8 / 12
第8章 ― 講堂での嫉妬
しおりを挟む残り二分。たった二分。
それがミが時間通りに到着できるかどうかを分ける境界線だった。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」
彼女はそう呟きながら、通りを駆け抜けた。
理由は単純。スマホで無駄に動画を見ていて、気づけば夜更かし。
そのせいで寝坊し、さらに追い打ちをかけるように最後のバスまで逃してしまったのだ。
「貧乏人には不幸が連鎖するんだな…」
半ば自嘲しつつ、揺れるリュックを背負って走り続ける。
大学に到着した時、ミはまだ息を切らしていたが、警備員に向かって笑顔を作った。
「おはようございます!」
恥ずかしさを隠すように明るく挨拶する。
(よかった…今日は授業じゃなくて講演会だし。少なくとも単位は減らない。)
講堂に入るとき、彼女はまるで存在を消すように歩いた。
足音を抑え、視線を逸らしながら席を探す。
ハルを見つけようと、観客席を一列ずつ目で追うが――いない。
ため息。仕方なく、ほとんど埋まっている後方の席に腰を下ろす。
(どこなのよ、ハル…?)
そして、ようやく彼を見つけた瞬間――ミの息が止まった。
最前列に座っている。しかし、彼は一人ではなかった。
その隣には、美しい女の子がいた。
整った髪、魅力的な笑顔、上品な姿勢。
ミは思わず唇を噛み、身を乗り出して確認する。
そして胸が締め付けられた。
ハルが――笑っていたのだ。
しかも楽しそうに。その子と会話を弾ませて、彼女は笑い、そしてハルも笑い返す。
「な、なにそれ…!?」
ミの口がぽかんと開いた。
(うそでしょ!? 彼が私を裏切った!? あのハルが!? ついこの前まで、ちょっとぶつかってスカートの中を見ちゃっただけで真っ赤になってた、あのハルが!?)
胸の鼓動が暴れる。
怒り、驚き、そして――絶対に認めたくない感情。
嫉妬。
(どうしてそんなに簡単に他の女と笑えるの?
あのハルは、昨日まで私しか見てなかったのに!)
気づかぬうちに、彼女は小さく呟いていた。
「ハルの裏切り者め…」
「シーッ!」
隣の学生が指を口に当て、注意する。
ミは慌ててリュックを抱きしめ、顔を隠すようにうつむいた。
頬は真っ赤。だが、心の中は煮えたぎるように熱い。
(絶対にこのままにはしない…! 方法は考える。
ハルはまだ――私のものなんだから。)
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる