愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

文字の大きさ
22 / 76

21話 指輪と歩夢

しおりを挟む
あれ、俺……なんでベッドにいるんだ?

「太一兄ちゃん、おはよう。」

聞き慣れた声に振り返ると、歩夢が椅子に腰かけてこっちを見ていた。

「あれ、歩夢?なんで俺、ベッドで寝てるんだ? さっきまで工房にいて……それで……っあ、指輪!」

そこまで言って全部思い出した。
完成した指輪を見せに行こうとして、力尽きて倒れたんだった。

てか指輪は!?壊れてないよな……?

「ゆ、指輪ってこれ?」

そっとハンカチを差し出す歩夢。
その中には、間違いなく俺が仕上げた、あの銀のリングがあった。

「そ、それだ!歩夢、俺ついに完成させたんだ!早くベンさんたちにも見せに行こう!」

興奮のまま歩夢の手をつかみ、二人でリビングへ向かった。

───────────────────

「太一ちゃん!体は大丈夫?ぐっすり眠っていたようだけど。」

「最近根を詰めていたからな。声をかける隙がなかったが……休むことは大事だよ。」

ベンさんとリサさんに心配される。
たしかに倒れるまで作業したのはやりすぎだったかもしれない。
でも、あの瞬間に仕上がったからこそ今がある。

「心配かけてごめん。次はちゃんと休むよ。それより──これ!やっと完成したんだ!」

「これはまた綺麗な……。」

ベンさんが手に取り、石を光に透かす。
隣からリサさんも覗き込む──と思ったら、急に声の熱が変わった。

「っ!太一ちゃん、本当に大丈夫なの?」

「へっ?大丈夫ですよ?」

「言ってなかったけど、わたし鑑定スキルを持ってるの。
物の性質や魔力の流れを見られるスキルよ。」

へぇ、便利だな……なんて呑気に考えていたら、リサさんがため息をつく。

「この指輪、かなり強力よ。ここまでの阻害効果を組み込むには相当な魔力が必要だったはず。」

「たしかに、完成直前に一気に魔力を持っていかれた感じはありました。」

「やっぱり……。太一ちゃん、魔力は命と同じよ。もし魔力切れを起こしたら、最悪死んでしまうこともある」

そう言われて初めて理解する。
そんな危ない橋を知らずに渡っていたのか。

「そんな危ないことしてたなんて知らなくて……ごめん、次から気をつける」

「これは私たちの説明不足でもある。すまない、太一くん。」

二人とも本気で心配してくれている。
これからは気をつけないと。

そう反省していたところに、歩夢の声がそっと入ってきた。

「太一兄ちゃん。」

「どうした?」

「この指輪、僕貰ってもいいの?」

その瞳が、いつになく素直に輝いていた。
本気で欲しいんだな、と一目でわかった。

「あぁ。これは歩夢のために作ったんだ。 歩夢が好きそうな、シンプルなデザインにしたつもりだ。……つけてみるか?」

「うん…!」

控えめだけど、嬉しさが溢れている。
その顔を見るだけで徹夜の苦労なんて吹き飛ぶ。

歩夢は細い指にゆっくりとリングを通した。
僕とベンさんとリサさんは息を呑んで見守る。

そして──。

「太一兄ちゃん、ありがとう。僕、大切にする。」

まるで花が咲いたような可愛らしい笑顔。

やばい。
歩夢がこんなに笑うの、いつぶりだ?

努力してよかった。心からそう思う。
ふと横にいたベンさんとリサさんを見ると、二人とも違った反応を見せる。

「これは想像以上だな……攫われないか心配だ。 いや、俺がそいつらを殺れば問題ないな」

ベンさんが「俺」って言った…、それに殺る!?
普段の温厚なベンさんとは思えない物騒な発言だ。
それに対して、リサさんはというと──。

「やだぁぁ!!歩夢ちゃん可愛い!ほんと天使みたいね!」

両手でほっぺを押さえながら身をよじっていた。
……気持ちはすごくわかる。

とにかく指輪は完成した。
そして歩夢が笑ってくれた。
それだけで、今は十分だった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

処理中です...