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4 可愛らしい子供たちですわ!
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「お子たち~! 新しいお継母様ですわよ~~~!」
柱に隠れている陰にキャロラインが手を伸ばすと、
――ぴょこっ!
ふわわの金色の髪と、ぱっちりお目々が柱から出てきて、チラリと彼女を見た。
「もうっ! なにやってるのよ!」
「わっ! おねえさま、いたいっ!」
しかし次の瞬間、それは柱の陰に再び引っ込んだ。
「おいで~! お継母様と初めましてのご挨拶をしましょう~!」
キャロラインは猫なで声で呼び掛ける。
少しすると、
――ぴょこっ!
「あっ! レックス! でないでっていったじゃない!」
「でも、ごあいさつは、しなきゃダメなんだよ!」
小さな男の子が柱の陰から出てきた。
彼はホワイトブロンドの猫っ毛に、透き通ったアイスブルーの瞳で、まるで天使のような神秘的な姿をしていた。
「でたらダメぇっ!!」
もう一人の子供が、勢いよく飛び出てくる。彼女も髪と瞳の色が彼と同じで――それはハロルドとも完全に同じ色合いだった。
(あら~っ! なんて可愛らしい子たちなのかしら!)
キャロラインは胸をキュンキュンさせながら、愛おしそうに二人の子供を見つめる。
男の子のほうは興味津々に彼女を見て、女の子のほうがツンと口を尖らせて睨み付けていた。
ハロルド・ハーバート公爵は、最初の妻との間に男と女の双子の子供がいた。
姉のロレッタと、弟のレックスだ。
母親は二人を産んですぐに死亡。それからも新しい母親が定着しないまま、5年の歳月が流れていた。
キャロラインは双子と家族になれるのが密かに楽しみだった。彼女は、前世では小学校の先生になるために教育学部に通っていたのだ。子供は大好きだ。
「ふふっ、やっと出てきましたわね。わたくしが二人の新しいお継母様の、キャロラインよ。よろしくですわぁ~!」
「はっ……はじめまして、おかあさま」弟のレックスがおっかなびっくり言う。「ぼくは、レックス・ハーバートです!」
「あらぁ~、上手にご挨拶が出来ましたわねぇ~! 偉いですわぁ~!」
「えへへ。おかあさま、よろしくおねがいいたします!」
「こちらこそよろしくですわ、レック――」
「ふんっ! バッカみたい!」
和やかな二人の挨拶を、姉のロレッタが大声で遮った。
「あんた! おうたいしに、こんやくはきされたんですってね!」
「まぁ! よく知ってますわね! ロレッタは、社交界のことをお勉強しているのね。偉いですわぁ~!」
「あんなみたいな女、あたしたちの、おかあさまじゃないわ!」
「残念だけど、今はそうかもしれませんわね。母親らしくなれるように頑張りますわ!」
「べつに、がんばらばくてもいいわ! あんたなんか大っキライ!」
ロレッタはべーっと小さな舌を出すと、
「行くわよ!」
レックスの腕を取って逃げ出した。
「あっ、お待ちなさい!」
キャロラインは弾むようにダンッと床を蹴って、
「はい、捕まえた~!」
瞬く間に双子を捕まえた。
「うわぁ~っ、おかあさま、すごぉ~い!」
「なによっ! はなしなさいっ!」
「いいえ、離しません!」
キャロラインはちょっとだけ真剣な表情になって、双子をまっすぐに見つめる。
「あなたたち、これから歴史のお勉強のお時間でしょう? お教室はあっちですわよ!」
双子が逃げ出した方角と逆方向を指さした。すると、二人ともみるみるばつが悪そうに顔を伏せる。
「遊びに行くのは、お授業が終わってからですわね。さぁさ、お教室へレッツらゴーですわ!」
キャロラインは双子の手をしっかり握って教室へと歩き出した。
「おかあさま、ごめんなさい……」
レックスは自分が悪いことをしている自覚があったようで、しょんぼりとした顔で謝った。
「もうっ! はなしなさいよ! あたしは、ハーバートこうしゃくれいじょうなのよ! フォレットこうしゃくけより、みぶんが上なの!」
一方ロレッタは、なんとか継母の手を離そうと、ぶんぶんと腕を振るっている。でも、いくら力を込めても、掴まれた手は微動だにしなかった。
「ちょっと、バーバラ! この女をどっかにやって!!」
ロレッタは振り返って、後ろに付いて来ている中年の女性に声をかけた。
痩せぎすで、栗色の髪をきっちり束ねた彼女は、バーバラ・スミス伯爵夫人。双子の乳母だった。
彼女は一瞬だけ戸惑う素振りを見せたが、喚き叫ぶお嬢様に気圧されて、屋敷の新しい奥様に口を出すことにした。
「恐れながら奥様、お嬢様方が嫌がっております。これ以上はご容赦をいただきたく……」
「嫌がっていても、お授業をサボることは悪いことですわ。この子たちは、貴族としての義務を果たすことを学ばねばなりません」
キャロラインはバーバラを一顧だにせず、ずんずんと教室へと歩いていく。
「もうっ、どうにかしてよ!」
廊下にロレッタの大声が響く。
普段なら屋敷の使用人たちは、おろおろと彼女の機嫌を取るところだが、今日は新しい奥様の手前どう対処すれば良いか分からなかった。
執事長と侍女長だけが、この様子を意外そうに、そして満足げに眺めている。
まさかあの悪名高き侯爵令嬢が、こんなに母親らしいことをするなんて。もしかしたら、彼女なら今の双子のワガママ放題をなんとかできるかもしれない。
ロレッタが喚こうが叫ぼうが抵抗しようが、キャロラインは少しも取り合わず前へ進む。あっという間に教室の前へと到着した。
キャロラインは二人を教室の椅子へ座らせてから、
「仕方ありません。今日は歴史のお授業が終わったら、後は自由時間にしましょう。だから、一時間だけ頑張っててちょうだい!」
「わぁっ! いいの?」と、レックスが満面の笑みを浮かべる。
「もちろんですわ。お勉強が終わったら好きに遊んで構わないわ。甘いおやつも用意しましょう!」
彼女は母として、事前に二人の学習の進捗具合を調べていた。色々と遅れているが、特に学問は大幅に遅れていた。
なので、まずは机に座る習慣を付けるところから始めたほうが良いと考えたのだ。
「やったー! おかあさま、ありがとう。ぼく、おやつのじかんまでがんばる!」
「ふんっ。そうやって、あたしたちをコントロールするつもりね。そうはいかないんだから!」
「ロレッタの好きなチョコレートケーキも用意して待っていますわね」
「ふぁああっ……!」
大好物の名前を聞いた途端、顔が綻ぶロレッタ。ツンケンしているけど、根は子供らしく素直なのだとキャロラインは目を細めた。
こうして、キャロラインの公爵夫人としての初のミッションは、無事成功に終わったのだった。
だが……。
(この子たちの服装……公爵家の子女としては……?)
僅かな違和感が、キャロラインの胸に湧いた瞬間だった。
柱に隠れている陰にキャロラインが手を伸ばすと、
――ぴょこっ!
ふわわの金色の髪と、ぱっちりお目々が柱から出てきて、チラリと彼女を見た。
「もうっ! なにやってるのよ!」
「わっ! おねえさま、いたいっ!」
しかし次の瞬間、それは柱の陰に再び引っ込んだ。
「おいで~! お継母様と初めましてのご挨拶をしましょう~!」
キャロラインは猫なで声で呼び掛ける。
少しすると、
――ぴょこっ!
「あっ! レックス! でないでっていったじゃない!」
「でも、ごあいさつは、しなきゃダメなんだよ!」
小さな男の子が柱の陰から出てきた。
彼はホワイトブロンドの猫っ毛に、透き通ったアイスブルーの瞳で、まるで天使のような神秘的な姿をしていた。
「でたらダメぇっ!!」
もう一人の子供が、勢いよく飛び出てくる。彼女も髪と瞳の色が彼と同じで――それはハロルドとも完全に同じ色合いだった。
(あら~っ! なんて可愛らしい子たちなのかしら!)
キャロラインは胸をキュンキュンさせながら、愛おしそうに二人の子供を見つめる。
男の子のほうは興味津々に彼女を見て、女の子のほうがツンと口を尖らせて睨み付けていた。
ハロルド・ハーバート公爵は、最初の妻との間に男と女の双子の子供がいた。
姉のロレッタと、弟のレックスだ。
母親は二人を産んですぐに死亡。それからも新しい母親が定着しないまま、5年の歳月が流れていた。
キャロラインは双子と家族になれるのが密かに楽しみだった。彼女は、前世では小学校の先生になるために教育学部に通っていたのだ。子供は大好きだ。
「ふふっ、やっと出てきましたわね。わたくしが二人の新しいお継母様の、キャロラインよ。よろしくですわぁ~!」
「はっ……はじめまして、おかあさま」弟のレックスがおっかなびっくり言う。「ぼくは、レックス・ハーバートです!」
「あらぁ~、上手にご挨拶が出来ましたわねぇ~! 偉いですわぁ~!」
「えへへ。おかあさま、よろしくおねがいいたします!」
「こちらこそよろしくですわ、レック――」
「ふんっ! バッカみたい!」
和やかな二人の挨拶を、姉のロレッタが大声で遮った。
「あんた! おうたいしに、こんやくはきされたんですってね!」
「まぁ! よく知ってますわね! ロレッタは、社交界のことをお勉強しているのね。偉いですわぁ~!」
「あんなみたいな女、あたしたちの、おかあさまじゃないわ!」
「残念だけど、今はそうかもしれませんわね。母親らしくなれるように頑張りますわ!」
「べつに、がんばらばくてもいいわ! あんたなんか大っキライ!」
ロレッタはべーっと小さな舌を出すと、
「行くわよ!」
レックスの腕を取って逃げ出した。
「あっ、お待ちなさい!」
キャロラインは弾むようにダンッと床を蹴って、
「はい、捕まえた~!」
瞬く間に双子を捕まえた。
「うわぁ~っ、おかあさま、すごぉ~い!」
「なによっ! はなしなさいっ!」
「いいえ、離しません!」
キャロラインはちょっとだけ真剣な表情になって、双子をまっすぐに見つめる。
「あなたたち、これから歴史のお勉強のお時間でしょう? お教室はあっちですわよ!」
双子が逃げ出した方角と逆方向を指さした。すると、二人ともみるみるばつが悪そうに顔を伏せる。
「遊びに行くのは、お授業が終わってからですわね。さぁさ、お教室へレッツらゴーですわ!」
キャロラインは双子の手をしっかり握って教室へと歩き出した。
「おかあさま、ごめんなさい……」
レックスは自分が悪いことをしている自覚があったようで、しょんぼりとした顔で謝った。
「もうっ! はなしなさいよ! あたしは、ハーバートこうしゃくれいじょうなのよ! フォレットこうしゃくけより、みぶんが上なの!」
一方ロレッタは、なんとか継母の手を離そうと、ぶんぶんと腕を振るっている。でも、いくら力を込めても、掴まれた手は微動だにしなかった。
「ちょっと、バーバラ! この女をどっかにやって!!」
ロレッタは振り返って、後ろに付いて来ている中年の女性に声をかけた。
痩せぎすで、栗色の髪をきっちり束ねた彼女は、バーバラ・スミス伯爵夫人。双子の乳母だった。
彼女は一瞬だけ戸惑う素振りを見せたが、喚き叫ぶお嬢様に気圧されて、屋敷の新しい奥様に口を出すことにした。
「恐れながら奥様、お嬢様方が嫌がっております。これ以上はご容赦をいただきたく……」
「嫌がっていても、お授業をサボることは悪いことですわ。この子たちは、貴族としての義務を果たすことを学ばねばなりません」
キャロラインはバーバラを一顧だにせず、ずんずんと教室へと歩いていく。
「もうっ、どうにかしてよ!」
廊下にロレッタの大声が響く。
普段なら屋敷の使用人たちは、おろおろと彼女の機嫌を取るところだが、今日は新しい奥様の手前どう対処すれば良いか分からなかった。
執事長と侍女長だけが、この様子を意外そうに、そして満足げに眺めている。
まさかあの悪名高き侯爵令嬢が、こんなに母親らしいことをするなんて。もしかしたら、彼女なら今の双子のワガママ放題をなんとかできるかもしれない。
ロレッタが喚こうが叫ぼうが抵抗しようが、キャロラインは少しも取り合わず前へ進む。あっという間に教室の前へと到着した。
キャロラインは二人を教室の椅子へ座らせてから、
「仕方ありません。今日は歴史のお授業が終わったら、後は自由時間にしましょう。だから、一時間だけ頑張っててちょうだい!」
「わぁっ! いいの?」と、レックスが満面の笑みを浮かべる。
「もちろんですわ。お勉強が終わったら好きに遊んで構わないわ。甘いおやつも用意しましょう!」
彼女は母として、事前に二人の学習の進捗具合を調べていた。色々と遅れているが、特に学問は大幅に遅れていた。
なので、まずは机に座る習慣を付けるところから始めたほうが良いと考えたのだ。
「やったー! おかあさま、ありがとう。ぼく、おやつのじかんまでがんばる!」
「ふんっ。そうやって、あたしたちをコントロールするつもりね。そうはいかないんだから!」
「ロレッタの好きなチョコレートケーキも用意して待っていますわね」
「ふぁああっ……!」
大好物の名前を聞いた途端、顔が綻ぶロレッタ。ツンケンしているけど、根は子供らしく素直なのだとキャロラインは目を細めた。
こうして、キャロラインの公爵夫人としての初のミッションは、無事成功に終わったのだった。
だが……。
(この子たちの服装……公爵家の子女としては……?)
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