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第十一話(二)
しおりを挟む秋葉と憂夜は天界――黒龍の屋敷に戻ってきていた。
無言でずっと自分に背中を向けたままの彼女に、彼は不安が拭いきれなかった。
少し、やりすぎただろうか。
今でも秋葉の家族のことは許していない。むしろ、それ相応の罰を受けるべきだと思っている。
だがそれは、憂夜個人の考えであって、秋葉の本意ではないのかもしれない。
(幻滅されちまったかな……)
今後は秋葉から冷ややかな視線を向けられるかもしれないと想像すると、胃がきゅっと痛くなった。
「憂夜」
不意に、秋葉が振り向く。まるでこれから死の宣告がされるように、憂夜の心臓が跳ね上がった。
「な、なんだ……?」
彼がおそるおそる返事をすると、
「ありがとう! お父様に復讐してくれて!」
彼女は爛々と瞳を輝かせながら彼の手を強く握った。
「…………は?」
さっきは怒った様子だったのに、彼女の変わりように彼は目を白黒させる。
「お父様に悔しそうな顔おかしかったなー。見た? あの表情」
秋葉は心底おかしそうにケラケラと声を上げで笑っていた。
「怒ってないのか?」
「え? なんで?」
「だって、さっきは……」
「あぁ、あれはお父様を油断させるための私の作戦」
「作戦……?」
憂夜が首を傾げると、秋葉はくすりと笑った。
「まぁ、個人的な報復に関係ない人を巻き込むのは良くないのは確かよ。それは絶対にしちゃ駄目。……でも、憂夜が私のために怒ってくれて凄く嬉しかった。ありがとう」
「お、おう」
いまいちよく分からないが、彼女は特に怒っていないらしい。
「私だって、普通の人間よ。家族がこれまで自分にやってきたことは、許せないわ。だから、ちょっとすっきりした」
「そりゃ良かった。だが元に戻すとなると、あの男は絶対に調子に乗るぞ」
憂夜が握った拳に、つい力が入る。長いあいだ愛する妻を蹂躙していた者たちが、今後も栄耀栄華を極めると思うと非常に胸糞悪い。
「そうね、だからこその作戦なのよ。お父様には迷惑を掛けたから、お詫びにたくさん神力を流してあげて」
秋葉はニタリと悪そうな笑みを浮かべて、
「たぁ~っぷりね?」
「……」
一拍して、憂夜は彼女の意図を理解できたようで、同じく嫌らしい笑みを浮かべた。
「ほう……?」
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