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第150話 涙2
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「私ね、10歳の時に初めて予言の事を父から聞いたの。でも、予言が何を意味するのか、そして私は何をすればいいのか、全く分からなかった。だからその日の夜、四大精霊を呼び出したの。でも、四大精霊は答えてくれなかった。ただ『強くなりなさい』って言っただけだったわ」
ジェネラルは黙って、ミディの語りを聞いていた。
今もなお、世界の秩序を取り戻すというのが、何を意味しているのか、そしてミディが何をすべきかは明らかになっていない。
彼女の話は続く。
「その帰り、私は男たちに誘拐されそうになった。危うい所で、見知らぬ男性に助けられたの。彼は傷を負ってしまって……。その時、止血の為に使ったのが、あのハンカチだったの」
男の事を語るミディの表情は、柔らかい。懐かしむように、大切な思い出を語るかのように、言葉を紡ぎだしている。
しかしジェネラルの表情は強張っていた。ミディの話を聞きながら、メディアが語った言葉を思い出していた。
“一緒だ……。やっぱりメディアは、ミディの命の恩人だったんだ……”
ミディの言葉がメディアと一致したことが、ジェネラルには辛かった。
過去を語るミディの表情を見ても、その思い出がとても大切にされたものだという事が一目瞭然だったからだ。
彼女がこの出来事を覚えていた事を知り、メディアが浮かべた表情とミディの表情が重なる。
その事実が、メディアと対峙した時と同じような、醜い気持ちを沸き立たせた。そんな心の姿から目をそらすように、ジェネラルは問いかけた。
「……そのハンカチをメディアが持っていたんだね?」
「そう。でもメディアがあの人だと判断したのはそれだけじゃない。メディアの腕には、あの時の傷跡が残っていた。だから確信したの。私を助けてくれたあの人だって……」
「そうなんだね……。彼はミディにとっての命の恩人だった。だから、あれだけ取り乱したんだね?」
彼女が取り乱した理由が、それだけであって欲しいと思った。これ以上、あの事件に深い想いや意味を持って欲しくない。
しかし彼の願い空しく、ミディはゆっくり首を横に振った。そして、ミディだけが抱き続けてきた思いを、初めて目の前の青年に伝えた。
「……私が救われたのは、命だけじゃなかった。四大精霊は、私に強くなるように言った。だけど幼い私には、その意味が分からなかった。不安しかなかったわ。でも戦う彼の姿を見て、私が求められている強さはこれだと思ったの」
「求められている……強さ……?」
「そう、戦う強さよ」
ミディは、真っすぐジェネラルを見据える。
彼女の言葉、そして表情に、ジェネラルは彼女が何故これほどまでに強くなったのかの解を得た。
魔王から視線をそらすと、ミディは自分の腕をぎゅっと掴んだ。
「あの出来事は、不安しかなかった私に、一つの道を示してくれたの。心も……、救われたの」
「そう……なんだね」
ジェネラルは、ただ相槌を打つしか出来なかった。
あの出来事が、今のミディを形作っている。もしミディがメディアと出会っていなければ、彼女は今のように強くならなかった。強くならなければ、魔界に乗り込んで自分を攫わせようなどと考える事もなかっただろう。
ジェネラルがミディと出会う事もなかったのだ。
“……心が、苦しい”
ミディとの出会いまで、あの男が関わっている事を感じ、さらに形容しがたい苦しい感情が、ジェネラルを支配する。
しかし、その気持ちに蓋をして見ない振りをするわけにはいかなかった。
“ちゃんと見なければ……。どれだけ醜い感情であっても、見ないふりをして抑え込んでしまえば、いつか爆発してしまう。……メディアのように”
死んだ青年の話を思い出す。
レージュの罠に落ちたとはいえ、それまでにきちんと自分の気持ちと向き合っていれば、あそこまでミディへの気持ちが歪むことはなかったはずだ。
だからこそジェネラル自身も、己が抱える醜い嫉妬心を認める必要があった。
苦しくても、その気持ちの着地点を相手に求めるのではなく、自分自身が決めなければならなかった。
でなければ、メディアのように一方的な執着によって、ミディを傷つけてしまう事になる。
何かに悩み、深刻そうに俯くジェネラルを見て、ミディは彼を元気づける為、先ほどとは打って変わって明るい声を出した。
腕を上げて体を伸ばすと、暗い気持ちを吐き出すように言葉を発する。
「でもまあ、そんな思い出深い人が、まさかメディアだったとは思わなかったわ。世間は狭いものね。そんなすぐそばに命の恩人がいるなんて、誰が想像できたと思う?」
握った拳を口元に当て、ミディはクスクス笑った。しかし、すぐにはっと表情を切り替えると人差し指を顎に当て、少し上を向く。
「あ、でもあれだけの事をしたのだから、もうそんな事関係ないわね。寧ろ、あんな事をする人間、消滅した方がこの国の為だわ。私やお父様に幻花を使うなんて、決して許せな……」
「ミディ、無理しなくていいよ」
明るく、メディアへの悪態をついていたミディに、ジェネラルは静かな声で伝えた。思いもよらない彼の言葉に、ミディに戸惑いが浮かぶ。そして慌てて言葉を返した。
ジェネラルは黙って、ミディの語りを聞いていた。
今もなお、世界の秩序を取り戻すというのが、何を意味しているのか、そしてミディが何をすべきかは明らかになっていない。
彼女の話は続く。
「その帰り、私は男たちに誘拐されそうになった。危うい所で、見知らぬ男性に助けられたの。彼は傷を負ってしまって……。その時、止血の為に使ったのが、あのハンカチだったの」
男の事を語るミディの表情は、柔らかい。懐かしむように、大切な思い出を語るかのように、言葉を紡ぎだしている。
しかしジェネラルの表情は強張っていた。ミディの話を聞きながら、メディアが語った言葉を思い出していた。
“一緒だ……。やっぱりメディアは、ミディの命の恩人だったんだ……”
ミディの言葉がメディアと一致したことが、ジェネラルには辛かった。
過去を語るミディの表情を見ても、その思い出がとても大切にされたものだという事が一目瞭然だったからだ。
彼女がこの出来事を覚えていた事を知り、メディアが浮かべた表情とミディの表情が重なる。
その事実が、メディアと対峙した時と同じような、醜い気持ちを沸き立たせた。そんな心の姿から目をそらすように、ジェネラルは問いかけた。
「……そのハンカチをメディアが持っていたんだね?」
「そう。でもメディアがあの人だと判断したのはそれだけじゃない。メディアの腕には、あの時の傷跡が残っていた。だから確信したの。私を助けてくれたあの人だって……」
「そうなんだね……。彼はミディにとっての命の恩人だった。だから、あれだけ取り乱したんだね?」
彼女が取り乱した理由が、それだけであって欲しいと思った。これ以上、あの事件に深い想いや意味を持って欲しくない。
しかし彼の願い空しく、ミディはゆっくり首を横に振った。そして、ミディだけが抱き続けてきた思いを、初めて目の前の青年に伝えた。
「……私が救われたのは、命だけじゃなかった。四大精霊は、私に強くなるように言った。だけど幼い私には、その意味が分からなかった。不安しかなかったわ。でも戦う彼の姿を見て、私が求められている強さはこれだと思ったの」
「求められている……強さ……?」
「そう、戦う強さよ」
ミディは、真っすぐジェネラルを見据える。
彼女の言葉、そして表情に、ジェネラルは彼女が何故これほどまでに強くなったのかの解を得た。
魔王から視線をそらすと、ミディは自分の腕をぎゅっと掴んだ。
「あの出来事は、不安しかなかった私に、一つの道を示してくれたの。心も……、救われたの」
「そう……なんだね」
ジェネラルは、ただ相槌を打つしか出来なかった。
あの出来事が、今のミディを形作っている。もしミディがメディアと出会っていなければ、彼女は今のように強くならなかった。強くならなければ、魔界に乗り込んで自分を攫わせようなどと考える事もなかっただろう。
ジェネラルがミディと出会う事もなかったのだ。
“……心が、苦しい”
ミディとの出会いまで、あの男が関わっている事を感じ、さらに形容しがたい苦しい感情が、ジェネラルを支配する。
しかし、その気持ちに蓋をして見ない振りをするわけにはいかなかった。
“ちゃんと見なければ……。どれだけ醜い感情であっても、見ないふりをして抑え込んでしまえば、いつか爆発してしまう。……メディアのように”
死んだ青年の話を思い出す。
レージュの罠に落ちたとはいえ、それまでにきちんと自分の気持ちと向き合っていれば、あそこまでミディへの気持ちが歪むことはなかったはずだ。
だからこそジェネラル自身も、己が抱える醜い嫉妬心を認める必要があった。
苦しくても、その気持ちの着地点を相手に求めるのではなく、自分自身が決めなければならなかった。
でなければ、メディアのように一方的な執着によって、ミディを傷つけてしまう事になる。
何かに悩み、深刻そうに俯くジェネラルを見て、ミディは彼を元気づける為、先ほどとは打って変わって明るい声を出した。
腕を上げて体を伸ばすと、暗い気持ちを吐き出すように言葉を発する。
「でもまあ、そんな思い出深い人が、まさかメディアだったとは思わなかったわ。世間は狭いものね。そんなすぐそばに命の恩人がいるなんて、誰が想像できたと思う?」
握った拳を口元に当て、ミディはクスクス笑った。しかし、すぐにはっと表情を切り替えると人差し指を顎に当て、少し上を向く。
「あ、でもあれだけの事をしたのだから、もうそんな事関係ないわね。寧ろ、あんな事をする人間、消滅した方がこの国の為だわ。私やお父様に幻花を使うなんて、決して許せな……」
「ミディ、無理しなくていいよ」
明るく、メディアへの悪態をついていたミディに、ジェネラルは静かな声で伝えた。思いもよらない彼の言葉に、ミディに戸惑いが浮かぶ。そして慌てて言葉を返した。
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