武器は棍棒。撲殺系いっぱん羊飼いの俺、スキルXitterで超越者たちと相互フォローになってしまい「力が欲しいか?」とウザ絡みされる

うーぱー

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第16章:魔王VS聖女パーティー

16-1. 合体! 聖女パーティーと戦うために俺は魔王と合体する

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 ルーエルは俺の小便を浴びながら、その液体が出てくる位置を凝視する。

「む。なんだ、これは体にくっついている?」

「やめろ。許してくれ。俺が悪かった。顔に小便を浴びながら喋るな。俺はどういう感情になればいいんだ。畜生……!」

 俺は尿を終えると、ズボンをはき直す。
 その間、ルーエルが興味深そうにじーっと俺の股間を居ていた。ケルリルもルーエルの隣に移動して凝視してきた。
 お前は今までの旅で何度も見てるだろ……。

 俺は荷袋から水筒用の革袋ウトルを取りだし、ルーエルの顔にかける。

「動くなよ」

「む」

「お前らなあ。俺の計画が成功するかどうかの瀬戸際なんだぞ……。罪悪感のせいで俺の精神力がゴリゴリに減っている。マジで時間がないんだって。爆音がしているだろ。聖女パーティーが来る」

「うむ。魔力がいくつか接近しているな」

 ルーエルは平然としている。屈辱を感じていないのか……。

 水筒用の革袋ウトルを使い切った俺はルーエルと会話を続けながら、レベル0水魔法でケルリルの手を洗う。

「魔王城の最上部に放尿直後の全裸幼女はおかしい。せめて、全裸はなんとかしないと……。服はないのか?」

 周囲に白い柱はあるが、家具はない。出入り口も正面らしき扉のみだ。

「この部屋にはない」

「配下みたいなのがいるんだろ? そいつに持ってこさせることはできるか?」

 手洗い終了。俺は手をプルプル振って乾かす。

「生きている奴は避難させた。ゴーレムとかアンデッドしかいない」

「そうか……。今から服があるところまで、聖女たちと遭遇せずに取りに行けるか?」

「うーん。どうだろう。多分、聖女が下の階にいるし、遭遇するかも?」

「なんかないのか。闇の鎧や服を纏うような魔法は。なんか、こう、あるだろう。濃縮した闇を放出して体に付けるようなのが!」

「うーむ。ない。やれぬ。では魔王としてふさわしくないな。やってみせよう。見ておれ!」

「頼む!」

 全裸幼女魔王は仁王立ちになる。まったく迫力はないが、俺はその小さな姿に期待の眼差しを向ける。
 頼む。凶悪な姿に変身してくれ……!

「はああっ! 我が闇の魔力よ、衣となりて我を覆え!」

 頼む! ルーエルの魔力よ、衣となりてロリ魔王を覆え!

 ピチャンッ……。

 ルーエルの足下に黒い水たまりが現れた。

 ギュワッ!

 水たまりから、液体が何本もの帯のようになって浮き上がり、ルーエルに巻きついていく。
 まるで魔法少女アニメに出てくる敵ヒロインの変身シーンだ。

 ルーエルの姿はあっという間に――。

 全身黒タイツみたいになった。

 ……だっせえ。
 探偵漫画に出てくる、正体が発覚する前の犯人は、探偵漫画以外に出てくるとだせえんだよ……。

「……。それ、呼吸できてる?」

「うむ」

 銀河の暗黒騎士みたいに声がくぐもっている。

「そうか。体のラインがくっきり出ていて、どうみても幼女だ。それはまずい。あと、股間に生やすな。俺の真似をするな」

 ここでいったん俺は会話相手をケルリルにする。

「余裕ぶって笑ってないで、お前も服をなんとかしろ。ケルベロスパワーで毛を伸ばすとか、なんかしろ」

「えーっ」

 俺は会話相手をルーエルに戻す。

「凹凸はつけれないか?」

「それなら……。んーっ。こう!」

「胸を大きくするな! 肘や膝を尖らせろ。騎士の甲冑みたいに、ごちゃごちゃしてくれ!」

「分かっておる。からかっただけだ。……これでどうだ!」

 ルーエルの側頭部に角が生えた。
 肩が岩のように角張った。
 膝や肘に突起が伸びた。
 背中に直線部品で構成された翼が生えた。

「おおっ! かなりいいぞ。手足は伸びないか? 体型が幼女のままだ」

「我自身の変身はできぬのだ」

「じゃあ、中身はそのままで、脚だけ伸ばしてみてくれ」

「うむ。ぬんっ!」

「おおっ……! あ、あー……」

 確かに脚は伸びたがプルプルと子鹿みたいに震えだし、転倒した。
 俺は落下してくるルーエルをお姫様抱っこする。

「ぬう。肉体を覆うことは容易いが、何もないところに闇を維持しようとすると、どうもイメージが湧きにくい」

 ぬるんっ。
 ルーエルの体の黒いぬるぬるが、俺の腕に広がってくる。

「お、おい。闇が広がってる。大丈夫なのか、これ。いや、待て」

 手に伝わってくる感触は、下の妹ユーノのような、ピチピチの肌だ。
 ガキんちょの体を触っている感じだ。ルーエルを触っているっぽい。

「ルーエルに触れているから、闇が俺の表面に流れてきたのか?」

「む。そのようだな」

 俺はルーエルを床に下ろす。俺の腕から闇は消えて、ルーエルだけが闇色になった。

 ズドンッ!

 ガアアアンッ!

「この音、明らかに同じ階層だ……。門番はいるのか?」

「うむ。ゴーレムを配置しているが、今までの進行速度を考慮すると、大した時間稼ぎはできん」

「……まずい。時間が……。考えろ……。考えろ……。ルーエルの闇は触れている者も覆える。だけど、ベースとなるルーエル自身が幼児体型だ……。何を足せば、こいつは凶悪な魔王になる?」

 俺は荷袋の中身を思いだす。

「手に予備の靴をはめる? 釘を咥えさせる? ロープで全身を縛る?」

 落ち着きをなくした俺は、うつむいて行ったり来たりする。
 偶然、それが功を奏した。

 俺、ケルリル、ルーエルの影が重なり、床に異形の姿を映していた。

「これだ! 俺とケルリルの肉体を覆うくらい闇は出るか?」

「うむ。余裕でやれると思う」

 バギャアアアアアアアアアアアアアンッ!

 ドアのすぐ向こうで爆音が鳴った。
 門番ゴーレムとの戦いが始まったようだ。

「くそっ! もう来た!」

 俺は身バレ対策のため、部屋の開口部に向けて棍棒を投げ捨てた。

 荷袋からパンパイプを出し、紐を顎に引っかけて、パンパイプ本体を額に当てて固定。角かとさかに見えるだろう。羊飼いのお守りとして持ってきて良かった!
 次に、ロープで短槍を左腕に巻きつける。肘から角が生えているように見えるはずだ。

「ケルリル、獣状態になれ! ルーエル! 俺の右腕にしがみつけ! そして、俺たちの姿を闇で覆ってくれ!」

「うむ!」

 俺はレストの背中にまたがった。
 ルーエルが俺の首に両腕を回してしがみつき、脚で右腕を挟んでくる。

 合体!

 ギュワッ!

 目の前が真っ暗になった。俺は闇魔力に包まれているらしい。

 鏡がないから分からないが、俺たちは魔王と呼ぶにふさわしい、異形の化け物になったはずだ。

 下半身は四足獣で、胴体は人間で、右腕が異常に肥大化している……ように見えるはず。
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