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第71話 武闘大会予選前っす
しおりを挟む「人がいっぱいだねー」
「そーだね」
建国記念祭の一日を堪能し、ラキシエール伯爵家の屋敷でティナの可愛い魔物姿を堪能した翌日。
ん?ティナの魔物姿が気になる?
それは天使だったと伝えておこう。
あとは妄想だけで飯を食べてほしい。
堪能した翌日、闘技場に向かうと、入り口前には人の列と多くの屋台が並んでいた。
嫌になるほどの人混みを見つめながら、出場者の入り口を探しているのだが。
んー。どこだろうか。
とりあえず、武装してそうな人が向かっている方に進んでいくと、掲示板があり、そこに人が集まっていた。
「ソラ。あれなに?」
「出場者のグループ分けされたやつみたいだね。タイムスケジュールも貼っているみたい」
掲示板にはA~Fグループに分けられ、その下に人の名前がずらりと書かれている。
だいたい一グループ五十人ぐらいだろうか。それが六グループだから総人数は三百ぐらいなのかな?
想像しているより、参加人数は少ない。
こういう褒美があって、強さを決める大会なんて冒険者であふれかえると思ったんだけどな。
案外、みんなが参加するものではないのかもしれない。
まあ、冒険者だからといって戦闘に興味があるとは限らないか。
それに、基本は魔物との戦闘を想定しているから、人間相手は得意としていないとかあるかもしれないしね。。
ティナともふもふのテトモコシロを連れ、掲示板にいると後ろから声がかかる。
「おう、ソラか。出場するみたいだな」
「あっ、ゼンさん。久しぶり」
後ろを振り返ると、冒険者ギルドであった現役Sランク冒険者の竜人ゼンさんがいた。
「ゼンさんもでるの?」
「俺はでない。前に優勝したからもう興味などない。それに俺は解説の仕事があるから、元から出場ができない」
「解説?」
「あー、Sランクになってからは毎年本戦の解説をしている。レベルの高い者同士の戦いは強者にしかわからないこともあるからな。それを観客に伝えるのだ」
よかった。
ゼンさんと戦うことになるかとひやひやしたよ。
この人いい人なんだけど、節々に見せる表情がおっかないんだもん。
どこか俺を値ふみしているみたいな目で見てくるから、心を丸裸にされている気分になる。
「戦いを理解しないといけないから難しい仕事だね。がんばって」
「これで一二年目だからな。慣れたものだ。ソラの戦い楽しみにしている」
まあ、Sランクの英雄さんだしね、解説も人気があるみたいだ。
ゼンさんはそういうと、俺の肩をたたいて、闘技場の中へ入っていった。
もー、叩く力が強すぎるよ。神様印のローブを着ているから痛みはないけど、衝撃は感じるからね。単なる十歳の子供だと泣き出しているぞ。
「わふ」
「ソラ―、名前あったよー」
ゼンさんと話している間、うちの子たちは俺の名前を探していたみたいだ。
「ありがと。Fグループか。まだだいぶ時間があるな」
俺はFグループの下の方に名前が書かれていた。
まあ、期日ギリギリだったしね。そうだろうとは予想していた。
タイムスケジュールでは一時間ごとにグループごとで戦闘を行うみたいで、俺は最終だからかなり時間がある。
んー。初めから見てもいいんだけど、乱戦でわかりづらいし、退屈しそうだ。
「あとちょっとでAグループが始まるよ?」
「きゅうきゅう」
ティナシロは観戦する気満々みたいだな。
「じゃー、見にいこっか。出場者の観戦場所があるみたいだし。そこに行こう」
掲示板の案内に従い、観戦場所を目指す。
観戦場所までの階段を上ると、闘技場の中にはすでに観客が結構な数が入っており、様々な声が聞こえる。
あいつが今年は優勝するぞとか言っている声がするので、有名な出場者もいるのだろう。
まあ、こういうのは人気者ができるだろうな。スポーツ選手でも人気な人は多いかね。
同じチームなのに、観客が着ている名前入りユニフォームなどの売り上げが段違いとか。
まあ、人気者も人気にそぐわない戦い方したら叩かれるんだろうから、大変だろうがな。
結局この武闘大会はイベントのような物だし、人気がでてなんぼ。
サバスさんから聞いたのだが、武闘大会で優秀な成績をのこした冒険者はその年に使命依頼が山ほどくるらしい。
貴族はこぞって流行に敏感なので、指名依頼をしたという事実だけでお茶会の注目の的になるらしい。
冒険者にとっては優勝できなくても、それなりの知名度ができるから、力がある奴、魅せる試合ができる奴は大きなチャンスとなるということだ。
まあ、俺は使命依頼などいらないんだけどね。
「さぁー、皆さん、今年も武闘大会の季節になりました。ほとばしる戦気、魅了する戦技。今年はどんな出場者が頭角を現してくるのでしょうか。楽しみですね。今年も引き続き司会進行役を務めますメロディー・キャリーです。ヨロシクね」
闘技場に女性の明るい声が響き渡る。
風魔法を使用した魔道具なのだろうが、スピーカーのように会場全体に響き渡っている。
「今日も可愛い。生きてて偉い」
「うぉーーーー。メロディーちゃん。今年は俺が優秀するからなー」
「勝てたらデートしてくれ」
「結婚してくれー」
メロディーと呼ばれる女性の声が聞こえると、会場から怒号にも似た声がでかでかと聞こえてくる。
出場者からの声も多く、一気に会場のボルテックスが上がる。
男性陣が顔を向けているところを見ると、ピンク髪のツインテールの女性がマイクのようなものを持っていた。
そして、そのむさくるしいほどのラブコールに手を振って答えている姿が見える。
あれが、声の主のメロディーさんだな。
声からわかるが、男性陣には絶大な人気があるみたいだ。
んー。確かに顔も整っているというか、童顔で可愛いらしい見た目だ。
だが、その領域には絶対少女ティナが存在するからな。俺にはメロディーさんに惹かれるものはなかった。
大人の魅力あふれるお姉さんだったら、ティナと対立せずに一位になれたのかもしれないな。どんまい。俺には不動の一位ティナがいる。ジャンルを変えて出直してくるんだな。
「やっぱすごい人気っすねー。僕くんも好きになっちゃったかな?」
メロディーさんのことを見ながらティナに対する愛を感じていると、横にきた男性に声をかけられる。
「あー。あんまり興味ないですね」
「そうなんすか?少年は素直な方がいいっすよ」
「いや、ほんとに興味ない」
「理想が高すぎてもダメっすよ。俺っちはずっと片思いっすけどね」
なんか慣れ慣れしいやつだな。俺よりは年上だろうが、下っ端みたいな話し方が似合う眼鏡の男性。おかっぱ頭が特徴的だ。
「ここにいるから出場者っすよね?俺っちはヒロっす。」
「あー。俺はソラ。Fグループででるよ」
「一緒っすね。んー。僕くん強そうだから要注意っすね」
俺のことをなめる様に見て、そう告げるヒロ。
十歳の少年の見た目で強そうに見えるとか、この人も鑑定とか強さがわかる何かがあるのかな?
ヒロの風貌や雰囲気からはわかりにくいが、武闘大会に慣れていそうだし強いのかもしれない。
「まあ、試合では手加減しないよ」
「いいっすよ。その方が燃えるっす。去年は本戦一回戦で負けたっすけど、そのままそいつが優勝したんで実質二位っす。今年の優勝は俺っちす」
まあ、アホな理論を言っている気がするが、そう思うのは人それぞれだ。
それにしても、予選通過できたみたいだし、やはり強者なのか。
背丈の低い人の戦い方が気になるが、試合前に聞くのも不躾か、楽しみにしておこう。
「もうそろそろ始まるみたいっすよ。Aグループの登場っす」
ヒロが言っているように、闘技場のステージには参加者がぞろぞろと姿を現している。
「んー。あんまり武闘大会常連はいないっすね。Aグループだと銀髪のジルドが残りそうっす。最近冒険者専業になってソロで活躍してきてるっすから要注意っす」
「あ、ジルドさんじゃん。ソロってことは従者やめたのか」
ステージにはエルドレート公爵の金髪との決闘の時にいた銀髪眼鏡のジルドさんの姿が見える。
専業ってことは従者やめたみたいだな……やっぱり処罰があったのかな?
まあ、あんな家に仕えていても意味がないから、ジルドさんからしてもいいことなはずだ。
下を向かず、どんどん冒険者として活躍していってほしい。
それにヒロも注目しているみたいだし、やっぱり強い人だったんだな。
あとで時間があったら話してみたい。一応当事者だし、あれ以降のエルドレート公爵家の情報も欲しい。特に金髪の行方とか。
「それではAグループの試合を始めちゃいますよ。よーい。始め」
メロディーの明るく、おちょくっているかのような声で試合の開始が宣言される
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