赤い糸のさきに

アtorica

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「お、あの教室で曲がってる」

 俺のクラスの二つ隣の教室に赤い糸が入っていて、口端がゆるりと上を向く。
 まさか、こんなにも近い場所に俺の運命の相手が存在していたとは。
 先輩でも後輩でもなく、同年代だったのも話が合いそうで嬉しい。
 弾む足取りのまま教室に近づけば、きゃあきゃあと騒ぐ甲高い女子の声が耳をつんざいた。

「なんだ……? 騒がしいな」

 浮かれた気分が困惑の色に一瞬で塗りつぶされる。
 俺の運命の人がいる筈の教室で、一体何が起きているのだろう。
 そろそろと入り口から顔を覗かせれば、爽やかな風が目の前を通り抜けた。

希輝きらくん! 今日は部活ないの?」
「帰りにカラオケいこうよ」
「おまえばっか女子にモテんのムカツクんだけど」

 女子に群がられることに慣れているのか、周りに目を留めず通学鞄を肩にかけた男。
 テレビの中でしか見た事がないような整いすぎた顔立ちに、感嘆の吐息が漏れた。
 少し銀色がかった髪が、こんなにも似合うと思った男は初めてかもしれない。
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