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第28話 ダグの焦り(別視点)
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(おかしい……一体どういうことだ……)
ダグは部屋の中で一人焦っていた。
焦りと憤りに任せて椅子に座ると、脇腹から頭にかけて痛みが走り、息が止まった。脇腹の痛みが、先ほどの失態を嫌でも思い出させる。
先日、ダグは教官として、兵士たちの指導を皇帝から命じられたのだ。
ダグ自身、剣術は独学。
もちろん指導の経験などない。
にも関わらずダグは快諾した。
そのほうが、皇帝やイリス皇女の心証が良くなると思ったからだ。
それに、
(指導者として格の違いを、弱っちい兵士どもに見せつけてやるのも悪くない)
ダグの圧倒的な力を見せつければ、兵士達も自分に逆らうことはないだろう。
今後、自分も軍を任されるはず。ならば今、勇者の力を兵士達に見せつけることで、ダグのカリスマ性を上げるのも悪くない。
指導の経験はないが、適当に読んだ剣術の書の内容でも伝えておけばいい。
大切なのは指導内容ではなく、誰が言うか、なのだから。
(どうせ何をしても、俺の力には遠く及ばないんだからな)
真面目に訓練を続ける兵士たちの姿を思い出し、ダグは鼻で笑っていた。
こうして迎えた兵士たちとの訓練試合。
意気揚々と試合に臨んだダグだったが、あっさりと負けてしまったのだ。
脇腹を打たれ、あまりの痛さに尻餅をついたダグの姿を、皆が信じられない様子で見つめていた。
試合相手の兵士ですら自分が勝利した事実が信じられず、地面に落ちたダグの模擬刀とダグに何度も視線を走らせていた。
このときは、相手に怪我をさせる恐れがあったため、わざと負けたと誤魔化したが、勇者の力が発動しなかったのが真実だった。
(何故だ? 何故突然勇者の力が使えなくなったんだ?)
今までダグが他を圧倒できたのは勇者の力があったからだ。勇者の力を使わないダグの素人剣術が、国の防衛のために日々腕を磨いている兵士に負けるのは当然だ。
それに、兵士に打たれた脇腹が痛い。
服をめくって確認すると、赤黒い痣となっていた。
こんな怪我をするのも久しぶりだった。
なぜならダグは、常に勇者の力によって守られていたからだ。
攻撃されても強靱な守りによって弾かれ、怪我をすることはほとんどなかった。
さすがに魔族や魔獣相手だと、勇者の力をもってしても怪我をすることはあったが、今回の相手は兵士、ただの人間だ。
ダグが傷つくことはない。
(そうだ……俺が傷つくことなんて、ないはずなのに……)
下唇を噛みながら、両手を強く握った。
今までにない変化にダグは恐れていた。
もし……万が一、勇者の力が失われれば、イリス皇女との結婚も次期皇帝の座も、すべてが白紙になってしまう。
皇帝が平民のダグを受け入れたのは、彼が持つ強大な力を望んだからに他ならないからだ。
それに、
(今更ただの人間になんて戻れるか! 俺は勇者なんだ……皆から称賛され崇められる存在なんだ!)
昔のように、孤児だと疎まれ、役に立たなければ生きている価値などないと足蹴にされる自分に戻りたくはない。
馬鹿にし続けたアウラと同じ立場に堕ちたくはない。
唐突に、聖堂に飾られた聖剣と腕にかかった重さを思い出し、ダグは頭を抱えた。
吐き出される息があがり、鼓動の加速が止まらない。
(大丈夫……大丈夫だ。きっと練習試合だったから、無意識のうちに力をセーブしてしまっただけだ。相手はただの人間。俺が本気を出せば殺してしまうからな)
自分の不安を落ち着かせるように、何度も何度も心の中で呟いた。
そのとき、申し訳ない適度のノックとともに、
「ダグ様、皇帝陛下がお呼びです!」
血相を変えた兵士が飛び込んできた。
兵士の只ならぬ様子と声色に、ダグの背中に嫌な汗が流れた。
ダグは部屋の中で一人焦っていた。
焦りと憤りに任せて椅子に座ると、脇腹から頭にかけて痛みが走り、息が止まった。脇腹の痛みが、先ほどの失態を嫌でも思い出させる。
先日、ダグは教官として、兵士たちの指導を皇帝から命じられたのだ。
ダグ自身、剣術は独学。
もちろん指導の経験などない。
にも関わらずダグは快諾した。
そのほうが、皇帝やイリス皇女の心証が良くなると思ったからだ。
それに、
(指導者として格の違いを、弱っちい兵士どもに見せつけてやるのも悪くない)
ダグの圧倒的な力を見せつければ、兵士達も自分に逆らうことはないだろう。
今後、自分も軍を任されるはず。ならば今、勇者の力を兵士達に見せつけることで、ダグのカリスマ性を上げるのも悪くない。
指導の経験はないが、適当に読んだ剣術の書の内容でも伝えておけばいい。
大切なのは指導内容ではなく、誰が言うか、なのだから。
(どうせ何をしても、俺の力には遠く及ばないんだからな)
真面目に訓練を続ける兵士たちの姿を思い出し、ダグは鼻で笑っていた。
こうして迎えた兵士たちとの訓練試合。
意気揚々と試合に臨んだダグだったが、あっさりと負けてしまったのだ。
脇腹を打たれ、あまりの痛さに尻餅をついたダグの姿を、皆が信じられない様子で見つめていた。
試合相手の兵士ですら自分が勝利した事実が信じられず、地面に落ちたダグの模擬刀とダグに何度も視線を走らせていた。
このときは、相手に怪我をさせる恐れがあったため、わざと負けたと誤魔化したが、勇者の力が発動しなかったのが真実だった。
(何故だ? 何故突然勇者の力が使えなくなったんだ?)
今までダグが他を圧倒できたのは勇者の力があったからだ。勇者の力を使わないダグの素人剣術が、国の防衛のために日々腕を磨いている兵士に負けるのは当然だ。
それに、兵士に打たれた脇腹が痛い。
服をめくって確認すると、赤黒い痣となっていた。
こんな怪我をするのも久しぶりだった。
なぜならダグは、常に勇者の力によって守られていたからだ。
攻撃されても強靱な守りによって弾かれ、怪我をすることはほとんどなかった。
さすがに魔族や魔獣相手だと、勇者の力をもってしても怪我をすることはあったが、今回の相手は兵士、ただの人間だ。
ダグが傷つくことはない。
(そうだ……俺が傷つくことなんて、ないはずなのに……)
下唇を噛みながら、両手を強く握った。
今までにない変化にダグは恐れていた。
もし……万が一、勇者の力が失われれば、イリス皇女との結婚も次期皇帝の座も、すべてが白紙になってしまう。
皇帝が平民のダグを受け入れたのは、彼が持つ強大な力を望んだからに他ならないからだ。
それに、
(今更ただの人間になんて戻れるか! 俺は勇者なんだ……皆から称賛され崇められる存在なんだ!)
昔のように、孤児だと疎まれ、役に立たなければ生きている価値などないと足蹴にされる自分に戻りたくはない。
馬鹿にし続けたアウラと同じ立場に堕ちたくはない。
唐突に、聖堂に飾られた聖剣と腕にかかった重さを思い出し、ダグは頭を抱えた。
吐き出される息があがり、鼓動の加速が止まらない。
(大丈夫……大丈夫だ。きっと練習試合だったから、無意識のうちに力をセーブしてしまっただけだ。相手はただの人間。俺が本気を出せば殺してしまうからな)
自分の不安を落ち着かせるように、何度も何度も心の中で呟いた。
そのとき、申し訳ない適度のノックとともに、
「ダグ様、皇帝陛下がお呼びです!」
血相を変えた兵士が飛び込んできた。
兵士の只ならぬ様子と声色に、ダグの背中に嫌な汗が流れた。
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