【短編】妹の代わりに謝り続けた人生を、今日で終わらせます

あまぞらりゅう

文字の大きさ
9 / 11

9

しおりを挟む

「やぁ、ディアナ嬢」

「ハインリヒ様、ご機嫌よう」

 ディアナが第二王子のもとへ謝罪に行って以来、二人のあいだで交流が生まれた。音楽が趣味の二人は話が合い、すぐに親しくなった。

「本日はお誘いいただきありがとうございます。歌劇はあまり拝見したことがないので楽しみですわ」

「きっと君も気に入るとはずさ。――そうそう、今日は面白いものも見られると思うよ」

「……?」

 彼は意味深に微笑む。
 彼女はその意味が分からなかったが、実際にをひと目見たとき、彼の意図がすぐに理解できた。


「あの方は……」

 その歌手を目に留めるなり、ディアナはぶるりと全身が震えた。
 壮年の男性歌手だった。
 絹のようなホワイトブロンドに、宝石の如き碧い瞳を持つ人物だった。それは、つい目で追ってしまうほどの美しさを持っていた。

 ハインリヒは静かに語る。

「彼はあの美しさと滑らかな歌声で、デビュー直後から絶大な人気だったらしい。でも、歌劇の本場の都市へ留学すると言って、表舞台から十年以上去っていてね。それで、今年に入って戻って来たんだ」

「そうですか……」

 王子が話している間も、ディアナの目はその歌手に釘付けだった。王族に対して無礼な行為だとは頭では分かっているが、どうしても視線が離せない。

 だって、あの顔はどう見ても……。

 ハインリヒはそんな彼女を咎めることもなく、不敵に笑う。

「君の今後の身の振り方に役に立つと思ってね。良かったら、後で王家お抱えの魔術研究者を紹介するよ。進みやすくなると思うから」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こんな婚約者は貴女にあげる

如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。 初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

侯爵家を守るのは・・・

透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。 母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。 最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・

愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……

ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。 ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。 そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。

こうして私は悪魔の誘惑に手を伸ばした

綴つづか
恋愛
何もかも病弱な妹に奪われる。両親の愛も、私がもらった宝物もーー婚約者ですらも。 伯爵家の嫡女であるルリアナは、婚約者の侯爵家次男ゼファーから婚約破棄を告げられる。病弱で天使のような妹のカリスタを抱き寄せながら、真実の愛を貫きたいというのだ。 ルリアナは、それを粛々と受け入れるほかなかった。 ゼファーとカリスタは、侯爵家より譲り受けた子爵領へと移り住み、幸せに暮らしていたらしいのだが。2年後、『病弱』な妹は、出産の際に命を落とす。 ……その訃報にルリアナはひっそりと笑みを溢した。 妹に奪われてきた姉が巻き込まれた企みのお話。 他サイトにも掲載しています。※ジャンルに悩んで恋愛にしていますが、主人公に恋愛要素はありません。

悪いのは全て妹なのに、婚約者は私を捨てるようです

天宮有
恋愛
伯爵令嬢シンディの妹デーリカは、様々な人に迷惑をかけていた。 デーリカはシンディが迷惑をかけていると言い出して、婚約者のオリドスはデーリカの発言を信じてしまう。 オリドスはシンディとの婚約を破棄して、デーリカと婚約したいようだ。 婚約破棄を言い渡されたシンディは、家を捨てようとしていた。

(完結)モブ令嬢の婚約破棄

あかる
恋愛
ヒロイン様によると、私はモブらしいです。…モブって何でしょう? 攻略対象は全てヒロイン様のものらしいです?そんな酷い設定、どんなロマンス小説にもありませんわ。 お兄様のように思っていた婚約者様はもう要りません。私は別の方と幸せを掴みます! 緩い設定なので、貴族の常識とか拘らず、さらっと読んで頂きたいです。 完結してます。適当に投稿していきます。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

処理中です...