5 / 6
首飾りと鎖
しおりを挟む
私の結婚式の日が、刻一刻と近づいていた。
必要なものの大半はすでに揃っていた。
ドレスはほぼ完成し、準備は日ごとに進み、
私の心は常に期待で満たされていた。
Matiasと共に歩む未来を思うと、
胸が高鳴って、ほとんど眠れない夜もあった。
そんなある午後、
部屋で身の回りの物を整理していると、
Laraが現れた。
彼女は笑顔で入ってきた。
それは、普段は感情を巧みに隠す彼女にしては、
あまりにも明るく、弾むような笑顔だった。
私は彼女を見て、尋ねた。
「どうしたの?
どうしてそんなに嬉しそうなの?」
Laraは、答えたくて仕方がないといった様子だった。
「祖母から首飾りをもらったの」
そう言ってから、続けた。
「見てみたい?」
私はすぐにうなずいた。
Laraは近づき、
その首飾りを私の手のひらに乗せた。
触れた瞬間、
背筋をかすかな寒気が走った。
それは、とても美しかった。
魅了されるほどに。
一つ一つの宝石が生きているかのように輝き、
光を反射していた。
「……本当に、素敵ね」
私は心からそう呟いた。
すると彼女は、じっと私を見つめ、
思いもよらない頼み事を口にした。
「これを首都の宝石商に持っていってくれない?」
「少し調整してほしいの」
私はためらった。
結婚式の準備で忙しいこと、
やるべきことが山ほどあることを説明した。
だがLaraは引かなかった。
一度、二度と繰り返し、
その口調は穏やかだったが、確固としていた。
そして私は……
引き受けてしまった。
長年そばにいてくれた、
最も信頼している友人からの頼みを、
断ることなどできなかった。
彼女は旅用のフードを渡し、
馬も手配してくれた。
その方が安全だと言った。
旅は二日間に及んだ。
首都に到着すると、
門番の兵士たちにも何の問題もなく通された。
すべてが、いつも通りに見えた。
広い通りを歩き、
高くそびえる建物、
行き交う忙しそうな人々、
これまで聞いたことのない音の数々を眺めた。
こんなに大きな街に来たのは、初めてだった。
最初は、
すべてが美しく思えた。
そのとき、
誰かの手が私の肩に触れた。
「君の名前は?」
男の声だった。
私は、考える間もなく答えてしまった。
その瞬間、
すべてが変わった。
「……こいつだ」
反応する暇もなく、
髪を強く掴まれた。
痛みで叫び、
やめてほしいと訴えたが、
誰も耳を貸さなかった。
私は物のように街を引きずられ、
人として扱われることはなかった。
そのまま、
牢屋へと放り込まれた。
私は一晩中叫び続けた。
助けを求め、
解放してほしいと懇願した。
だが、
返事はなかった。
一週間が過ぎた。
その場所での時間は、異様だった。
時間の感覚は曖昧になり、
日付の意味は失われていった。
体は痛み、
喉は泣き叫び続けたせいで焼けつくようだった。
そして、ついに――
牢の扉が開いた。
顔を上げた、その先にいたのは……
Laraだった。
一瞬、安堵が胸を満たした。
すべては、
恐ろしい誤解に過ぎなかったのだと、
そう信じたかった。
だが、
彼女の言葉は、
最後の希望を打ち砕いた。
「あなたは窃盗の罪で告発されている」
冷たい声で、Laraは言った。
「投獄されるわ」
心臓が止まったかのようだった。
「そんな……間違いよ……」
私は必死に訴えた。
「私は、何も盗んでいない」
Laraは、感情のない目で私を見た。
「あなたにできることは、何もないわ」
そして、
まるで些細な話をするかのように続けた。
「誰も悲しまないように、
あなたは死んだことにする」
足から力が抜け、
立っていられなくなった。
Laraは、
私がAlcas――
最高警備の監獄へ送られるのだと説明した。
言い終えると、
一歩、後ろへ下がった。
「さようなら」
私は泣いた。
叫び、
汚れた牢の床に膝をついた。
「お願い……」
必死に懇願した。
「Matiasに、愛していると伝えて」
「何もしていないって、伝えて……」
彼女は、ほんの一瞬だけ、ためらった。
「彼は知る必要がないわ」
そう答えた。
「だって、あなたに二度と会うことはないのだから」
扉が閉まった。
その瞬間、
私は理解した。
私が信じていたすべてが――
私が愛していたすべてが――
完全に、
私から奪い去られたのだ。
必要なものの大半はすでに揃っていた。
ドレスはほぼ完成し、準備は日ごとに進み、
私の心は常に期待で満たされていた。
Matiasと共に歩む未来を思うと、
胸が高鳴って、ほとんど眠れない夜もあった。
そんなある午後、
部屋で身の回りの物を整理していると、
Laraが現れた。
彼女は笑顔で入ってきた。
それは、普段は感情を巧みに隠す彼女にしては、
あまりにも明るく、弾むような笑顔だった。
私は彼女を見て、尋ねた。
「どうしたの?
どうしてそんなに嬉しそうなの?」
Laraは、答えたくて仕方がないといった様子だった。
「祖母から首飾りをもらったの」
そう言ってから、続けた。
「見てみたい?」
私はすぐにうなずいた。
Laraは近づき、
その首飾りを私の手のひらに乗せた。
触れた瞬間、
背筋をかすかな寒気が走った。
それは、とても美しかった。
魅了されるほどに。
一つ一つの宝石が生きているかのように輝き、
光を反射していた。
「……本当に、素敵ね」
私は心からそう呟いた。
すると彼女は、じっと私を見つめ、
思いもよらない頼み事を口にした。
「これを首都の宝石商に持っていってくれない?」
「少し調整してほしいの」
私はためらった。
結婚式の準備で忙しいこと、
やるべきことが山ほどあることを説明した。
だがLaraは引かなかった。
一度、二度と繰り返し、
その口調は穏やかだったが、確固としていた。
そして私は……
引き受けてしまった。
長年そばにいてくれた、
最も信頼している友人からの頼みを、
断ることなどできなかった。
彼女は旅用のフードを渡し、
馬も手配してくれた。
その方が安全だと言った。
旅は二日間に及んだ。
首都に到着すると、
門番の兵士たちにも何の問題もなく通された。
すべてが、いつも通りに見えた。
広い通りを歩き、
高くそびえる建物、
行き交う忙しそうな人々、
これまで聞いたことのない音の数々を眺めた。
こんなに大きな街に来たのは、初めてだった。
最初は、
すべてが美しく思えた。
そのとき、
誰かの手が私の肩に触れた。
「君の名前は?」
男の声だった。
私は、考える間もなく答えてしまった。
その瞬間、
すべてが変わった。
「……こいつだ」
反応する暇もなく、
髪を強く掴まれた。
痛みで叫び、
やめてほしいと訴えたが、
誰も耳を貸さなかった。
私は物のように街を引きずられ、
人として扱われることはなかった。
そのまま、
牢屋へと放り込まれた。
私は一晩中叫び続けた。
助けを求め、
解放してほしいと懇願した。
だが、
返事はなかった。
一週間が過ぎた。
その場所での時間は、異様だった。
時間の感覚は曖昧になり、
日付の意味は失われていった。
体は痛み、
喉は泣き叫び続けたせいで焼けつくようだった。
そして、ついに――
牢の扉が開いた。
顔を上げた、その先にいたのは……
Laraだった。
一瞬、安堵が胸を満たした。
すべては、
恐ろしい誤解に過ぎなかったのだと、
そう信じたかった。
だが、
彼女の言葉は、
最後の希望を打ち砕いた。
「あなたは窃盗の罪で告発されている」
冷たい声で、Laraは言った。
「投獄されるわ」
心臓が止まったかのようだった。
「そんな……間違いよ……」
私は必死に訴えた。
「私は、何も盗んでいない」
Laraは、感情のない目で私を見た。
「あなたにできることは、何もないわ」
そして、
まるで些細な話をするかのように続けた。
「誰も悲しまないように、
あなたは死んだことにする」
足から力が抜け、
立っていられなくなった。
Laraは、
私がAlcas――
最高警備の監獄へ送られるのだと説明した。
言い終えると、
一歩、後ろへ下がった。
「さようなら」
私は泣いた。
叫び、
汚れた牢の床に膝をついた。
「お願い……」
必死に懇願した。
「Matiasに、愛していると伝えて」
「何もしていないって、伝えて……」
彼女は、ほんの一瞬だけ、ためらった。
「彼は知る必要がないわ」
そう答えた。
「だって、あなたに二度と会うことはないのだから」
扉が閉まった。
その瞬間、
私は理解した。
私が信じていたすべてが――
私が愛していたすべてが――
完全に、
私から奪い去られたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~【after story】
けいこ
恋愛
あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~
のafter storyです。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる