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20話 精霊の知らせ
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メルエムと契約してから、もう二週間が経った。
あれから僕の中で変わったことといえば、メルエムが言っていた通り水魔法が格段に強化されたことだ。
今まで感覚すらつかめなかった上級魔法が、今では水面が自然に形を変えるみたいに発動する。
その感覚が気持ちよくて、ひとりになれる時間はこっそりメルエムに教わっている。
もちろん、この契約の話は太一兄ちゃんにも、ベンさんにも、リサさんにも内緒だ。
だから特訓の時は、悟られないよう“いつもの僕”を演じて簡単な魔法しか使わないよう注意している。
それと──最近、もうひとつ変わったことがある。
精霊たちがやたらそわそわしていることだ。
僕は知らないふりをしたいのに、精霊と話せるせいで嫌でも耳に入ってくる。
「おいおい、聞いたか!」
「聞いたよ! あの子 がノウゼンカズラに向かって来てるんだって!」
「おいら会うの五十年ぶりだ~!」
「そろそろ運命の番見つけたかな?」
「まだ見つかってないんじゃない?」
「もしかしてその運命の番……歩夢だったりして!」
「「「「「「たしかに!!」」」」」」
声の大合唱が森に弾ける。
僕は思わず苦笑いを浮かべた。
「僕が運命の番なんて、あるわけないでしょ。そんなの相手に失礼だよ。」
軽く否定したつもりだったけど、精霊たちは気にする気配すらない。
「いやいや、歩夢は聖霊の愛し子なんだし!相手、竜族 だよ?可能性は高いって!」
「あいつも話せたら、すぐ教えに行けるのになぁ~。」
そんなの、本気で困る。
胸の奥がざわざわする。
聞き流したいのに、精霊の無邪気な好奇心にそれも難しい。
「そ、そういえば、今日はもう戻らないと。メルエムと魔法の練習する約束してるんだ。」
逃げるように言うと、
「「「「「ええぇぇ~!!!」」」」」
盛大なブーイングが返ってきた。
けれど結局、みんなちいさな身体でぎゅっと抱きついて「またね」と送り出してくれた。
その温かさのおかげで少し気持ちが落ち着く。
精霊たちと別れてしばらく歩くと、背後からひょいと気配が寄ってきた。
「ごめんねメルエム、遅くなっちゃった。」
「ほんとだよ歩夢~。罰として今日は多めに魔力ちょうだい!」
「わかったよ。夜にちゃんとあげるから。遅れてごめんね。」
「もう、可愛いさに免じて許してあげる~。」
そんな調子ではしゃぎながら魔法を教えてもらっていたとき、
メルエムの動きが急に止まり、その特徴的な尖った耳をぴくりと向けた。
「どうしたの、メルエム?」
「歩夢のお兄ちゃんが倒れた。」
「っ、どこ!?場所はわかる!?」
メルエムが嘘をつかないことはよく知っている。
胸がきゅっと縮まり、鼓動が早くなるのにも構わず、僕は地面を蹴って駆け出した。
工房の扉を開けた途端、倒れている人影が目に飛び込んでくる。
「た、太一兄ちゃんっ!大丈夫!?」
「すー……すー……」
「え……ね、寝てる……?」
力が抜けた。
徹夜で作業していたのが響いたんだろう。
おぶって帰ろうと近づいた瞬間、コトリと小さな音がする。
あれ?
気になって振り向くと、床に落ちていたものが光を返した。
拾い上げてみると、小さな銀のリング。
中央の玄色の石が、夜の水面みたいに静かにきらめいた。
「……綺麗……。」
思わず息が漏れた。
けど、今はそれよりも太一兄ちゃんだ。
僕はリングを傷つけないようハンカチに包み、そっと兄ちゃんを背負って、家へ向かった。
あれから僕の中で変わったことといえば、メルエムが言っていた通り水魔法が格段に強化されたことだ。
今まで感覚すらつかめなかった上級魔法が、今では水面が自然に形を変えるみたいに発動する。
その感覚が気持ちよくて、ひとりになれる時間はこっそりメルエムに教わっている。
もちろん、この契約の話は太一兄ちゃんにも、ベンさんにも、リサさんにも内緒だ。
だから特訓の時は、悟られないよう“いつもの僕”を演じて簡単な魔法しか使わないよう注意している。
それと──最近、もうひとつ変わったことがある。
精霊たちがやたらそわそわしていることだ。
僕は知らないふりをしたいのに、精霊と話せるせいで嫌でも耳に入ってくる。
「おいおい、聞いたか!」
「聞いたよ! あの子 がノウゼンカズラに向かって来てるんだって!」
「おいら会うの五十年ぶりだ~!」
「そろそろ運命の番見つけたかな?」
「まだ見つかってないんじゃない?」
「もしかしてその運命の番……歩夢だったりして!」
「「「「「「たしかに!!」」」」」」
声の大合唱が森に弾ける。
僕は思わず苦笑いを浮かべた。
「僕が運命の番なんて、あるわけないでしょ。そんなの相手に失礼だよ。」
軽く否定したつもりだったけど、精霊たちは気にする気配すらない。
「いやいや、歩夢は聖霊の愛し子なんだし!相手、竜族 だよ?可能性は高いって!」
「あいつも話せたら、すぐ教えに行けるのになぁ~。」
そんなの、本気で困る。
胸の奥がざわざわする。
聞き流したいのに、精霊の無邪気な好奇心にそれも難しい。
「そ、そういえば、今日はもう戻らないと。メルエムと魔法の練習する約束してるんだ。」
逃げるように言うと、
「「「「「ええぇぇ~!!!」」」」」
盛大なブーイングが返ってきた。
けれど結局、みんなちいさな身体でぎゅっと抱きついて「またね」と送り出してくれた。
その温かさのおかげで少し気持ちが落ち着く。
精霊たちと別れてしばらく歩くと、背後からひょいと気配が寄ってきた。
「ごめんねメルエム、遅くなっちゃった。」
「ほんとだよ歩夢~。罰として今日は多めに魔力ちょうだい!」
「わかったよ。夜にちゃんとあげるから。遅れてごめんね。」
「もう、可愛いさに免じて許してあげる~。」
そんな調子ではしゃぎながら魔法を教えてもらっていたとき、
メルエムの動きが急に止まり、その特徴的な尖った耳をぴくりと向けた。
「どうしたの、メルエム?」
「歩夢のお兄ちゃんが倒れた。」
「っ、どこ!?場所はわかる!?」
メルエムが嘘をつかないことはよく知っている。
胸がきゅっと縮まり、鼓動が早くなるのにも構わず、僕は地面を蹴って駆け出した。
工房の扉を開けた途端、倒れている人影が目に飛び込んでくる。
「た、太一兄ちゃんっ!大丈夫!?」
「すー……すー……」
「え……ね、寝てる……?」
力が抜けた。
徹夜で作業していたのが響いたんだろう。
おぶって帰ろうと近づいた瞬間、コトリと小さな音がする。
あれ?
気になって振り向くと、床に落ちていたものが光を返した。
拾い上げてみると、小さな銀のリング。
中央の玄色の石が、夜の水面みたいに静かにきらめいた。
「……綺麗……。」
思わず息が漏れた。
けど、今はそれよりも太一兄ちゃんだ。
僕はリングを傷つけないようハンカチに包み、そっと兄ちゃんを背負って、家へ向かった。
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