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第10章 ― 暗闇の中のキス
しおりを挟む「信じられない……まだこんな遅くまでこのイベントに縛られてるなんて……」
ミイは机に頭を預けて不満を漏らした。
「ハル、もう帰ろうよ!」
ハルは眼鏡を直し、真剣な眼差しで前を見据えた。
「だめだ。これ、追加点になるんだ。」
「追加点、追加点って……」ミイは頬をふくらませた。
「わたしは家でドラマを観ていたいのに。」
ハルはため息をついた。
「ドラマじゃ将来の仕事には役立たないだろう。でもこれは役に立つ。」
ミイは顔を上げ、目を丸くした。
「……うわ、まるであのうるさい先生みたいなこと言うじゃん。」
「え?今のは先生の真似だよ!気づくと思ったのに。」
ハルが笑うと、ミイはむっとした顔でそっぽを向いた。
数秒後、彼女は身を寄せ、ほとんど囁くような声で言った。
「ハル……トイレの近くまで一緒に来てくれない?」
彼は眉をひそめた。
「は?なんで?」
「だって……」ミイはわざとらしく顎を上げて言った。
「こんな美しい女の子をひとりで歩かせるなんて、ありえないでしょ。」
ハルは目を細めた。
「それって、本当は怖いからじゃないの?」
「こ、怖い?そんなわけないでしょ!」
ミイは慌てて顔をそむけた。
ハルは小さく笑った。
「恥ずかしがることないよ、ミイ。」
その瞬間、彼女は彼の上着をつかみ、ぐっと引っ張った。
「お願い、一緒に来て!」
その必死さに、ハルは観念してため息をついた。
「わかったよ……行けばいいんだろ。」
夜のキャンパスを歩くと、静けさがかえって不気味さを増した。
暗い廊下に響く足音は、今にも何かが現れそうな錯覚を与える。
「ハル……」ミイは腕にしがみつき、囁いた。
「この大学、夜は本当に気味悪いね……」
彼は周囲を見渡し、ごくりと唾を飲んだ。
「確かに……まるでホラー映画の舞台だ。もしかして幽霊でも出るんじゃないか?」
「や、やめてよ!」
ミイは彼を突っつき、半ば駆け足になった。
やっとトイレの前に着くと、ハルは腕を組み、からかうように言った。
「中まで一緒に入ろうか?」
彼女の目が一瞬輝いた。
「ほんとに入ってくれるの?」
「そんなわけないだろ!」ハルは即座に返した。
「女子トイレに入ったら、捕まるに決まってる!」
ミイは口をとがらせて中へ入り、ハルは廊下で待つことになった。
数分が過ぎ、彼は足を鳴らし始めた。
ようやくドアが開き、ミイが慌てて飛び出してきた。彼の腕にしがみつきながら言う。
「中、本当に最悪だった!鏡から何か出てきそうで……!」
ハルが笑おうとしたその瞬間、ミイは背伸びして彼の頬に軽くキスをした。
「待っててくれてありがと。辛抱強く付き合ってくれて……」
頬を赤らめながらそう告げる。
ハルは動きを止め、呆然とした。
「お、おれ……別に大したことしてないよ……」
ふたりが講堂へ戻るころ、ミイは小さく微笑んでいた。
一方ハルは、まだ頬に手を当て、どうして心臓がこんなに速く打っているのか分からずにいた。
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