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番外編 素直すぎる歩夢 R18
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まさか、こんなふうに心から笑える日が来るなんて思ってもみなかった。
「歩夢。そろそろ暗くなるから、それくらいにしないかい」
「あと少しだけ。もう少しでできそうなの」
「ふふ、今日も私の番は上機嫌だね」
夕暮れに染まり始めた森の中。
筆を走らせる僕の背後から、そんな穏やかな声がかかる。
でも、完成が近いと思うと、どうしても手を止められなかった。
そんな僕の返事に、ディランさんは小さく笑った。
困ったようにも、けれどどこか嬉しそうにも見える、その表情。
結局「しょうがない」と言いながら、彼は僕の後ろに腰を下ろし、背中から包み込むように抱き寄せてきた。
広い胸と、確かな体温。
すぐにでも身を預けたくなるのをこらえ、僕はぐっと意識を紙へ戻す。
──そうして、しばらくの時間が流れ。
「……できた!」
完成した瞬間、思わず声が弾んだ。
後ろから覗き込むディランさんにもよく見えるよう、描き上げたデッサンを掲げる。
世界中を旅する中で、どうしてもここだけは描き残したかった。
精霊樹が根を張る、神聖な森。
一歩足を踏み入れれば、澄んだ空気と、どこか現実から切り離されたような感覚に包まれる。
けれど、精霊のいとし子である僕にとって、この森は不思議と落ち着く場所だった。
初めて足を踏み入れた瞬間は、精霊たちが一斉に僕たちを歓迎してくれた。
その弾むような声と気配に、自然と笑みがこぼれた。
そんな僕が描いたのは、宙を舞い、踊るように戯れる妖精たち。
自分でも驚くほど、納得のいく出来だった。
「いつ見ても歩夢の絵は凄いね。飽きるどころか、見るたびに引き込まれる」
それを見つめるディランさんの視線は、絵よりもどこか僕自身に向けられている気がして、照れくさくも嬉しくなる。
「ふふ、もっと褒めてもいいんだよ?」
「そんなこと言われたら、数時間は離してあげられないよ」
軽口を叩き合う、その時間さえ心地いい。
それから完全な夜になる前に、僕たちは野営の準備を始めた。
長旅にもなると、今日みたいに宿に泊まれる日ばかりじゃないけれど、自然の中で過ごす時間は、僕にとって苦ではないから特に問題はなかった。
薪を集めに向かうディランさんを見送り、僕は夕食の準備に取りかかる。
今日の献立はクラムチャウダーだ。昨日から楽しみにしていた分、気持ちも弾んでいた。
──けれど、そのとき。
「あゆむ!ディランが怪我した!」
突然、メルエムの慌てた声が響いた。
「え……」
心臓が強く跳ねる。
旅を始めてから、初めての緊急事態だった。
ディランさんが怪我をするなんて余程のことがあったのかもしれない。
そんな嫌な想像を振り払うように、僕はメルエムの後を追う。
そして森を少し抜けた先、川辺に立つ背中が見えた。
「ディランさん……!」
思わず名前を呼ぶ。
けれど、振り返ったディランさんの表情は穏やかで、周囲に浮かぶ精霊たちもどこか楽しげだった。
拍子抜けするほど、そこには幸福な空気が満ちている。
そんな状況が掴めず立ち尽くしていると、彼の手にある花束が目に入った。
「歩夢」
その甘い声で名前を呼ばれ、近づいてきたディランさんは、僕の前で片膝をつく。
「君とこうして旅ができていることが今でも夢みたいだよ。それに君と番になれたことも──」
ゆっくり紡がれる言葉に、耳を傾ける。
「でも、ちゃんと祝ったことはなかったね。それだけが心残りだったんだ。だから、君が一番楽しみにしていたこの森で、改めて伝えようと思った」
視線が、真っ直ぐに僕を射抜く。
「歩夢、私は君を、愛してる。──そんな君に、これを受け取ってほしい」
そう差し出されたのは、花束と、白銀に輝く小さな欠片。
親指の爪ほどの大きさで、彼の髪と同じ色をしていた。
「ありがとう……。僕、嬉しい……。それはそうと、これは何?」
涙ぐみながら問いかけると、彼は迷いなく答えた。
「私の核だよ」
「……核って……」
竜人にとって、核は命そのもの。
皆、見つからないように身体のどこかへ隠し持っていると聞いていた。
「でも、それってすごく大事なものなんじゃ……」
「だから君に渡すんだ。それを飲めば、私と同じ時間を生きられる」
「え……」
竜人はとても長命な種族だ。
それに比べて、人間である僕の寿命は短い。
しかも、僕はすでにその寿命を削ってしまっている。
そんな僕の不安が顔に出ていたのだろう。
ディランさんは微笑み、僕の手を包み込む。
「君の精霊から寿命のことは聞いたよ」
その言葉に驚いてメルエムを見る。
「頑張ってヒトの文字を覚えて伝えたんだ。勝手なことしてごめん。でも、僕はあゆむに、もっと生きてほしい」
だからお兄ちゃんに手紙を書くとき、あんなに文字を必死に覚えていたんだ。
反省と願いをにじませたそのメルエムの表情と、その伝えられた気持ちに胸がいっぱいになる。
「歩夢、たとえ私の寿命が減ってしまっても構わない。竜人の寿命を考えたら減ってちょうどいいくらいだよ。それに、君がいない人生なんて意味がない。私は君と、永遠を共にしたい」
揺るがないディランさんの声。
そんなこと言われたらもう──僕の答えは決まってる。
「うぅッ……、ぼ、僕も。…僕もディランさんと、もっと長い時間を一緒に過ごしたい」
そう震える声で返事をし、”大事な鱗”を泣きながら強く握りしめた。
それからあやすように僕を抱きしめるディランさん。そして精霊たちの祝福に包まれて、僕はただその幸せをかみしめた。そして不意に目が合ったメルエムにも「ありがとう」と返し、メルエムも特大の笑顔を返してくれる。
それから無事に核を飲み込んだ僕は、川面に映る自分の姿を見て息をのむ。
「目の色……ディランさんと一緒だ」
「竜人の核を飲んだ番は、皆そうなるんだ。こうして見ると、やっと自分のものだと実感するね」
そう微笑む彼を見て、胸の奥が熱くなる。
僕は嬉しさのあまり、抑えきれない気持ちがあふれ、僕は彼の耳元へ顔を寄せた。
「テントに戻ろ……ディランさんに、《触りたい》」
囁いた瞬間、彼の瞳が獣のように輝いた。
それからは食事も忘れて、二人で野営地に籠もった。
向かい合うように、僕はディランさんに跨り、しがみつく。
それから、重ねられた唇。それはすぐに深いキスへと変わっていった。
息が苦しい。──でも、その苦しさすら、頭がふわふわするようで心地いい。
その熱い舌が絡むたび、身体の奥がじわじわ熱を帯びていく。
「ディランさん……」
声をかけると、熱を帯びた視線が注がれた。
その奥に潜む獣を、もっと引きずり出したくて、僕は自分の小さなそれをさらけ出し、胸元も隠さずに見せる。
「……いつもの、してほしい」
そんな短いお願いに、ディランさんは目を細め低く答える。
「…仰せのままに」
次の瞬間、胸の尖りに唇が触れ、赤い舌が転がすように弄ぶ。
同時に、大きな手が下で僕のものを包み込み、ゆっくりと扱き始める。
時折、先端をえぐるような刺激が走り、腰が勝手に跳ねた。
「あ……っ、きも、ち……」
堪えきれず漏れた声に、ディランさんは満足そうに息を落とす。
僕はただ、その快楽に身を委ねた。
でも、これだけじゃ足りない。
「ディランさん……あれも、して……」
そう言って、僕は空いている彼の手を取り、自分の首元へ誘導した。
「……ハマってしまったのかい?」
その問いかけに、僕は考える余裕もなく、ただ小さく頷いた。
それを見たディランさんは、一つ笑顔を零して、少しずつその手に力を込めていく。
「かは……っ、ヒュ、──」
首元にかかる圧。
喉からは、ただ空気が擦れる音が漏れ、視界の端はチカチカして、星が散り始める。
それでも、唇は塞がれ、舌を奪われ続ける。
──きもちいい……けど、……堕ち、る……。
快楽が一気に濃くなり、全身を塗り潰しそうになった、その瞬間。
ふっと、首の圧が解けた。
「ごほ……っ、ごほっ……」
空気が一気に肺に流れ込み、思わずむせる。
けど、その一瞬うちに、僕のものからは白濁がこぼれていた。
今ので、完全に果ててしまったのが、自分でもわかる。
「ふふ……歩夢は、本当に快楽に素直だね」
そう言いながら、ディランさんは自分の下履きに手をかけ、前を寛げた。
現れたのは、見慣れた、けれど何度見ても圧倒される長さのそれ。
視界に入っただけで、さっき果てたはずの身体が、また熱を持つ。
僕は体勢を変え、それに口を近づけようとした。
僕もディランさんにしてあげたい。けど──
「待って、歩夢。今日は全部、私に任せて」
静かだけど、逆らえない声音。
そう言われて止められると、少し名残惜しくて唇を引いた。
そんな僕を、ディランさんはうつぶせにするように誘導していく。
そして背中に覆いかぶさる重み。──そこから、執拗なほどの愛撫が始まった。
腰を少し高く持ち上げさせられ、前立腺を的確に刺激される。
背中には熱いキスが降り注ぎ、息をするのもままならない。
それだけで、もう限界が近い。
「ディ……ディランさん……も、う……」
「そろそろ良さそうだね」
そう言われて体を返そうとした瞬間、後ろから抱き締められて動きを止められる。
「……今日は、このまま」
囁かれた直後、うつ伏せのまま挿入される熱。
入っただけで、身体が甘く痙攣する。
そこから、ゆっくり、確実に動き始めるディランさん。
逃げ場のない体勢で、良いところだけを正確に突かれ、快楽だけが引き上げられる。
──も、……い……イク……っ。
耐えきれず、僕は痙攣とともに二度目の白濁を吐き出した。
息が乱れ、頭がぼんやりする。
「はぁ……っ、はぁ……」
「歩夢」
いつもなら少し休憩するところ、名前を呼ばれた瞬間、さらに重い圧が前立腺にのしかかってきた。
「お゛……っ、……おく……っ」
あまりの強すぎる快感に僕は足をジタバタさせた。
「逃げないで歩夢──もっと……《抉って》あげる」
言葉通り、全体重をかけた一撃。
同時に、また首に感じた圧迫感。
続けざまに与えられた快楽に、僕は悲鳴にも近い嬌声を挙げながら、下に湖を作る。
──も、……むり……ッ……!
そして最後、打ち付けられた重いピストンと共に強烈な快楽が弾け、意識が、完全に飲まれた。
───────────────────
sideディラン
竜人は粘着質だ。
執念、執着――どう呼ぼうと構わないけれど、一度絡め取ったものを離さない性質は、行為にも如実に表れる。
最後の最後、私は孕ませる勢いで全体重をかけ、その納まりきらない白濁を歩夢の中へ打ち込んだ。
同時に締めていた首を解放すると、激しい痙攣ののち、力の抜けた身体。下には歩夢の潮らしきものが池を作っていた。
「あー……どうしたら、もっと私に堕ちてくれるだろう」
独り言のように漏らしながら、私は愛しい番を抱き上げる。
この身体も、この反応も、すべて私によって起きたものだと確認するように。
もともと男性不信で、こうした行為そのものを避けてきた彼。
兄たちを助けようと、無自覚のまま自分自身を律してきた歩夢は、旅に出てから明らかに変わった。
末っ子で本当は甘えたがりな彼。
とても素直で、本来はよく笑う青年だということ。
そして、行為においては、その素直さが仇となるほど、快楽に正直で、従順で、感受しやすい。
最初はただ慣れてほしかった。手をつなぎ、抱きしめるという戯れのような行為。
しかし、私自身、愛しい番を思うとそれだけで満足していた。
けれど、いつしかから、歩夢が向けてくる熱を帯びた視線が次第に増え、それに呼応するよう、私の欲も歯止めを失っていった。
そこで知った。歩夢には、はっきりとしたMの気質がある。
胸の尖りや、まるで行為そしたことのないピンク色の小さな膨らみ。
それをじらしながらも時折、強めにかんだり、指で抉ると、途端に身体を痙攣させ必死にすがりついてくる。
逃げるどころか、行為を終えた後は「もっと」と訴えるような欲を含んだ目を向けてくる。
だから、今日は堕ちるまで快楽を与えようと思っていた。
そうして酸素を奪いながら執念に与え続けた刺激。
最後は全体重をかけ中を抉るように自分の長いものを押しつけた。
前立腺を超え明らかに奥の方まで埋め込まれた自身のもの。
予想通り歩夢は意識を手放した。
けれど、意識がないままに、痙攣を繰り返している。
私から与えられるものを拒むことなく全て受け入れる彼。
そして、私の手によって育てられているような感覚。
その感覚が、たまらなく私を満たしていた。
自分でも理解している。愛と呼ぶにはあまりにも禍々しく、重すぎるこの気持ちを。
それでも歩夢は、私を見上げて笑い、すべてを受け入れる。
だから私も、そんな番につい、甘えてしまう。
そう思うと、案外素直すぎる歩夢くんとは内面的な意味でも相性がいいのかもしれない。
私は身体を預け、無防備に眠る番の唇に、静かにキスを落と、その寝顔を愛しそうに見つめ続けた。
「歩夢。そろそろ暗くなるから、それくらいにしないかい」
「あと少しだけ。もう少しでできそうなの」
「ふふ、今日も私の番は上機嫌だね」
夕暮れに染まり始めた森の中。
筆を走らせる僕の背後から、そんな穏やかな声がかかる。
でも、完成が近いと思うと、どうしても手を止められなかった。
そんな僕の返事に、ディランさんは小さく笑った。
困ったようにも、けれどどこか嬉しそうにも見える、その表情。
結局「しょうがない」と言いながら、彼は僕の後ろに腰を下ろし、背中から包み込むように抱き寄せてきた。
広い胸と、確かな体温。
すぐにでも身を預けたくなるのをこらえ、僕はぐっと意識を紙へ戻す。
──そうして、しばらくの時間が流れ。
「……できた!」
完成した瞬間、思わず声が弾んだ。
後ろから覗き込むディランさんにもよく見えるよう、描き上げたデッサンを掲げる。
世界中を旅する中で、どうしてもここだけは描き残したかった。
精霊樹が根を張る、神聖な森。
一歩足を踏み入れれば、澄んだ空気と、どこか現実から切り離されたような感覚に包まれる。
けれど、精霊のいとし子である僕にとって、この森は不思議と落ち着く場所だった。
初めて足を踏み入れた瞬間は、精霊たちが一斉に僕たちを歓迎してくれた。
その弾むような声と気配に、自然と笑みがこぼれた。
そんな僕が描いたのは、宙を舞い、踊るように戯れる妖精たち。
自分でも驚くほど、納得のいく出来だった。
「いつ見ても歩夢の絵は凄いね。飽きるどころか、見るたびに引き込まれる」
それを見つめるディランさんの視線は、絵よりもどこか僕自身に向けられている気がして、照れくさくも嬉しくなる。
「ふふ、もっと褒めてもいいんだよ?」
「そんなこと言われたら、数時間は離してあげられないよ」
軽口を叩き合う、その時間さえ心地いい。
それから完全な夜になる前に、僕たちは野営の準備を始めた。
長旅にもなると、今日みたいに宿に泊まれる日ばかりじゃないけれど、自然の中で過ごす時間は、僕にとって苦ではないから特に問題はなかった。
薪を集めに向かうディランさんを見送り、僕は夕食の準備に取りかかる。
今日の献立はクラムチャウダーだ。昨日から楽しみにしていた分、気持ちも弾んでいた。
──けれど、そのとき。
「あゆむ!ディランが怪我した!」
突然、メルエムの慌てた声が響いた。
「え……」
心臓が強く跳ねる。
旅を始めてから、初めての緊急事態だった。
ディランさんが怪我をするなんて余程のことがあったのかもしれない。
そんな嫌な想像を振り払うように、僕はメルエムの後を追う。
そして森を少し抜けた先、川辺に立つ背中が見えた。
「ディランさん……!」
思わず名前を呼ぶ。
けれど、振り返ったディランさんの表情は穏やかで、周囲に浮かぶ精霊たちもどこか楽しげだった。
拍子抜けするほど、そこには幸福な空気が満ちている。
そんな状況が掴めず立ち尽くしていると、彼の手にある花束が目に入った。
「歩夢」
その甘い声で名前を呼ばれ、近づいてきたディランさんは、僕の前で片膝をつく。
「君とこうして旅ができていることが今でも夢みたいだよ。それに君と番になれたことも──」
ゆっくり紡がれる言葉に、耳を傾ける。
「でも、ちゃんと祝ったことはなかったね。それだけが心残りだったんだ。だから、君が一番楽しみにしていたこの森で、改めて伝えようと思った」
視線が、真っ直ぐに僕を射抜く。
「歩夢、私は君を、愛してる。──そんな君に、これを受け取ってほしい」
そう差し出されたのは、花束と、白銀に輝く小さな欠片。
親指の爪ほどの大きさで、彼の髪と同じ色をしていた。
「ありがとう……。僕、嬉しい……。それはそうと、これは何?」
涙ぐみながら問いかけると、彼は迷いなく答えた。
「私の核だよ」
「……核って……」
竜人にとって、核は命そのもの。
皆、見つからないように身体のどこかへ隠し持っていると聞いていた。
「でも、それってすごく大事なものなんじゃ……」
「だから君に渡すんだ。それを飲めば、私と同じ時間を生きられる」
「え……」
竜人はとても長命な種族だ。
それに比べて、人間である僕の寿命は短い。
しかも、僕はすでにその寿命を削ってしまっている。
そんな僕の不安が顔に出ていたのだろう。
ディランさんは微笑み、僕の手を包み込む。
「君の精霊から寿命のことは聞いたよ」
その言葉に驚いてメルエムを見る。
「頑張ってヒトの文字を覚えて伝えたんだ。勝手なことしてごめん。でも、僕はあゆむに、もっと生きてほしい」
だからお兄ちゃんに手紙を書くとき、あんなに文字を必死に覚えていたんだ。
反省と願いをにじませたそのメルエムの表情と、その伝えられた気持ちに胸がいっぱいになる。
「歩夢、たとえ私の寿命が減ってしまっても構わない。竜人の寿命を考えたら減ってちょうどいいくらいだよ。それに、君がいない人生なんて意味がない。私は君と、永遠を共にしたい」
揺るがないディランさんの声。
そんなこと言われたらもう──僕の答えは決まってる。
「うぅッ……、ぼ、僕も。…僕もディランさんと、もっと長い時間を一緒に過ごしたい」
そう震える声で返事をし、”大事な鱗”を泣きながら強く握りしめた。
それからあやすように僕を抱きしめるディランさん。そして精霊たちの祝福に包まれて、僕はただその幸せをかみしめた。そして不意に目が合ったメルエムにも「ありがとう」と返し、メルエムも特大の笑顔を返してくれる。
それから無事に核を飲み込んだ僕は、川面に映る自分の姿を見て息をのむ。
「目の色……ディランさんと一緒だ」
「竜人の核を飲んだ番は、皆そうなるんだ。こうして見ると、やっと自分のものだと実感するね」
そう微笑む彼を見て、胸の奥が熱くなる。
僕は嬉しさのあまり、抑えきれない気持ちがあふれ、僕は彼の耳元へ顔を寄せた。
「テントに戻ろ……ディランさんに、《触りたい》」
囁いた瞬間、彼の瞳が獣のように輝いた。
それからは食事も忘れて、二人で野営地に籠もった。
向かい合うように、僕はディランさんに跨り、しがみつく。
それから、重ねられた唇。それはすぐに深いキスへと変わっていった。
息が苦しい。──でも、その苦しさすら、頭がふわふわするようで心地いい。
その熱い舌が絡むたび、身体の奥がじわじわ熱を帯びていく。
「ディランさん……」
声をかけると、熱を帯びた視線が注がれた。
その奥に潜む獣を、もっと引きずり出したくて、僕は自分の小さなそれをさらけ出し、胸元も隠さずに見せる。
「……いつもの、してほしい」
そんな短いお願いに、ディランさんは目を細め低く答える。
「…仰せのままに」
次の瞬間、胸の尖りに唇が触れ、赤い舌が転がすように弄ぶ。
同時に、大きな手が下で僕のものを包み込み、ゆっくりと扱き始める。
時折、先端をえぐるような刺激が走り、腰が勝手に跳ねた。
「あ……っ、きも、ち……」
堪えきれず漏れた声に、ディランさんは満足そうに息を落とす。
僕はただ、その快楽に身を委ねた。
でも、これだけじゃ足りない。
「ディランさん……あれも、して……」
そう言って、僕は空いている彼の手を取り、自分の首元へ誘導した。
「……ハマってしまったのかい?」
その問いかけに、僕は考える余裕もなく、ただ小さく頷いた。
それを見たディランさんは、一つ笑顔を零して、少しずつその手に力を込めていく。
「かは……っ、ヒュ、──」
首元にかかる圧。
喉からは、ただ空気が擦れる音が漏れ、視界の端はチカチカして、星が散り始める。
それでも、唇は塞がれ、舌を奪われ続ける。
──きもちいい……けど、……堕ち、る……。
快楽が一気に濃くなり、全身を塗り潰しそうになった、その瞬間。
ふっと、首の圧が解けた。
「ごほ……っ、ごほっ……」
空気が一気に肺に流れ込み、思わずむせる。
けど、その一瞬うちに、僕のものからは白濁がこぼれていた。
今ので、完全に果ててしまったのが、自分でもわかる。
「ふふ……歩夢は、本当に快楽に素直だね」
そう言いながら、ディランさんは自分の下履きに手をかけ、前を寛げた。
現れたのは、見慣れた、けれど何度見ても圧倒される長さのそれ。
視界に入っただけで、さっき果てたはずの身体が、また熱を持つ。
僕は体勢を変え、それに口を近づけようとした。
僕もディランさんにしてあげたい。けど──
「待って、歩夢。今日は全部、私に任せて」
静かだけど、逆らえない声音。
そう言われて止められると、少し名残惜しくて唇を引いた。
そんな僕を、ディランさんはうつぶせにするように誘導していく。
そして背中に覆いかぶさる重み。──そこから、執拗なほどの愛撫が始まった。
腰を少し高く持ち上げさせられ、前立腺を的確に刺激される。
背中には熱いキスが降り注ぎ、息をするのもままならない。
それだけで、もう限界が近い。
「ディ……ディランさん……も、う……」
「そろそろ良さそうだね」
そう言われて体を返そうとした瞬間、後ろから抱き締められて動きを止められる。
「……今日は、このまま」
囁かれた直後、うつ伏せのまま挿入される熱。
入っただけで、身体が甘く痙攣する。
そこから、ゆっくり、確実に動き始めるディランさん。
逃げ場のない体勢で、良いところだけを正確に突かれ、快楽だけが引き上げられる。
──も、……い……イク……っ。
耐えきれず、僕は痙攣とともに二度目の白濁を吐き出した。
息が乱れ、頭がぼんやりする。
「はぁ……っ、はぁ……」
「歩夢」
いつもなら少し休憩するところ、名前を呼ばれた瞬間、さらに重い圧が前立腺にのしかかってきた。
「お゛……っ、……おく……っ」
あまりの強すぎる快感に僕は足をジタバタさせた。
「逃げないで歩夢──もっと……《抉って》あげる」
言葉通り、全体重をかけた一撃。
同時に、また首に感じた圧迫感。
続けざまに与えられた快楽に、僕は悲鳴にも近い嬌声を挙げながら、下に湖を作る。
──も、……むり……ッ……!
そして最後、打ち付けられた重いピストンと共に強烈な快楽が弾け、意識が、完全に飲まれた。
───────────────────
sideディラン
竜人は粘着質だ。
執念、執着――どう呼ぼうと構わないけれど、一度絡め取ったものを離さない性質は、行為にも如実に表れる。
最後の最後、私は孕ませる勢いで全体重をかけ、その納まりきらない白濁を歩夢の中へ打ち込んだ。
同時に締めていた首を解放すると、激しい痙攣ののち、力の抜けた身体。下には歩夢の潮らしきものが池を作っていた。
「あー……どうしたら、もっと私に堕ちてくれるだろう」
独り言のように漏らしながら、私は愛しい番を抱き上げる。
この身体も、この反応も、すべて私によって起きたものだと確認するように。
もともと男性不信で、こうした行為そのものを避けてきた彼。
兄たちを助けようと、無自覚のまま自分自身を律してきた歩夢は、旅に出てから明らかに変わった。
末っ子で本当は甘えたがりな彼。
とても素直で、本来はよく笑う青年だということ。
そして、行為においては、その素直さが仇となるほど、快楽に正直で、従順で、感受しやすい。
最初はただ慣れてほしかった。手をつなぎ、抱きしめるという戯れのような行為。
しかし、私自身、愛しい番を思うとそれだけで満足していた。
けれど、いつしかから、歩夢が向けてくる熱を帯びた視線が次第に増え、それに呼応するよう、私の欲も歯止めを失っていった。
そこで知った。歩夢には、はっきりとしたMの気質がある。
胸の尖りや、まるで行為そしたことのないピンク色の小さな膨らみ。
それをじらしながらも時折、強めにかんだり、指で抉ると、途端に身体を痙攣させ必死にすがりついてくる。
逃げるどころか、行為を終えた後は「もっと」と訴えるような欲を含んだ目を向けてくる。
だから、今日は堕ちるまで快楽を与えようと思っていた。
そうして酸素を奪いながら執念に与え続けた刺激。
最後は全体重をかけ中を抉るように自分の長いものを押しつけた。
前立腺を超え明らかに奥の方まで埋め込まれた自身のもの。
予想通り歩夢は意識を手放した。
けれど、意識がないままに、痙攣を繰り返している。
私から与えられるものを拒むことなく全て受け入れる彼。
そして、私の手によって育てられているような感覚。
その感覚が、たまらなく私を満たしていた。
自分でも理解している。愛と呼ぶにはあまりにも禍々しく、重すぎるこの気持ちを。
それでも歩夢は、私を見上げて笑い、すべてを受け入れる。
だから私も、そんな番につい、甘えてしまう。
そう思うと、案外素直すぎる歩夢くんとは内面的な意味でも相性がいいのかもしれない。
私は身体を預け、無防備に眠る番の唇に、静かにキスを落と、その寝顔を愛しそうに見つめ続けた。
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ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
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第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
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三人が幸せになって良かった❕❕読んでて涙が出ました。良い話を読ませて頂き、ありがとうございます。
番外編もありがとうございます。
太一くんはドキドキしながら、優くんは泣きながら(感動しすぎ)、歩夢くんはソワソワ?しながら読ませていただきました。
やっぱり竜なだけあって、ディランさんが一番執着という意味では強烈だったかしら😅💦
狼のノアさんはひたすら自制しつつ、垣間見えた欲望w
アイザックさんがそういう意味で一番恋人歴?は長いので閨では熱烈でしたね。
まさに追い込む愛( *´艸`)
最後に……メルエムは密かな努力、お疲れ様でした。影の立役者でしたね✨
今後は人の言葉覚えたのでディランさんとは筆談で会話してくれそう。他の精霊からも通訳頼まれたりして(笑)
優くんの能力『霊聴』がとても興味深かったです。
番との幸せな日々に、キュンキュンしてしまいました♡
無事に太一くん、優くん、歩夢くんが幸せを手に入れていけて良かったです。
それぞれ、進む道も生活も、違うものになった3人ですが、これからも自分の道を歩みつつ、兄弟の絆は変わらず生きていくんでしょうね。
もちろんその傍らには常に愛し愛される番が寄り添って。
そんな彼らの未来に向かって歩く幸せな後ろ姿が最後に見られて本当に良かったです。
途中、兄弟3人が辛い場面もあり、書かれている作者様も精神的に大変だったかと思いますが、三兄弟を幸せになるまで描いてくれた作者様に感謝しています。
幸せな未来をありがとうございます。
完結、おめでとうございます&お疲れ様でした。
番外編も楽しみに読ませていただきます。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
無事完結を迎え、終わりをお届けできて良かったです!
いつもいただくコメントがとても励みになりました。本当にありがとうございます(*' '*)
番外編も楽しんでいただけたら嬉しいです^^