毒におかされた隊長は解毒のため部下に抱かれる

・めぐめぐ・

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「……今回はこのような作戦で進める。以上だ。これから各自準備に取り掛かれ」

 硬く厳しい声が、会議室に響き渡った。
 
 声の主は、分隊長であるリース・フィリア。
 深緑の瞳を鋭く細め、目の前の部下たちを睨みつけている。

 彼らは隊長の視線を真っすぐに受けると、その場で敬礼けいれいをした。
 彼女の決定に、異を唱える者は誰もいない。

 リースは厳しい。

 しかし、決して部下たちを使い捨てにしたり不当に扱わないため、彼らからの信頼を得ていた。

 何かあれば逃げ出す上官が多い中、自らの命を張って部下たちを救ったことは、皆の記憶に新しく、それがさらにリースへの信頼を集めたのは間違いないだろう。

 部下たちはすぐさま解散すると、自分たちのやるべき作業に取り掛った。

 大きな足音が遠ざかっていくと、部屋の中が静かになった。

 目の前に人影がなくなると、リースは自然と強張っていた身体から力を抜いた。

 そして、机の上に乗っている地図を睨みつけると、どうしたものかと両腕を組んだ。

 地図の上には、味方陣営と敵陣営をした色違いの木のこまが乗っている。先ほどの作戦会議の際、これらを使って説明をしていたのだ。

 リースは駒の一つを手に取ると、地図上の道に沿わせながら小さくうなった。駒は彼女の悩みを表すかのように、行ったり来たりを繰り返している。

 その時、地図に影が降りた。
 背後に立つ気配を感じ、リースは険しい表情のまま後ろを振り返る。

 そこには、

「リース隊長、何を難しい顔をしているのですか?」

 副長であるレフリール・バースが、穏やかな笑みを浮かべて立っていた。すっと彼女の横に並ぶと、手に持っていた書類の束を机の上でトントンと叩く。

 どうやら、一人残って作戦会議後の片づけをしてくれているらしい。

 リースは再び地図に視線を戻すと、親指の爪を噛みながらレフに尋ねた。

「上層部は、この街道を使って攻めろと指示してきたんだが……、もっといい方法がある気がしてならない」

「なるほど。それで隊長は、どのようにお考えなのですか?」

 レフが、開け放たれた窓を閉めながら問う。

 再びリースの眉間にしわが寄り、唸り声が響き渡った。味方を示す駒を手に取り、脳内でシミュレートする。

 その時、彼女の中でいい案が閃いた。と同時に、扉の施錠音せじょうおんが響き渡った。

(鍵が閉まる音? 何故?)

 不自然に響いた音に対し疑問が浮かんだが、レフの言葉が彼女の思考を引き戻した。

「……で、考えはまとまりましたか?」

「えっ? ああ……」

 ついさっきまで横にあったはずのレフの気配を背後に感じ、リースの驚きが声色こわいろに出てしまう。

 しかし彼が気にした様子はなく、笑みを崩さないまま視線で彼女の考えを問う。

 釈然しゃくぜんとしないものを感じながらも、リースは地図を指さしながら自身の考えを披露した。

「今回の作戦では、この湖側の街道を使った方がいい。地図にはないが、ここには昔使っていた古い道があったはず。それを使えば、先手をとれるだろう」

「さすがです。早速道の調査を始めたいところですが……、実は自分も一つ案があるのです。よろしければ、聞いて貰えませんか?」

「そうか! お前の案ならぜひ聞かせ……きゃぁっ!」

 後ろを振り返り、レフの考えを聞こうとした瞬間、リースの身体は机の上に押し倒されていた。

 地図を下敷きにしているため、身体を動かそうとする度に、紙の擦れる音が響く。

「れっ、レフ! こんな場所で、なっ、何をっ!」

 リースは顔を真っ赤にしながら、怒りの声を上げた。が、当の本人は平然としているどころか、何に怒っているのかと不思議そうに首をかしげている。

「何って……説明ですよ? では自分の案を説明しますね。隊長が仰った場所には、実は別のルートがあるんですよ」

 押し倒された状態で、レフの説明が始まった。
 
 こんな体勢であるのだが、説明は説明。

 羞恥心よりも、隊長としての責任がまさり、このままの体勢で彼の説明を聞くことにする。

(まっ、まあ……、きっとレフもからかっているんだろう……)

と、勝手な想像をしながら……。

 しかし、彼の口元がニヤリと笑ったのを見た瞬間、激しい後悔が彼女を襲った。

 レフの手が、地図の上に乗っていた味方の駒を手に取る。

 それはゆっくり彼女の頬から首筋を通ると、胸の膨らみをなぞった。

 布を通じて伝わる刺激に、リースの身体が小さく震え、反射的に声がれてしまう。

「んぁっ……れっ、レフっ⁉」

「ここがあなたの言っていた道とすれば、こっちですね。こちらの道には……」

「あんっ……あっ……、れふ……やめ……て……」

 駒が動くたびに、リースは喘ぎ声に乗せて拒絶の言葉を発した。

 こんな状態で説明が頭に入って来るわけがないのに、レフは地図に見立てた胸のいたたぎを駒で攻めながら説明を続けている。

 服の下で硬くなった蕾に与えられる刺激は、心地よい快楽に変わり、もどかしさをともなったうずきとなってリースの下腹部を揺らした。ぶ厚い服の上からの刺激だけでは、切なさだけが積もっていく。

 気が付けば、嫌がる声は甘く淫らな声色へと変わり、彼の動きに合わせて身体を震わせていた。

 頬を上気させ艶を帯びた瞳が、さらなる刺激をねだるようにレフに向けられる。

 隊長としての厳しい顔から、艶かしい女としての顏へと変貌へんぼうした婚約者を見つめながら、レフは口元を緩めた。

「大丈夫だ、リース……。鍵は閉めている。誰も入ってこない……」

 耳元で囁かれる甘い誘いが、彼によって身体と心に刻み込まれた快楽を蘇らせた。その誘惑にあらがえないことは、リースが一番良く知っている。

 これから与えられる背徳的はいとくてきなひと時を想像し、秘所が蜜で潤っていく。

 早く彼が欲しいと、繋がって愛されたいと、ナカが物欲しそうにキュッと締まる。

 低い囁き一つで、あっという間に身体が欲情し、彼を求めることしか考えられなくなる。

 小さな唇が幸せそうに緩んだ。

 力を抜き、身体のしんで疼く熱の処遇しょぐうをレフに任せると、彼の首に腕を絡ませた。

 駒が、音を立てて床に落ちる。

「……愛してる、リース」

 唇が重なると絡み合う舌から、決して逃れることの出来ない毒が全身にまわるのを感じた。

 ――彼に与えられ、彼にしか解く事の出来ない甘美かんびな毒が。


 <完>
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みんなの感想(2件)

Forest
2020.05.23 Forest

一気に読んでしまった。前半部分は上官と副官という関係、催淫剤の解毒のための行為に切なさや後悔という気持ちでいっぱいだったが、後半からお互いに想いを伝え合い愛し合う姿に思わず涙した。

すごく面白かった。幸せな結末に安堵した。
凄くニヤニヤして読ませていただきました。
この作品に出会えて良かったです。ありがとございます。

2020.05.23 ・めぐめぐ・

Forest様

コメント、ありがとうございます♪
勿体ないお言葉ばかりで、こちらが涙しそうです( ;∀;)

ストーリー性がそこまであるものではなかったので、どうかと不安に思っていたのですが、楽しんで頂けて幸いです。
こちらこそ、Forest様にお読み頂けてとても嬉しかったです!
ありがとうございました(´▽`*)

解除
みながみはるか

前々からレフくんにロックオンされていたリーフさんwww(///∇///)
今のところソフトですが、移動拒否とかなかなかなヤンデレ具合がですね( ̄▽ ̄)b
リーフさんが無事(?)レフくんに落ちていくのか楽しみです(* ̄∇ ̄)ノ

2020.05.05 ・めぐめぐ・

みながみはるか様

コメント、ありがとうございます(*ノωノ)
とても嬉しいです!

叶わぬ恋だと思っても、昇進蹴って彼女の傍にいる事を選ぶぐらいですからねー。
今まで婚約者がいるとレフも一歩引いてましたが、嘘だと分かったので、歯止めは効かないんだろうなーって思ってます(笑)

稚拙ではありますが、引き続き楽しんで頂ければ幸いです♪
ありがとうございました(´▽`*)

解除

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