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第4章 ケース3:みなみな私のもの
第43話 お互いに
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凛太と春山は顔を見合わせた。お互いに何とも言えない表情をしていた。自分の所感よりもまず、同僚の出方を確認したかった。
その結果、同じことをして顔を見合せたまま黙る形になったが、それはそれで考えていることは同じだということが伝わった。
春山は初めから芋虫のことを信じている。凛太も頭の中で色々と辻褄が合った。だから芋虫の話を信じる。
「信じてくれますか……。分かってくれますか……」
「はい」
凛太が答えた。今まで生理的に無理できつい目で見ていたが、それを謝るように春山に持ち上げられている芋虫にしっかり目線を合わせた。
「ありがとうございます。実は私も……夢に入るなんて信じられない話ですけど、信じてます。こんなこと本当は頼みづらいですけど、どうか私を助けてください」
「はい」
今度は春山が答えた。すぐに答えて、力強い声だった。
確かに夢に入るなんて信じられない話だ。誰でも最初は驚くことだろう。凛太は芋虫の言葉に非常に納得がいって、より人間味を感じ、親近感が湧いた。
この芋虫を助けるのには異論はない。でも、助けると言ってもどうすれば……。
「はあ……怖い」
芋虫が悲痛な声を息のように漏らす。外ではずっともう1つの人格、今は霊になった女が暴れている。家の壁を叩き続けている。凛太にとってもそれは恐怖だった。
「春山さん。この場合ってどうすればいいの?」
「どうすればいいんだろう。私も今考えてる」
「だよね。春山さんでもこんなこと初めてなんだろうね」
言わずもがな、二重人格の人間なんて極めて稀だ。日本に何人そんな人がいるのか分からない。きっと何千人か何万人に1人くらいの割合だ。
いざ、特殊な形だがこうして会ってみて、本当にいたんだという感じがする。
「どちらも夢だと分かっているけど、お互いが存在する限りこれは悪夢ってところか」
「説得すればいいんじゃないかな。話は通じるみたいだし」
「それはたぶん無理だ。俺も話そうとしたけどあれの殺意は相当だった」
「私も無理だと思います。あの子はすごく攻撃的な私だから。その……私が気弱だから……色々あって、ストレスを貯めて、できた自分があの子だから。あの子は気弱な私を消して全部自分であろうとする。絶対に」
じゃあ、どちらかがいなくなるしかない……。凛太はその答えを思いついたが、そんなこと言えるはずがなかった。
この夢の中でどちらかがいなくなれば、現実でもその人格は二度と出てこないのだろうか。だとしたら、もうこれは自分の手に負える話じゃないと凛太は思った。
二重人格なら睡眠治療クリニックなんかじゃなく精神科か何かに通うべきだ。
「春山さん。悪夢を解決する以外で現実に戻ることはできないの?」
「できるよ。私たちのシフト時間が来ても悪夢が終わらなかったら院長が起こしてくれる。だから待ってれば、いずれ私たちは目を覚ます」
「じゃあ、ここで待ってようよ。現実に戻って、それから院長に話してこの件をどうにかしよう。それしかない」
逃げや問題の先送りだとは思わない。だって、今ここで芋虫を助けるとなるとあの霊と直接戦わなければいけない。最悪、もう1つの人格であるあの霊を殺すことになるかもしれない。そんなの絶対に無理だ。
「そうだね。うん。私もそれが良いと思う」
「だめっ。そんなの絶対に嫌っ」
静かに話していた芋虫が突然大声を出す。今日一番、さっきまでの何倍もの大きさの声だった。春山も同意したのにそれを否定する。
「助けてくれるって言ったじゃないですか。私もうこんな夢明日も見たくないっ」
芋虫にとっては最もな感情なのかもしれない。けれど他に良い道はあるか……一応、別の道を探してみたが、凛太達に考える時間はもう与えられなかった……。
赤い部屋での会議中、ずっと聞こえていた大きな音が、増して大きな音となって赤い部屋に響いた。
ずっと壁を叩いていた霊がついに壁に穴を開けて、赤い部屋に姿を現したのだった。
その結果、同じことをして顔を見合せたまま黙る形になったが、それはそれで考えていることは同じだということが伝わった。
春山は初めから芋虫のことを信じている。凛太も頭の中で色々と辻褄が合った。だから芋虫の話を信じる。
「信じてくれますか……。分かってくれますか……」
「はい」
凛太が答えた。今まで生理的に無理できつい目で見ていたが、それを謝るように春山に持ち上げられている芋虫にしっかり目線を合わせた。
「ありがとうございます。実は私も……夢に入るなんて信じられない話ですけど、信じてます。こんなこと本当は頼みづらいですけど、どうか私を助けてください」
「はい」
今度は春山が答えた。すぐに答えて、力強い声だった。
確かに夢に入るなんて信じられない話だ。誰でも最初は驚くことだろう。凛太は芋虫の言葉に非常に納得がいって、より人間味を感じ、親近感が湧いた。
この芋虫を助けるのには異論はない。でも、助けると言ってもどうすれば……。
「はあ……怖い」
芋虫が悲痛な声を息のように漏らす。外ではずっともう1つの人格、今は霊になった女が暴れている。家の壁を叩き続けている。凛太にとってもそれは恐怖だった。
「春山さん。この場合ってどうすればいいの?」
「どうすればいいんだろう。私も今考えてる」
「だよね。春山さんでもこんなこと初めてなんだろうね」
言わずもがな、二重人格の人間なんて極めて稀だ。日本に何人そんな人がいるのか分からない。きっと何千人か何万人に1人くらいの割合だ。
いざ、特殊な形だがこうして会ってみて、本当にいたんだという感じがする。
「どちらも夢だと分かっているけど、お互いが存在する限りこれは悪夢ってところか」
「説得すればいいんじゃないかな。話は通じるみたいだし」
「それはたぶん無理だ。俺も話そうとしたけどあれの殺意は相当だった」
「私も無理だと思います。あの子はすごく攻撃的な私だから。その……私が気弱だから……色々あって、ストレスを貯めて、できた自分があの子だから。あの子は気弱な私を消して全部自分であろうとする。絶対に」
じゃあ、どちらかがいなくなるしかない……。凛太はその答えを思いついたが、そんなこと言えるはずがなかった。
この夢の中でどちらかがいなくなれば、現実でもその人格は二度と出てこないのだろうか。だとしたら、もうこれは自分の手に負える話じゃないと凛太は思った。
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「春山さん。悪夢を解決する以外で現実に戻ることはできないの?」
「できるよ。私たちのシフト時間が来ても悪夢が終わらなかったら院長が起こしてくれる。だから待ってれば、いずれ私たちは目を覚ます」
「じゃあ、ここで待ってようよ。現実に戻って、それから院長に話してこの件をどうにかしよう。それしかない」
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芋虫にとっては最もな感情なのかもしれない。けれど他に良い道はあるか……一応、別の道を探してみたが、凛太達に考える時間はもう与えられなかった……。
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ずっと壁を叩いていた霊がついに壁に穴を開けて、赤い部屋に姿を現したのだった。
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