【完結】黒の花嫁/白の花嫁

あまぞらりゅう

文字の大きさ
63 / 124

第十一話(二)

しおりを挟む


 秋葉と憂夜は天界――黒龍の屋敷に戻ってきていた。
 無言でずっと自分に背中を向けたままの彼女に、彼は不安が拭いきれなかった。

 少し、やりすぎただろうか。

 今でも秋葉の家族のことは許していない。むしろ、それ相応の罰を受けるべきだと思っている。
 だがそれは、憂夜個人の考えであって、秋葉の本意ではないのかもしれない。

(幻滅されちまったかな……)

 今後は秋葉から冷ややかな視線を向けられるかもしれないと想像すると、胃がきゅっと痛くなった。

「憂夜」

 不意に、秋葉が振り向く。まるでこれから死の宣告がされるように、憂夜の心臓が跳ね上がった。

「な、なんだ……?」

 彼がおそるおそる返事をすると、

「ありがとう! お父様に復讐してくれて!」

 彼女は爛々と瞳を輝かせながら彼の手を強く握った。

「…………は?」

 さっきは怒った様子だったのに、彼女の変わりように彼は目を白黒させる。

「お父様に悔しそうな顔おかしかったなー。見た? あの表情」

 秋葉は心底おかしそうにケラケラと声を上げで笑っていた。

「怒ってないのか?」

「え? なんで?」

「だって、さっきは……」

「あぁ、あれはお父様を油断させるための私の作戦」

「作戦……?」

 憂夜が首を傾げると、秋葉はくすりと笑った。

「まぁ、個人的な報復に関係ない人を巻き込むのは良くないのは確かよ。それは絶対にしちゃ駄目。……でも、憂夜が私のために怒ってくれて凄く嬉しかった。ありがとう」

「お、おう」

 いまいちよく分からないが、彼女は特に怒っていないらしい。

「私だって、普通の人間よ。家族がこれまで自分にやってきたことは、許せないわ。だから、ちょっとすっきりした」

「そりゃ良かった。だが元に戻すとなると、あの男は絶対に調子に乗るぞ」

 憂夜が握った拳に、つい力が入る。長いあいだ愛する妻を蹂躙していた者たちが、今後も栄耀栄華を極めると思うと非常に胸糞悪い。

「そうね、だからこその作戦なのよ。お父様には迷惑を掛けたから、お詫びにたくさん神力を流してあげて」

 秋葉はニタリと悪そうな笑みを浮かべて、

「たぁ~っぷりね?」

「……」

 一拍して、憂夜は彼女の意図を理解できたようで、同じく嫌らしい笑みを浮かべた。

「ほう……?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

処理中です...