7 / 10
7
しおりを挟む◆
王太子の誕生日パーティー。
エドゥアルトは、約束の時間に現れなかった。
シャルロッテは王太子妃教育の一貫でパーティーの主催を任されていたので、このまま一人ぼうっと彼を待つことなどできなかった。
主役は来ないが、貴族たちは揃っている。それに今夜は、政治に影響を持つ大貴族も多かった。
本来は貴族たちが王太子へ祝いの言葉を述べるのが先だが、待っていても仕方がないので、彼が登場するまで音楽やダンス、そして料理を楽しんでもらうことにした。
エドゥアルトの代わりに彼女一人で高位貴族たちへ挨拶回りをした。
王太子の不在を不審に思う貴族もいたが、どこからかアルトゥール皇太子が颯爽と現れて彼女をフォローしてくれた。
貴族たちは王太子よりもさらに身分の高い帝国の皇太子との会話の機会に満足しており、彼女は大いに彼に感謝した。
しかし、時間は過ぎていく。そろそろ国王夫妻の到着の時間だ。
さすがにその時に王太子が不在なのは不味いとシャルロッテが焦っていると、
「王太子殿下のご到着です」
正装姿のエドゥアルトと、彼と色を合わせたドレスを着たローゼが腕を組んで入場してきた。
その日、シャルロッテはコーラルピンクのドレス。ローゼはベビーピンクのドレスを着ていた。
そしてエドゥアルトは、白を基調にローズピンクの差し色の服装だ。
それは婚約者の衣装に合わせたようにも見えるが、オレンジ味の含まれたシャルロッテではなく、ローゼのドレスを濃くしたような色味だった。
なによりも、外国語でローズはローゼと同じ意味である。
楽しげに見つめ合う二人の姿を見て、シャルロッテの中でなにかが崩れていく気がした。
パーティーは無事に終わった。
エドゥアルトからは「正確な時間を伝えなかったお前が悪い」と叱責されたが、近くにいたアルトゥールが「確認を怠ったお前が悪い」と言い返してくれて、シャルロッテは少しだけ溜飲が下がった。
王太子の遅刻以外はなにもかも完璧で、シャルロッテは周囲から称賛された。
だが、いくら褒められても彼女の心はぽっかりと穴が空いたままだった。
虚しくて、悔しくて。でも、苦しい胸の内を誰にも言えなくて……。
それからシャルロッテは、またいつもの生活に戻っていった。
エドゥアルトとの待ち合わせ時間が来たら、一人で王城へ向かう日々。淡々と、同じことの繰り返しだ。
しかし、ただ一つこれまでとは違うことがあった。
彼女は王太子との婚約破棄に向けて、彼の不貞や、王太子としての責務を果たしていない証拠を密かに集めはじめた。
シャルロッテは、ついに決心したのだ。
エドゥアルトが変わってくれるのを『待つ』のを止めた。
もう彼との明るい未来を『待つ』のを止めた。
50
あなたにおすすめの小説
妹の方が好きらしい旦那様の前からは、家出してあげることにしました
睡蓮
恋愛
クレアとの婚約関係を結んでいたリビドー男爵は、あるきっかけからクレアの妹であるレイアの方に気持ちを切り替えてしまう。その過程で、男爵は「クレアがいなくなってくれればいいのに」とつぶやいてしまう。その言葉はクレア本人の耳に入っており、彼女はその言葉のままに家出をしてしまう。これで自分の思い通りになると喜んでいた男爵だったのだが…。
妹さんが婚約者の私より大切なのですね
はまみ
恋愛
私の婚約者、オリオン子爵令息様は、
妹のフローラ様をとても大切にされているの。
家族と仲の良いオリオン様は、きっととてもお優しいのだわ。
でも彼は、妹君のことばかり…
この頃、ずっとお会いできていないの。
☆お気に入りやエール、♥など、ありがとうございます!励みになります!
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
元婚約者のあなたへ どうか幸せに
石里 唯
恋愛
公爵令嬢ローラは王太子ケネスの婚約者だったが、家が困窮したことから、婚約破棄をされることになる。破棄だけでなく、相愛と信じていたケネスの冷酷な態度に傷つき、最後の挨拶もできず別れる。失意を抱いたローラは、国を出て隣国の大学の奨学生となることを決意する。
隣国は3年前、疫病が広がり大打撃を受け、国全体が復興への熱意に満ち、ローラもその熱意に染まり勉学に勤しむ日々を送っていたところ、ある日、一人の「学生」がローラに声をかけてきて―――。
わたしを捨てるのですね。では、さようなら伯爵様
夜桜
恋愛
侯爵令嬢セラフィーナは、貴族だけが参加する豪華客船の舞踏会で、婚約者の伯爵から突然の婚約破棄を突きつけられる。
絶望した彼女は夜の甲板で一人涙を流すが、そこで謎めいた公爵ゼルヴァインと出会う。
冷たくも優しい彼との出会いは、傷ついたセラフィーナの運命を少しずつ変えていく。
しかしその航海は、誰も予想しなかった出来事へと向かっていた――。
裏切りの果てに始まる、豪華客船での運命の恋の物語。
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる