は手のひらから離れるほどの出力はなくて、だから、つまり、えっと、直接体を触ることになって、あーっ。……いや、すまん。触られるの嫌だよな?」
「いえ。あの……。よろしいのですか?」
「あ、いや、それを俺が聞いていて……」
「清めていただけるのなら、こちらから頼みたいくらいですが……。私、汚いですよ……?」
「ああ、いや、汚いのは熊の糞であって、ソフィアさんは綺麗だ。あ、いや、変な意味ではなく体は綺麗で。あ、いや、見てない。/
:あー。くそ。なんかい「いや」と言えばいいんだ。
/裸は見てない。とにかく体だけでなく心も綺麗で。いや、待て。これもおかしい。初対面なのにすまん。狩人としての心構えに敬服したという意味だ」
「動揺しすぎではありませんか?」
「すまん……。こんな態度では下心があると思われてしまうな」
「私に対して劣情を催しているのですか?」
「言語化するな。否定しづらい。肯定すれば俺が変態だ。否定すればお前に性的魅力がないと侮辱することになる」
ソフィアさんの口調は穏やかなままだった。俺ひとりだけが自爆したかのように早口で声を高くしていた。
「……私が、3回、夫を亡くしていて、不幸を呼ぶ女だと言われているのを、知っていますか?」
「あまり村にいないから、よくは知らないが……」
「夫たちはみんな、私の体を汚いと蔑み、指一本触れようとはしませんでした……。だから、17にもなって子を成すこともなく、村で居心地の悪さを感じていました」
「ああ……。会ったばかりの俺なんかに気にするなって言われても意味はないだろうが、少なくとも俺はソフィアさんが汚いとは思わない」
「はい……。ありがとうございます。アレル様。お願いします」
「ああ」
汚れを洗い流すなら上からが妥当だから、俺は先ず、彼女の頬に触れる。水で頬をなでるようにして洗う。
熱っぽい瞳でじっと見つめてくるから、少しやりづらい。でも、俺が恥ずかしがっていたら駄目だ。ソフィアさんの方が恥ずかしがっているはずだ
俺は頬を洗い終えると、肩や鎖骨を洗ってあげる。
そして……。
胸。どうするんだ。
洗わないわけにはいかないが、触るのも気が引ける……!
無心だ。無心になれ。
────────────────────
■ヴォルグルーエル@闇刻魔王
ほーん。はーん。
見られたくない回想シーンだなー。
お前、むっつりすけべだし、本当に、大きい胸が好きだなー
────────────────────
■自分
くっ……
────────────────────
20
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~
たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。
辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。
壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。
その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。
ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる