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第8話 農作業
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気が付くと朝になっていて、目を開けるとショウゴに布団を剥がされて起こされたことはすぐに理解できた。それと同時に睡眠が足りてないことが眠気で分かり、もう朝かと絶望する。
「おい。朝飯まであと10分だぞ」
寝ぼけた後輩を見て笑っているショウゴに返事をせずに、自分のペースで体を起こし目覚めさせる。目を強く閉じて湿らせ、またゆっくり開けると開いたカーテンから日光が部屋に入ってきていることに気づいた。
太陽が1日の始まりを報せるのはいつぶりだろう。久しくこの暖かい光を見ていない気がする。
起きないわけにもいかないので重い体を動かし、顔を洗いにトイレへ向かって部屋を出た。話し声が響く廊下に出て、誰かに顔を見られる状況になればすぐに眠気はなくなってくる。太陽に照らされた明るい廊下では、朝食のために1階に降りていく人たちの元気も良かった――。
あくびと洗顔で潤った目をこすりながら部屋に戻ると、首にかけたタオルを置く暇もないままショウゴに引っ張られてタイシも一緒に1階のカフェスペースへ向かう。
「エイちゃんは他に持ってきたいものはない?」
タイシがメモ用紙を見つめながら聞いてくる。
「うーん。俺はもうないかな。何か面白そうなものあったらもってこよ」
「じゃあテレビもう2台持ってこようぜ!」
少し前を歩くショウゴが1階のヤシの木のような観葉植物にジャンプしてタッチしながら話に入ってきた。
「そんで同じゲームを誰が1番早くクリアできるか勝負な」
「あの、実は僕も持ってきたいものあるんですけどいいですか?」
「おう。何がほしいんだ?」
「えっと――」
ショウゴとタイシが何やら話し合いながらカフェスペースに入っていく。こっそりと色づき始めたエイタの世界を2人はまだ知らない。エイタは話には入らず、前を歩く2人の間から見えたルリを今日どうやって誘ってどこに行くか考えていた……。
花柄のエプロンに長靴、頭にはサンバイザーといういかにも農家という姿のナナミさんが目を引く畑。そこはもともと近くの農家が耕していた農用地で農具や肥料も農家の長屋から拝借したものだった。
まだ困ってはいない食糧問題だが、いつか来る不足に備えて早いうちから自分たちで調達できるようになるべきだ。ナナミがそう考えて皆を説得して始めたのが半活動としての農業だった。
初めは各班ごとに一軒家の庭くらいの畑に種を植えて水をあげるだけだったが、毎週のようにナナミの指導のもと栽培面積を増やしていき、今ではすべての土地をまとめると学校の校庭くらいの広さになった。
今日も予定通りに作業が進めば、この辺りの農家全ての土地が公民館のものとなり見渡す限りを管理することになる。
「――みんな自分が担当する範囲はオッケーね。じゃあ、始めようか」
半円に集められた子供たちの中心でナナミが手を叩くと、さっそく農作業は始まった。農作業の班は1班、2班、3班、7班でショウゴとタイシ、そしてルリもエイタと同じだった。
まずは草抜きから始まり、草がほとんどな無くなると男女に分かれ、男は土地を耕し女は既に作物が植えられた畑の手入れに取り掛かる。ジャージ姿の若者が畑で作業をしている光景は授業で農業体験でもしているようだった。
クワを持った男子が横一列に並び、その真ん中あたりでエイタも両手で強くクワを握り調子よく上下に振るいながら後ろに下がっていく。
もともと畑だった土地なので少しクワで掘り起こし土をほぐしてやればすぐに作物を栽培できる土壌ができあがる。
クワの先がサクッと土に刺さる感触が気持ち良いので、どんどんと作業を進めるとエイタが耕す列は両隣のダルそうに作業する者が耕すそれより早く綺麗に仕上がった。
エイタは基本的に班で何かをやらされるのは面倒くさくて嫌いだったが、農作業に関しては好きだった。肥料が混ざった土や植物の匂いや手足が汚れるのも嫌いじゃないし、もしこの先この世界が再び栄えていくなら農家になって生きていくのも悪くないなと思うほど。
後ろに下がりたどり着いた土地を囲う背の低いアスファルトに座ると少し息が切れていた。大きく一呼吸して視線を上に向けると途方もない青空が広がっていて、そこから降ってくる光の中では無表情なビル達もあざやかに彩られている。
ショウゴとタイシにさりげなく距離を置いて農作業をこなし、何も言わずに抜け出す作戦は今のところ順調だった。最悪バレても良いというほど思いは強いので気楽に考えているが、とりあえず今日は波風立てずに過ごしたい。
いつも誰かが近くにいるショウゴの元気な笑い声を離れたところで聞きながらエイタは黙々と働いた。さらに遠くにいるルリはジャージ姿で畑にしゃがんで何やら作業していて後ろ姿しか見えない。その隣にはいつも通りナナミさんがいてくれているようだ。
この後……どうやって誘って、どこに行こうか。
「おい。朝飯まであと10分だぞ」
寝ぼけた後輩を見て笑っているショウゴに返事をせずに、自分のペースで体を起こし目覚めさせる。目を強く閉じて湿らせ、またゆっくり開けると開いたカーテンから日光が部屋に入ってきていることに気づいた。
太陽が1日の始まりを報せるのはいつぶりだろう。久しくこの暖かい光を見ていない気がする。
起きないわけにもいかないので重い体を動かし、顔を洗いにトイレへ向かって部屋を出た。話し声が響く廊下に出て、誰かに顔を見られる状況になればすぐに眠気はなくなってくる。太陽に照らされた明るい廊下では、朝食のために1階に降りていく人たちの元気も良かった――。
あくびと洗顔で潤った目をこすりながら部屋に戻ると、首にかけたタオルを置く暇もないままショウゴに引っ張られてタイシも一緒に1階のカフェスペースへ向かう。
「エイちゃんは他に持ってきたいものはない?」
タイシがメモ用紙を見つめながら聞いてくる。
「うーん。俺はもうないかな。何か面白そうなものあったらもってこよ」
「じゃあテレビもう2台持ってこようぜ!」
少し前を歩くショウゴが1階のヤシの木のような観葉植物にジャンプしてタッチしながら話に入ってきた。
「そんで同じゲームを誰が1番早くクリアできるか勝負な」
「あの、実は僕も持ってきたいものあるんですけどいいですか?」
「おう。何がほしいんだ?」
「えっと――」
ショウゴとタイシが何やら話し合いながらカフェスペースに入っていく。こっそりと色づき始めたエイタの世界を2人はまだ知らない。エイタは話には入らず、前を歩く2人の間から見えたルリを今日どうやって誘ってどこに行くか考えていた……。
花柄のエプロンに長靴、頭にはサンバイザーといういかにも農家という姿のナナミさんが目を引く畑。そこはもともと近くの農家が耕していた農用地で農具や肥料も農家の長屋から拝借したものだった。
まだ困ってはいない食糧問題だが、いつか来る不足に備えて早いうちから自分たちで調達できるようになるべきだ。ナナミがそう考えて皆を説得して始めたのが半活動としての農業だった。
初めは各班ごとに一軒家の庭くらいの畑に種を植えて水をあげるだけだったが、毎週のようにナナミの指導のもと栽培面積を増やしていき、今ではすべての土地をまとめると学校の校庭くらいの広さになった。
今日も予定通りに作業が進めば、この辺りの農家全ての土地が公民館のものとなり見渡す限りを管理することになる。
「――みんな自分が担当する範囲はオッケーね。じゃあ、始めようか」
半円に集められた子供たちの中心でナナミが手を叩くと、さっそく農作業は始まった。農作業の班は1班、2班、3班、7班でショウゴとタイシ、そしてルリもエイタと同じだった。
まずは草抜きから始まり、草がほとんどな無くなると男女に分かれ、男は土地を耕し女は既に作物が植えられた畑の手入れに取り掛かる。ジャージ姿の若者が畑で作業をしている光景は授業で農業体験でもしているようだった。
クワを持った男子が横一列に並び、その真ん中あたりでエイタも両手で強くクワを握り調子よく上下に振るいながら後ろに下がっていく。
もともと畑だった土地なので少しクワで掘り起こし土をほぐしてやればすぐに作物を栽培できる土壌ができあがる。
クワの先がサクッと土に刺さる感触が気持ち良いので、どんどんと作業を進めるとエイタが耕す列は両隣のダルそうに作業する者が耕すそれより早く綺麗に仕上がった。
エイタは基本的に班で何かをやらされるのは面倒くさくて嫌いだったが、農作業に関しては好きだった。肥料が混ざった土や植物の匂いや手足が汚れるのも嫌いじゃないし、もしこの先この世界が再び栄えていくなら農家になって生きていくのも悪くないなと思うほど。
後ろに下がりたどり着いた土地を囲う背の低いアスファルトに座ると少し息が切れていた。大きく一呼吸して視線を上に向けると途方もない青空が広がっていて、そこから降ってくる光の中では無表情なビル達もあざやかに彩られている。
ショウゴとタイシにさりげなく距離を置いて農作業をこなし、何も言わずに抜け出す作戦は今のところ順調だった。最悪バレても良いというほど思いは強いので気楽に考えているが、とりあえず今日は波風立てずに過ごしたい。
いつも誰かが近くにいるショウゴの元気な笑い声を離れたところで聞きながらエイタは黙々と働いた。さらに遠くにいるルリはジャージ姿で畑にしゃがんで何やら作業していて後ろ姿しか見えない。その隣にはいつも通りナナミさんがいてくれているようだ。
この後……どうやって誘って、どこに行こうか。
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