愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

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番外編 可愛らしい優人の番 R18

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「ゆうせんせー!!」
「あ、ずるい!わたしが先よ!」
「ちがう!ぼくが先!!」

目の前で弾むように飛び交う声。
拙くても必死に言葉を紡ぐ子供たちの輪の中に、自然と自分が混ざっていることが、胸の奥をじんわりと温めてくれる。

「はいはい。ゆう先生はみんなとあそびたいな。お願い」

そう言うと、子どもたちは得意げに頷いてくれる。
それだけで、胸の内が癒される思いだ。

ここは、街の一角にある孤児院。
先生になるという自分の夢に向けて、毎日決まった時間ここに通っていた。
園長先生や職員のみなさん、子どもたちの心は驚くほど澄んでいて、音を拾いすぎるこの耳も、ここでは穏やかだ。

少し前まで、大人の濁った声ばかりが刺さり、それを遮るために、自分で鼓膜を潰してしまおうかと考えた夜もある。それでも今は、ここに来られてよかったと思える。

「ゆう先生。お迎えじゃよ」

園長先生の声に顔を上げると、外はすっかり夕暮れだった。
迎えに来てくれた人の姿が、暗がりに浮かぶ。

「ご苦労様」

堅い言葉だけど、暖かい声。
この国の騎士団長、ノアさんだ。

出会って、もうすぐ二年になる僕たち。
未だに交際まで至らず、どこか曖昧な距離のまま、日々が過ぎていた。
そして、今日も並んで歩く街中、二人の間には静寂が流れる。

けれど、彼の心はいつも正直だった。

『どうすれば、君の傍にいられる』
『早く……君が欲しい』

毎日流れ込むその想いに、気づかないふりをするのが、もう苦しくなっていた。
僕の気持ちは、とうにノアさんに向いている。
それでも──こんなでは、番にはなれない。

家に着く頃には既に夕飯時、僕はいつものようにノアさんを夕食に誘った。
「ありがとう」と短く告げられ、その裏で聞こえる『嬉しい』という声、思わず口元が緩む。

二人で食卓を囲み、他愛のない話で笑顔がこぼれる。
けれど、切りよく会話が途切れた瞬間──。

「…すまない、突然で驚くかもしれないが、君に聞きたいことがある」

そう聞かれ、意識するよりも先に覗いてしまう心、けれど何も聞こえない。
いつもと違う雰囲気につい身構えてしまう。

「……なんですか?」

「君は、──何に怯えているんだ?」

その言葉が、妙に耳の中で木霊する。

「君からは、嬉しさの滲んだ花の香りがする。だが同時に、恐怖も混じっている」

僕から、恐怖……、?

「無自覚か。……私が触れる時。君に想いを伝える時。──君は必ず、をする」

心当たりがあった。
”ノアさんの番になれない”という戒めが、自分でも気づかないうちに、ノアさんへ伝わってしまっていたんだ。

『何が君を苦しめている?』
『君の支えになれない自分が、情けない』

『それとも──俺が君を苦しめてるのか』

「っ、違います!」

思わず声が出た。
突然声を荒げた僕に目の前のノアさんも少し驚いた表情をしている。
僕はひとつ、深く息を吐いた。

「僕は──汚いですから」

ノアさんは話を遮ることもせず、ただ聞いてくれる。
けれど、今はその沈黙が、余計に僕の胸を締めつける。

既にジオナルドに開かれてしまったこの身体。
中身どころか、その外面にはいたるところに傷が出来ていてとても見せられてモノじゃない。
この国の騎士団長で、周りからも敬われるようなこの人の横に立つのがこんなのじゃノアさんの面子をつぶしてしまう。

何度もそう自分の中で折り合いをつけてきた。
その分、出た言葉は止まらず、すらすらと流れていく。
けれど、いざ言葉にするとその現実が辛くて、自然と涙があふれてきた。

僕──ノアさんのことが好きです。
この飾らない誠実な人柄、番だからではなく、優人という一人の人間として見てくれる部分。
この気持ちを伝えられたら──。

止まらない涙をなんとかせきとめようと手でゴシゴシふき取っていると不意にその腕を取られた。
反射的にノアさんを見つめる。

「君は汚れていない。弟たちを守った、立派な兄だ。誰がなんと言おうと、君は、

「っ……!」

『どうしたら、救える』
『どうしたら、愛していると伝えられる』

その言葉に、隠していた想いが、溢れる。

本当はこんな自分を受け入れてくれるか不安だったのかもしれない。
普通なら捨てられてもおかしくないけれど、そんな僕でもいいと一心に伝えてくるノアさん。

お願いです、今だけ…、僕のわがままを許してください。
普段神様とか特に信用していない僕は、この時ばかりはそう願ってしまった。

「…僕、ノアさんが好きです」

「っ……!」

そう涙を流しながらも笑顔で伝えた。
突然告げられた気持ちに驚きの表情で固まるノアさん。

「ノアさんの番に相応しくないのはわかってます。でもそんなあなたの隣にいたい、…僕にあなたと歩むチャンスをくれますか?」

その言葉とともに、すぐノアさんのたくましい腕に抱き寄せられた。

「当たり前だ。私は、優人以外を番にするなんて鼻から頭にない」

そのノアさんの言葉に、僕もつい笑みが零れる。
何度死のうと考えたかわからない。
けどこうして兄弟以外に大切と思える人ができて自分は本当に幸せ者だ──。

───────────────────

暫くノアさんと熱い抱擁を交わしていると、不意にお腹に当たるに気付いた。
密着した身体の間、確かな存在感を主張する
見なくても、それが何かなんて分かりきっている。

僕は、それにそっと指先を伸ばした。

触れた瞬間、ノアさんの身体がびくりと跳ね、慌てたように手首を掴まれた。

『い、今……触ったか? いや、それより……どうして、俺は……』

心の声がひどく取り乱していて、思わず笑ってしまいそうになる。
幾度も戦場をくぐり抜けてきた騎士団長とは思えないほど、僕の前では余裕がないノアさん。

その様子が、どうしようもなく愛おしいと思った。
大きな身体も、年上であることも忘れて、今は不器用な彼を包み込んであげたい。

──もっと、気持ちよくなってほしい。
そんな欲が、自然と胸に湧いた。

僕はもう一方の手でも、同じ場所に触れる。
けれどまた、慌てたように制される。

目の前のノアさんは、見るからに混乱していた。
理性で押し留めようとしながら、それでも期待を隠しきれていない表情。

僕はその耳元へ、そっと唇を寄せる。

「ノアさん、お願いです」

「っ…」

「僕、ノアさんに触れたい」

正直な気持ちだった。
しばらくの沈黙のあと、掴まれていた手が――片方だけ、離される。

その了承を合図に、服の上から、その熱を持つモノを、触れているかどうか分からないほどの加減で、そっと撫でる。

その度に、ビクっと脈打つそれは、行為になれていないかのような、正直すぎる反応を示す。

それから下履きの前を緩めると、姿を現したそれは、想像以上で。
思わず喉が鳴った。
大きさもそうだが、狼特有の、根本が膨らんだその竿は相手を孕ませるといった本能がその形に出ていた。

僕は丁寧に、確かめるよう、それに触れる。
最初は手探りで上下に動かしつつ、ノアさんの気持ちいい所を探す。

それからゆっくり下履きの前をくつろげる。
すると現れたとてつもない大きさの竿。
それだけで自然と喉がなる。

僕は丁寧にそれに触れた。
初めは少し探るように触れ、少しずつそれを上下気に刺激するように擦る。
こういった行為に慣れていないのか、ノアさんのそれはとても敏感に反応を示す。

その一つ一つの刺激に慣れていないのだろう、触れるだけで分かるほど敏感に反応するノアさん。
片手で顔を覆う仕草も、可愛い。

たまらず跪くように膝を着き、熱を含んだそれを口に含んだ。
僕はノアさんの前でひざまずくように座り、ついにその熱をはらんだノアさんのものを口へと含んだ。

途端に驚きに顔を染めるノアさん。
顔を隠していた手はいつの間にか宙を舞っていて、もう片方の手は逃げないように僕の手を絡ませた。

『そんな……汚い所……』

流れ込む声を遮るように、僕は空いている手を取り、自分の頭へ導いた。

「……頭、撫でてください」

一拍の迷いのあと、ぎこちなく触れる手。
その温もりが、胸にじんわりと広がる。

それからは、出来る限り、丁寧に。口を上下させ、熱を高めていった。

正直、ノアさんの大きなモノを全て飲み込むのは苦しい。
それでも――ノアさんのためなら、と頭が支配されていく。

僕は、あと少しで逝きそうなノアさんのものを、喉まで一気に加え込んだ。
喉のいけない所を超えた瞬間の苦しさ、でもそれよりも感じた強い幸福感。
けれど、途端に強く引き離された。

思いがけない力に驚くと、すぐ目の前に心配そうな表情。

「大丈夫か……! 無理をするな」

突然、喉まで加え込んだ僕に驚いだんだろう。
そんなノアさんは一つ息を吐いていった。

「君にしてもらえることは何でも嬉しい。だが無理だけはしないでくれ…。それと、私も君を気持ちよくさせたい」

尽くす側でいることが当たり前だった自分に、初めて向けられた言葉。
その真っすぐな言葉が、凄く胸に刺さった。

──あぁ、僕の番はなんでこんなに優しいんだろう

「……僕、運命の番がノアさんでよかったです」

自然に零れた言葉に、一瞬呆けていたノアさんは小さく笑って「俺もだ」と返した。

その夜、初めて――
好きな人と、心も身体も重ねた。

強くて、誠実で、誰からも尊敬される騎士団長。
それでも恋には不器用で、少し可愛いところがあることは――僕だけの秘密だ。

───────────────────

sideノア

俺の隣で、安らかな寝息を立てる愛しい番。
初めて共に迎えた夜だというのに、胸の内は幸福だけでは満たされなかった。騎士団長として培ってきた冷静さが、今はただ邪魔だった。

視線が、どうしても彼の身体から離れない。

ジオナルドに囚われていた間につけられた無数の痕。
尋問で概要は把握していた。だが、実際に目にするのはこれが初めてだった。

焼けただれた皮膚、無理に裂かれた傷跡。
関節の一部は、本来あるべき形を失い、わずかに歪んでいる。
それらを一つ認識するたび、理性が削ぎ落とされていくのが分かった。

胸の奥が煮え立ち、喉の奥が詰まる。
あれほど多くの戦場をくぐり抜けてきたというのに、怒りで手が震える感覚は久しく忘れていた。

それでも行為の最中、正気を保てたのは——
すべてをさらけ出したこの番が、涙を滲ませながらも、どこか安堵したように微笑んでいたからだ。
その笑顔が、俺を繋ぎ止めていた。

だが、心の奥には狂気的な決心があった。

俺の番に手を出した時点で、あいつは終わっていた。
法も慈悲も及ばない場所で、わからせてやる。死を乞う言葉すら出ないほどの苦痛を──。

荒れ狂う衝動を抑えるように、俺は視界いっぱいに優人だけを映す。
そして、彼の身体に残る傷一つ一つを覆い隠すように、自分の痕を重ねていった。

──これを見て、苦しまないよう。
──少しでも、心が軽くなるよう。

この身に刻まれた記憶を、俺が塗り替える。
そうして華奢な身体に、赤いマーキングと歯形が刻まれていった。

それから迎えた朝、早番で俺が部屋を出たあと。
それらを指先でなぞり、どこか愛おしそうに微笑む優人がいたことを、俺はまだ知らない。
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