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「で~んかっ♡ ――きゃっ!」
婚約者に駆け寄る途中で小石に躓いて転びそうになるシャルロッテを、エドゥアルトは抱きかかえるように支える。
「おっと、危ない。気を付けないと駄目だぞ、シャーリー」
「えへへ、ごめんなさい。わたくしったらそそっかしくて……」
「そんなところが君の魅力だよ、我が最愛」
「そんな、恥ずかしいわ」
「恥ずかしがるところも可愛いね」
「もうっ、エド様の意地悪ぅ!」
「はははっ。本当に愛らしい、俺のシャーリーは」
「むぅ!」
シャルロッテはわざとらしく口をぷくりと膨らませる。林檎のようなまぁるい頬を、エドゥアルトは愛おしそうにつついた。
(なんて可愛らしいんだ、俺の婚約者は! 最高だっ!)
(……単純な男)
二人の砂糖菓子のような甘ったるい交際はなおも続く。
元より身分の高い者同士、同じく一流の教育を受けていた二人は話が合って話題も事欠かなかった。そこに男爵令嬢を超える庶民的な可愛らしさを備えた侯爵令嬢は、王子にとってまさしく「理想の女性」だったのだ。
高位貴族である二人は甘くありながらも、貴族らしい清い交際をしていた。
二人の間には常に側近や護衛が控え、口づけさえもしていなかった。
エドゥアルトとしてはもっと深い交際をしたかったが、シャルロッテが「わたくしたちは国中の紳士淑女の手本でなければ」と制止していた。
その代わり彼女はエドゥアルトが求める以上の、貴族令嬢としては斬新で且つ可憐な立ち居振る舞いをして大いに彼を満足させていた。
エドゥアルトは日に日にシャルロッテへの愛情が大きくなった。そして、男爵令嬢などにうつつを抜かしていた過去の己を酷く内省していた。
なぜ、あのような女に夢中になっていたのだろうか。
自分の最愛はずっと隣にいたではないか。
そう思えば思うほど、婚約者への愛情は湖に沈んでいくように深く重くなっていったのだ。
婚約者に駆け寄る途中で小石に躓いて転びそうになるシャルロッテを、エドゥアルトは抱きかかえるように支える。
「おっと、危ない。気を付けないと駄目だぞ、シャーリー」
「えへへ、ごめんなさい。わたくしったらそそっかしくて……」
「そんなところが君の魅力だよ、我が最愛」
「そんな、恥ずかしいわ」
「恥ずかしがるところも可愛いね」
「もうっ、エド様の意地悪ぅ!」
「はははっ。本当に愛らしい、俺のシャーリーは」
「むぅ!」
シャルロッテはわざとらしく口をぷくりと膨らませる。林檎のようなまぁるい頬を、エドゥアルトは愛おしそうにつついた。
(なんて可愛らしいんだ、俺の婚約者は! 最高だっ!)
(……単純な男)
二人の砂糖菓子のような甘ったるい交際はなおも続く。
元より身分の高い者同士、同じく一流の教育を受けていた二人は話が合って話題も事欠かなかった。そこに男爵令嬢を超える庶民的な可愛らしさを備えた侯爵令嬢は、王子にとってまさしく「理想の女性」だったのだ。
高位貴族である二人は甘くありながらも、貴族らしい清い交際をしていた。
二人の間には常に側近や護衛が控え、口づけさえもしていなかった。
エドゥアルトとしてはもっと深い交際をしたかったが、シャルロッテが「わたくしたちは国中の紳士淑女の手本でなければ」と制止していた。
その代わり彼女はエドゥアルトが求める以上の、貴族令嬢としては斬新で且つ可憐な立ち居振る舞いをして大いに彼を満足させていた。
エドゥアルトは日に日にシャルロッテへの愛情が大きくなった。そして、男爵令嬢などにうつつを抜かしていた過去の己を酷く内省していた。
なぜ、あのような女に夢中になっていたのだろうか。
自分の最愛はずっと隣にいたではないか。
そう思えば思うほど、婚約者への愛情は湖に沈んでいくように深く重くなっていったのだ。
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