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第149話 涙
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「お、ジェネラル、戻って来たか」
「突然出て行ってすみませんでした。アクノリッジさん」
プロトコルに戻ったジェネラルは、その足でミディの部屋へと向かった。控えめなノック後、彼を迎えてくれたのはアクノリッジだった。
ちらっと部屋を覗くと、ミディの傍には、ユニと侍女長であるフィルの姿も見える。ミディを眠らせた後の事は、この女性二人が対応してくれていたらしい。
シンクはメディアの件を王に説明に行った為、この場にはいない。
金髪の青年は、ジェネラルの言葉に気にするなと首を横に振った。しかし、彼の顔色が優れないのに気づき、不審な表情を浮かべた。
「どうした、ジェネラル? お前めっちゃ顔色悪いじゃねえか」
「あ……、いえ……。大丈夫です」
メディアが残していった記憶の断片による精神的ダメージが、まだ尾を引いていたが、それを口にするわけにはいかず、形だけでも問題ないと伝えた。
しかし、誤魔化せなかったようだ。
「どう見ても、大丈夫そうじゃねえぞ。何があったか知らねえが、とにかく入って座れ」
アクノリッジはそう言ってジェネラルの腕を掴むと、無理やり部屋に引き込み、先ほどまで彼が座っていた椅子に座らせた。
ユニも主の体調を気にしているようで、
「ジェネラル様、差し出がましいようですが……、癒しの魔法のご許可を頂けますでしょうか?」
心配する表情を浮かべ、魔法使用の許可を求めた。しかし、ジェネラルは黙って首を横に振ると、
「ありがとう、ユニ。体調が悪いとか……、そういうものじゃないんだ。だから気にしないで」
少女に心配を掛けまいと、申し出を優しく断った。そして小さく笑みを浮かべて礼を言う。
無理やり作られた笑みが逆に痛々しく、ユニはぎゅっと手を握って少し俯いた。無力感を感じているのだろう。その様子を見たフィルが、ユニの肩に手を置いて慰める。
その時。
「……戻ってきたのね、ジェネ」
部屋の主の小さな声が、皆の鼓膜を震わせた。
全ての視線が、ベッドの上で横たわる者に向けられる。
「……ミディ、目が覚めたか」
「ごめんなさい、取り乱してしまって……。また……、皆に心配をかけたわね」
フィルに支えられる形で、ミディはゆっくりと身体を起こした。まだボロアの葉と、メディアの死による精神的ショックは彼女を蝕んでいるようだ。
地下牢で取り乱した事を思い出し弱々しく笑うと、部屋にいる者たちに謝罪を口にした。
弱った彼女の姿とメディアの話が重なり、どう声を掛けてよいか分からず、ジェネラルは俯いた。
いつもなら真っ先にミディの容態を尋ねる魔王の、らしくない姿を一瞥すると、ミディはアクノリッジたちに視線を向けた。
「……悪いけれど、ジェネと二人にして貰えないかしら?」
「ミディ?」
突然の申し出に、ジェネラルは弾かれたように顔を上げた。ミディは一つ頷き、ジェネラルを見返す。
二人の間に、何か只ならぬ雰囲気を感じながらも、アクノリッジはミディに視線を向け、ジェネラルの肩に手を置いた。
「分かった。何かあったら呼んでくれ。……ジェネラル、ミディの事、頼んだぞ」
「はい、大丈夫です、アクノリッジさん」
「ありがとう、アクノリッジ。フィルとユニも」
ジェネラルは彼の言葉に頷き、ミディは席を外してくれることに了承してくれた事に感謝を述べた。
ユニとフィルは、部屋の主に向かってゆっくりを頭を下げた。
3人の姿が、扉の向こうに消えた。
部屋には、ベッドの上で身体を起こす王女と、その横に座る魔王だけが残された。
ミディは瞳を閉じ、大きく息を吐いた。そして、全てを受け入れる気持ちを胸に、瞳を開く。
そして青く澄んだ瞳をジェネラルに向けると、ミディは口を開いた。
「……メディアに、会ってきたのね?」
「……うん、そうだよ」
誤魔化すことは出来ないと判断したジェネラルは、彼女の問い対し正直に答えた。
魔王が死者の世界に影響を持っており、その魂と通じる事が出来る事を、ミディは知っている。過去、共に旅をした際、現世に囚われた魂を送る為、死者の世界の魂を現世に召喚したことがあったからだ。
メディアが自害した今、彼がその力を使う事は簡単に予想できた。本当のところは、死者の世界に彼が向かったのだが。
「それで、メディアには会えたの?」
問いの答えを用意していなかったジェネラルは、言葉に詰まった。会ったと答えれば、彼女にメディアとのやり取りを話さなければならないからだ。
しかしその行動から、肯定と取れたようだ。
「相変わらず、誤魔化すのが下手ね、ジェネは」
口元に手をやり、ミディは小さく笑った。
ジェネラルはグシグシと黒髪を掻くと、大きなため息をついた。あまりにも、大切な時に心を隠すのが下手すぎて自己嫌悪に陥る。
そして諦めたように、ミディに視線を向けた。
「会って来たよ。話した後彼は……、死者の世界からも消滅した」
「そう……なのね」
相槌を打つミディの表情に変化はない。淡々と、ジェネラルの言葉を受け入れていた。
ミディの気持ちが落ち着いていると感じたジェネラルは、ハンカチの件について触れた。
「ミディ。あのハンカチの事なんだけど……」
「ああ、そうね。ごめんなさい、あんなことで取り乱してしまって……」
「いいんだよ。もしよければ……、聞かせてもらえる? ミディとメディアの間に、何があったのかを」
ミディはしばらくの間、瞳を閉じると、独り言を呟くように語りだした。
「突然出て行ってすみませんでした。アクノリッジさん」
プロトコルに戻ったジェネラルは、その足でミディの部屋へと向かった。控えめなノック後、彼を迎えてくれたのはアクノリッジだった。
ちらっと部屋を覗くと、ミディの傍には、ユニと侍女長であるフィルの姿も見える。ミディを眠らせた後の事は、この女性二人が対応してくれていたらしい。
シンクはメディアの件を王に説明に行った為、この場にはいない。
金髪の青年は、ジェネラルの言葉に気にするなと首を横に振った。しかし、彼の顔色が優れないのに気づき、不審な表情を浮かべた。
「どうした、ジェネラル? お前めっちゃ顔色悪いじゃねえか」
「あ……、いえ……。大丈夫です」
メディアが残していった記憶の断片による精神的ダメージが、まだ尾を引いていたが、それを口にするわけにはいかず、形だけでも問題ないと伝えた。
しかし、誤魔化せなかったようだ。
「どう見ても、大丈夫そうじゃねえぞ。何があったか知らねえが、とにかく入って座れ」
アクノリッジはそう言ってジェネラルの腕を掴むと、無理やり部屋に引き込み、先ほどまで彼が座っていた椅子に座らせた。
ユニも主の体調を気にしているようで、
「ジェネラル様、差し出がましいようですが……、癒しの魔法のご許可を頂けますでしょうか?」
心配する表情を浮かべ、魔法使用の許可を求めた。しかし、ジェネラルは黙って首を横に振ると、
「ありがとう、ユニ。体調が悪いとか……、そういうものじゃないんだ。だから気にしないで」
少女に心配を掛けまいと、申し出を優しく断った。そして小さく笑みを浮かべて礼を言う。
無理やり作られた笑みが逆に痛々しく、ユニはぎゅっと手を握って少し俯いた。無力感を感じているのだろう。その様子を見たフィルが、ユニの肩に手を置いて慰める。
その時。
「……戻ってきたのね、ジェネ」
部屋の主の小さな声が、皆の鼓膜を震わせた。
全ての視線が、ベッドの上で横たわる者に向けられる。
「……ミディ、目が覚めたか」
「ごめんなさい、取り乱してしまって……。また……、皆に心配をかけたわね」
フィルに支えられる形で、ミディはゆっくりと身体を起こした。まだボロアの葉と、メディアの死による精神的ショックは彼女を蝕んでいるようだ。
地下牢で取り乱した事を思い出し弱々しく笑うと、部屋にいる者たちに謝罪を口にした。
弱った彼女の姿とメディアの話が重なり、どう声を掛けてよいか分からず、ジェネラルは俯いた。
いつもなら真っ先にミディの容態を尋ねる魔王の、らしくない姿を一瞥すると、ミディはアクノリッジたちに視線を向けた。
「……悪いけれど、ジェネと二人にして貰えないかしら?」
「ミディ?」
突然の申し出に、ジェネラルは弾かれたように顔を上げた。ミディは一つ頷き、ジェネラルを見返す。
二人の間に、何か只ならぬ雰囲気を感じながらも、アクノリッジはミディに視線を向け、ジェネラルの肩に手を置いた。
「分かった。何かあったら呼んでくれ。……ジェネラル、ミディの事、頼んだぞ」
「はい、大丈夫です、アクノリッジさん」
「ありがとう、アクノリッジ。フィルとユニも」
ジェネラルは彼の言葉に頷き、ミディは席を外してくれることに了承してくれた事に感謝を述べた。
ユニとフィルは、部屋の主に向かってゆっくりを頭を下げた。
3人の姿が、扉の向こうに消えた。
部屋には、ベッドの上で身体を起こす王女と、その横に座る魔王だけが残された。
ミディは瞳を閉じ、大きく息を吐いた。そして、全てを受け入れる気持ちを胸に、瞳を開く。
そして青く澄んだ瞳をジェネラルに向けると、ミディは口を開いた。
「……メディアに、会ってきたのね?」
「……うん、そうだよ」
誤魔化すことは出来ないと判断したジェネラルは、彼女の問い対し正直に答えた。
魔王が死者の世界に影響を持っており、その魂と通じる事が出来る事を、ミディは知っている。過去、共に旅をした際、現世に囚われた魂を送る為、死者の世界の魂を現世に召喚したことがあったからだ。
メディアが自害した今、彼がその力を使う事は簡単に予想できた。本当のところは、死者の世界に彼が向かったのだが。
「それで、メディアには会えたの?」
問いの答えを用意していなかったジェネラルは、言葉に詰まった。会ったと答えれば、彼女にメディアとのやり取りを話さなければならないからだ。
しかしその行動から、肯定と取れたようだ。
「相変わらず、誤魔化すのが下手ね、ジェネは」
口元に手をやり、ミディは小さく笑った。
ジェネラルはグシグシと黒髪を掻くと、大きなため息をついた。あまりにも、大切な時に心を隠すのが下手すぎて自己嫌悪に陥る。
そして諦めたように、ミディに視線を向けた。
「会って来たよ。話した後彼は……、死者の世界からも消滅した」
「そう……なのね」
相槌を打つミディの表情に変化はない。淡々と、ジェネラルの言葉を受け入れていた。
ミディの気持ちが落ち着いていると感じたジェネラルは、ハンカチの件について触れた。
「ミディ。あのハンカチの事なんだけど……」
「ああ、そうね。ごめんなさい、あんなことで取り乱してしまって……」
「いいんだよ。もしよければ……、聞かせてもらえる? ミディとメディアの間に、何があったのかを」
ミディはしばらくの間、瞳を閉じると、独り言を呟くように語りだした。
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