10 / 10
第9話 嘘
しおりを挟む
ほどほどにサボる者もいてだいたい1人3列耕す中、エイタが5列終わらせたころに予定してた分の作業が片付いた。女子のほうは少し前に片付いたらしく帰り始めているものもいる。暖かく日差しも強くなり、汗ばんだ体が拍車をかけて熱く感じる時間帯、ちょうど正午ぐらいだろうか。
エイタは下に着ているシャツは柄がなく味気のないデザインでジャージの上着を脱ぐことができないので腕をまくり、胸の前の服を引っ張て空気を服と体の間に入れた。
周りの男子も畑の上でシャツ一枚になったりズボンの裾をまくったりして来た時の格好よりも涼しげになっている。
「すげえ頑張ってたな。お前農業好きなんか?」
ショウゴが額から噴き出る汗を真っ白なタオルで拭きながらいつのまにか近くにいた。
「そうなんすよ。俺農業大好きなんですよねー」
おおげさにクワを振るポーズをつけて言うとショウゴの近くにいるタイシや他の男子にも笑ってくれて良かった。とっさの対応は上手くいったが、こっそりいなくなる作戦は失敗してしまった。しかしこの場合も特に問題ない。
「でもちょっと疲れちゃいましたね」
手の甲で顔の汗を拭い、息を多めに吐きながらエイタは言った。
「そりゃそうだろ。エイタは俺たちの倍くらいやってたもんな」
「あははは」
外で体を動かした後に広い大地でそよ風を受けるという解放感の中で男子数名の雑談が始まった。
「ここには何植えるんだろ。先週はイモ植えたんだっけ?」
「小麦って言ってたよ。ナナミさんが」
「へー。小麦粉の小麦だよな?今度はパン作りでもするんかな」
「それにしてもナナミさんはすげえよな。農業のこと詳しすぎてもう本物の農家の人に見えてきた」
「今日の格好もガチすぎるしな。最初見た時ビビった」
「顔も美人だしな。タイシなんかは大好きだもんな」
「え。いや、そんなことないですよ」
ショウゴが急にタイシをからかって、タイシはそれを慌てて否定した。
「さっきもな……」
続けて話し始めたのでタイシはショウゴに襲い掛かった。どこにでもあるような先輩と後輩のスキンシップ。畑の周りでちょっとした鬼ごっこが自然と始まった。
「――こっちも終わったみたいだね」
ショウゴとタイシがじゃれ合っていると、事の発端であるナナミさんが男子の輪に入ってきて言った。
「はい」
エイタが答える。
「おつかれさまー大変だったでしょ。もう解散していいよ。種まきまでやっちゃいたかったけど思ったより時間かかったしお腹空いたから女子は解散させちゃった。また明日自由参加でやろっかな――ショウゴ君は手伝ってくれるよね?」
「おう、いいっすよ」
走りながら少し遠くでショウゴが楽しそうに答える。
「ありがとうー……暑くなってきたねえ」
農家のフル装備でたしかにナナミは暑そうだ。やわらかくゆっくり手に持っているノートで自分を扇いでいるが涼しそうではない。
「俺も手伝いますよ」
タイシが走って戻ってきて力強く言った。
「ありがとねー」
ナナミがタイシに向かってニッコリ笑ったのでタイシは嬉しそうだ。
「次はここで何育てるんですか?」
「次はねー、ここ全部小麦畑にするの」
数人の男子も帰り出して、ここで育てる作物と農業の話が始まった時、ルリを目で探すと、1人で畑の隅に座ってどこか遠くのほうを眺めているのを見つけた。最初にルリに惹かれたときと同じ、公園のベンチに座っている時の表情。視線をそらした先にその寂しげで美しい横顔を見た。
遠くで眺めているだけで――何でこんなにも惹かれるんだろう。
「よし、じゃあデパートいくか!」
「そうですね」
ルリに見とれていると話は終わっていて帰る流れになっていた。ショウゴとタイシがビルの見える方向に歩き出す。
「あの、ごめんなさい。俺は体しんどいんで帰っていいですか。昨日もあんまり寝れなかったし」
「大丈夫か、じゃあ夜に備えて寝とけ。お前の好きなもんも俺がとってきてやるよ」
「たしかにすごく頑張ってたしね。エイちゃんの好きそうなもの持って帰るわ」
疑われることはなく、思っていたよりすんなり受け入れられる。それどころか心配の言葉をかけた後、すぐにショウゴを先頭に走り出した。心の中でよしっと思ったエイタは楽しそうに走っていく2人の背中が見えなくなるのを見送る――。
そして、ルリのほうへ向かって歩き出した。
エイタは下に着ているシャツは柄がなく味気のないデザインでジャージの上着を脱ぐことができないので腕をまくり、胸の前の服を引っ張て空気を服と体の間に入れた。
周りの男子も畑の上でシャツ一枚になったりズボンの裾をまくったりして来た時の格好よりも涼しげになっている。
「すげえ頑張ってたな。お前農業好きなんか?」
ショウゴが額から噴き出る汗を真っ白なタオルで拭きながらいつのまにか近くにいた。
「そうなんすよ。俺農業大好きなんですよねー」
おおげさにクワを振るポーズをつけて言うとショウゴの近くにいるタイシや他の男子にも笑ってくれて良かった。とっさの対応は上手くいったが、こっそりいなくなる作戦は失敗してしまった。しかしこの場合も特に問題ない。
「でもちょっと疲れちゃいましたね」
手の甲で顔の汗を拭い、息を多めに吐きながらエイタは言った。
「そりゃそうだろ。エイタは俺たちの倍くらいやってたもんな」
「あははは」
外で体を動かした後に広い大地でそよ風を受けるという解放感の中で男子数名の雑談が始まった。
「ここには何植えるんだろ。先週はイモ植えたんだっけ?」
「小麦って言ってたよ。ナナミさんが」
「へー。小麦粉の小麦だよな?今度はパン作りでもするんかな」
「それにしてもナナミさんはすげえよな。農業のこと詳しすぎてもう本物の農家の人に見えてきた」
「今日の格好もガチすぎるしな。最初見た時ビビった」
「顔も美人だしな。タイシなんかは大好きだもんな」
「え。いや、そんなことないですよ」
ショウゴが急にタイシをからかって、タイシはそれを慌てて否定した。
「さっきもな……」
続けて話し始めたのでタイシはショウゴに襲い掛かった。どこにでもあるような先輩と後輩のスキンシップ。畑の周りでちょっとした鬼ごっこが自然と始まった。
「――こっちも終わったみたいだね」
ショウゴとタイシがじゃれ合っていると、事の発端であるナナミさんが男子の輪に入ってきて言った。
「はい」
エイタが答える。
「おつかれさまー大変だったでしょ。もう解散していいよ。種まきまでやっちゃいたかったけど思ったより時間かかったしお腹空いたから女子は解散させちゃった。また明日自由参加でやろっかな――ショウゴ君は手伝ってくれるよね?」
「おう、いいっすよ」
走りながら少し遠くでショウゴが楽しそうに答える。
「ありがとうー……暑くなってきたねえ」
農家のフル装備でたしかにナナミは暑そうだ。やわらかくゆっくり手に持っているノートで自分を扇いでいるが涼しそうではない。
「俺も手伝いますよ」
タイシが走って戻ってきて力強く言った。
「ありがとねー」
ナナミがタイシに向かってニッコリ笑ったのでタイシは嬉しそうだ。
「次はここで何育てるんですか?」
「次はねー、ここ全部小麦畑にするの」
数人の男子も帰り出して、ここで育てる作物と農業の話が始まった時、ルリを目で探すと、1人で畑の隅に座ってどこか遠くのほうを眺めているのを見つけた。最初にルリに惹かれたときと同じ、公園のベンチに座っている時の表情。視線をそらした先にその寂しげで美しい横顔を見た。
遠くで眺めているだけで――何でこんなにも惹かれるんだろう。
「よし、じゃあデパートいくか!」
「そうですね」
ルリに見とれていると話は終わっていて帰る流れになっていた。ショウゴとタイシがビルの見える方向に歩き出す。
「あの、ごめんなさい。俺は体しんどいんで帰っていいですか。昨日もあんまり寝れなかったし」
「大丈夫か、じゃあ夜に備えて寝とけ。お前の好きなもんも俺がとってきてやるよ」
「たしかにすごく頑張ってたしね。エイちゃんの好きそうなもの持って帰るわ」
疑われることはなく、思っていたよりすんなり受け入れられる。それどころか心配の言葉をかけた後、すぐにショウゴを先頭に走り出した。心の中でよしっと思ったエイタは楽しそうに走っていく2人の背中が見えなくなるのを見送る――。
そして、ルリのほうへ向かって歩き出した。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる