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第十一話(四)
しおりを挟む「私に何か用かな?」
ついに門が開き、当主の四ツ折夏純が出てきたのだった。
刹那、被害者たちは堰を切ったように罵声を浴びせるが、彼は涼しい顔をして言ってのけた。
「うるさいな、貧乏人どもめが」
眼前の者たちに、まるでゴミを見るような視線を注ぐ。彼にとって金にもならない有象無象など、どうでも良かった。響き渡る罵詈雑言も、嵐の日の一瞬の暴風雨のようなものだ。
「このっ!」
ついに、堪忍袋の緒が切れた一人の男が、四ツ折の当主に殴りかかる。
だが、次の瞬間。
「ぶっ……!」
夏純の放った霊気の衝撃波が男の鳩尾にめり込んで、彼はどうと弾かれるように吹き飛ばされた。
「……」
「……」
沈黙が落ちる。
周囲の者たちは、あまりの力の差に息を呑んだ。
やはり、娘二人を龍神の花嫁に出す家門は普通の人間とこうも違うのかと愕然とした。
倒された男は先導者だった。彼が破れた今、この中に四ツ折に勝る者は皆無。
「ゴミ虫が」と、夏純は吐き捨てた。
彼はぐるりと周囲の者たちを見回すが、誰一人として目を合わせようとしなかった。怯えて俯く人々の様子が彼の自尊心を満たした。
やはり自分は選ばれた人間のようだと改めて実感した。何十年も燻っていた才能が、初めて開花したような気がした。
この先、黒龍の神力があればどんな相手にも負ける気がしない。それは、格上の霊力者家門や……皇族もだ。
おまけに自分にはもう一人の娘婿の白龍の加護もある。それは即ち、この瑞穂皇国の帝をも凌ぐ霊力があるのではないだろうか。
彼は今、無敵だった。
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