【完結】黒の花嫁/白の花嫁

あまぞらりゅう

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第七話(六)

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「光河様っ!」

 涙で顔を濡らしている春菜が立ち上がって、夫にひしと抱きつく。彼は優しく抱きしめて、心配そうに可愛い妻の頭を撫でた。

「どうしたんだい、春菜? 何かあったのか?」

「みなさん酷いんです……」

 春菜の涙が再び溢れ出す。

「わたしが人間だからって、嫌がらせをしてくるんです。嫌いな食べ物を毎日出してきて、味も全く付いてなくてまともに食べられないし……」

「なっ……!」

 女主人の出鱈目な発言に、紫流の顔がかっと気色ばんだ。

「先ほどは、味のことなどは言っていなかったではありませんか!?」

「だってぇ……。紫流様の剣幕が恐ろしくて言い出せなかったんです……」

「なんだって……!?」

「紫流」

 光河の威圧するような声音が、殺気立った従者を咎めた。

「はっ」

 目に見えない威圧に、頭を下げる。

「春菜は人間界から来て間もない。不慣れなことのほうが多いだろう。だから、君が率先して妻を助けてくれないかな?」

「……御意」

 これは白龍の神の力なのか、精神的なものなのか。紫流の全身の筋肉が強張って、夫妻が部屋を去るまで一分も動けなかった。
 主から怒りの気配を感じるのは滅多にないことで、ぴりりとした張り詰めた空気が喉元を締められる感覚だった。
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