サブドロップ症候群の南さんと、恋に落ちたDom

あゆみん

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6話 大人のプレイ?

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「それで、どうだったの?」

「……ちゃんとプレイできた」

たった一言なのに、賢の肩から力が抜けるみたいに安堵がこぼれた。どれほど心配させていたか、表情だけで伝わる。

「今度、ちゃんと検査したいから。一度、二人で受診してくれる?」

薫くんにも確認が必要だけど、あの子ならきっと「いいよ」と受け入れてくれる気がした。
実際、あれから週に二回のペースで会っていて、体調は目に見えて良くなっている。
ちょうど今日も会う予定だし、そのとき話してみよう。
そう考えていたところで、ふと思い出す。

「そういえば、賢の実家から急に俺に連絡来たんだけど」

「え、なんで」

「俺にもわからない。……どうする?」

「無視していいよ。しつこそうなら言って。自分から連絡しないように言うから」

賢とは幼馴染で、付き合いは長い。家柄の事情も、賢が背負ってきたものも知っている。
だから今回の連絡も、いい予感は全くしなかった。案の定、賢の顔がさっと曇る。
現に、賢の顔が一気に暗くなる。

「……なぁ、たまには一緒に飲むか?」

賢は職業柄もあるが、普段から自分にストイックすぎる部分がある。
無理に張り詰めてしまうから、ときどき強制的に気を抜かせないといけないんだ。

最近は俺の体調のせいで誘えていなかったけれど、今がその“とき”だ。

「はぁー……南には全部お見通しだね」

「伊達に長く付き合ってないからな」

少しだけ戻った賢の表情に、俺もほっとした。
それから病院を出て、いつもの約束の場所へ向かう。

カランカラン──。

「いらっしゃい。いつものでいいかしら?」

「南さん、早かったですね」

マスターと薫くんが俺を迎えてくれる。
プレイの前に飲み物を片手に話す──それが、俺と薫くんのルーティンだ。
俺はいつも通り、アイスコーヒーの砂糖多め。

「南さんって甘党?」

「いや、そういうんじゃないけど……、子供舌なんだ」

すると薫くんが「唐揚げが好物ですもんね」と笑う。
大人が唐揚げ好きでもいいと思うけどな……と、心の中でだけ反論しておく。

その雑談の流れで、病院での話も切り出すと、薫くんは迷わず「いいですよ」と頷いてくれた。
次に休みが重なる日に受診することが決まる。

「そういえば、南ちゃんの担当さん、南ちゃんの幼馴染なのよね?」

「そうですよ。同い年とは思えないくらい努力家で」

マスターが聞き上手なのもあるが、賢の話になると、どうも俺は饒舌になるらしい。
尊敬もしてるし、誰より信用してる。自分で思うより、俺は賢を大切に思っているのだろう。

けれど、さっきの賢の暗い顔が頭をよぎる。
あいつがあんな顔をするの、本当に久しぶりだった。
不安が滲んだのか、薫くんやマスターに指摘されてしまう。

「その子、今度で良いからお店に呼んでちょうだい」

マスターが唇に笑みを浮かべながら言った。

「あたし、お話し好きなのよ。ストレスも悩みも、言葉にすると軽くなるでしょう?」

確かに、賢は溜め込んだものを吐き出すと一気に戻るタイプだ。
今度飲もうとも話したし、ちょうどいいかもしれない。
俺が予定を見て連絡すると伝えると、マスターはいつになく嬉しそうに頷いた。



───────────────────

話が弾んだあと、いつものように薫くんの手に引かれ、俺はあの部屋へ向かう。
何度も来たはずのシンプルな部屋なのに、今日は空気が少し違うような気がする。

「南さん。今日はいつもと違うこと、試してみましょう」

いつもなら繋がれたまあの手が、そっと離れた。
触れていた温度が消えるだけで、心のどこかが寂しく感じる。

薫くんはそのままベッドに腰掛け、俺は少し離れた位置で立つ。
その距離で、はっきり飛んできたコマンド。

「南さん、Come《来て》」

短い言葉に、身体が自然と歩み出す。
足取りはゆっくり、けれど迷わず薫くんの目の前まで近づく。

そして、続けられたコマンド──。

「そのまま、Kneel《座って》」

初めてのコマンドだ。それも空気がどこか変わった気がした。
子供の遊びではなく、大人の“プレイ”の入口に立ったみたいな感覚に──。

それに抗う気はない。けれど、初めてのKneelにどう座ればいいかわからず、ぎこちなく正座をして小さく身をまとめた。緊張で胸が高鳴っている。けれど見つめた薫くんはいつもと同じ優しい顔だ。

「ごめんなさい。初めてですもんね。次座るときは──」

言い切る前に、腕を引かれた。強く引かれたことで体勢が崩れ、そのまま薫くんの膝の上に、跨る形で倒れ込む。
恋人でもなかなかしないような体制に、思わず肩を手で押し返す。

「か、薫くん、この体勢は──」

けど、その押し返した手を優しく包まれ、もう片方の手が俺の口元に添えられる。

「シー……そのまま、Hug《ハグ》して?」

いつものはずのコマンドが、やけに恥ずかしい。
そんな俺を見て、薫くんがゆっくり耳元で囁いた。

「ハグと、”お仕置き”──どっちがいいですか?」

身体がびくりと跳ねた。俺は恐る恐るいつものように薫君にしがみついた。

「Good boy」

耳元で落ちる声に、身体が熱くなる。それで十分なはず、なのに──“お仕置き”という言葉に、期待した自分がいた──。

その自分に驚きながら、俺は薫くんの肩に額を押しつけて顔を上げることができなかった。
そのとき薫くんの瞳が、ぎらぎらと光りながらも、必死に理性を保っていたことには気づかないまま。

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