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23話 ノウゼンカズラ祭
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指輪が出来てから、歩夢は積極的に街へ出るようになった。
向こうの世界にはない景色や人々の動きがインスピレーションになるらしく、最近では俺たちの商売にくっついては横で静かにデッサンをしている。
そんな歩夢の様子を聞いたリサさんが、俺たちに提案してくれた。
「歩夢ちゃんの指輪も出来たことだし、少し遅くなっちゃうけど歓迎会も兼ねて、みんなでお祭りに行かない? この町の象徴のノウゼンカズラの花で街が彩られて、とても綺麗なのよ!」
「それは良いな。何だかんだバタバタしていたし、二人ともどうだい?」
お祭り。
知識としては知っているが、行ったことがない。
あっちの家庭が荒れていたせいで、そんな場所に行く余裕なんてなかった。
気にならないわけがない。
それに家族として初めてのイベントごとだ。心の奥が温かくなる。
俺が言う前に、歩夢がぽつりと口を開いた。
「ぼ、僕、お祭り行ったことないから……行ってみたいです。家族みんなで」
「俺も。皆で行ってみたい」
俺たちの気持ちを聞いたリサさんとベンさんは、ぱっと柔らかく表情を明るくした。
「 決まりね! お祭りまでに準備しなくちゃ!」
リサさんは張り切って動き出し、ベンさんはその姿を見て微笑んでいる。
その空気に俺と歩夢もつられてほのぼのしていると、ベンさんがふいにこちらを向いた。
「そういえば太一くん、ひとつ頼み事があるんだが……いいだろうか?」
「全然いいけど、俺でもできること?」
そうおして詳しく聞けば、銀細工の依頼だった。
そんなの断る理由などなく、俺は快く引き受け、すぐに製作に取り掛かった。
───────────────────
side 錬金術師
わしはしがない店の錬金術師じゃ。
ある休日、コンコン、と戸を叩く音。
孫が対応をしにいくが、すぐにわしへの来客だと知る。
「爺ちゃん! ベンの旦那と奥さんが来たよー!」
そう声を掛けられ、わしは作業場から店先へ向かった。
「いやぁ、これはこれは。待たせて悪かったのう。今日は何の用かね?」
「お久しぶりです。急に申し訳ない。実は頼み事がありまして……」
内容を聞き、わしはふむと頷いた。
「……なるほど。それでしたら一時間ほどいただくが、よろしいかね?」
「えぇ、大丈夫ですわ。一時間で本当に平気かしら?」
「舐めてもらっちゃ困る。これでも現役の錬金術師ですからな」
そう言い残して作業に戻り、集中して組み上げていく。
一時間後、完成品を二人に手渡すと、満足そうに目を細めた。
「さすがですね。転移魔法を組み込める錬金術師なんて、あなたくらいです」
「本当にすごいわ。これで、あの子たちとのお祭りも楽しめるわね!」
二人の笑顔は、噂に聞いた“義息子”の存在を物語っていた。
この街で、ここまで嬉しそうな二人を見るのは珍しい。
ふと大事なことを思い出す。
「ああ、そうじゃった。ひとつ注意点がある。これはわしが一から作った器じゃなく、誰かの作った器に追加で付与しておる。ゆえに……そうじゃな、二回ほど転移魔法を使えば器が耐えきれず壊れてしまうじゃろう」
「承知しました。本当にありがとうございます。代金はこちらで足りますか?」
「こりゃ…、ちと多くないか?」
手渡された布袋を確認すると、明らかに多すぎる金。
わしが返そうとすると、「いつも世話になっているから」と押し切られ、二人は店を出て行った。
それにしても、あの耳飾り……。
あんな繊細な細工、作れる者はそうおらん。
一体誰が作ったんじゃろうか。
そんなことを考えながら、わしはまた作業場へ戻った。
向こうの世界にはない景色や人々の動きがインスピレーションになるらしく、最近では俺たちの商売にくっついては横で静かにデッサンをしている。
そんな歩夢の様子を聞いたリサさんが、俺たちに提案してくれた。
「歩夢ちゃんの指輪も出来たことだし、少し遅くなっちゃうけど歓迎会も兼ねて、みんなでお祭りに行かない? この町の象徴のノウゼンカズラの花で街が彩られて、とても綺麗なのよ!」
「それは良いな。何だかんだバタバタしていたし、二人ともどうだい?」
お祭り。
知識としては知っているが、行ったことがない。
あっちの家庭が荒れていたせいで、そんな場所に行く余裕なんてなかった。
気にならないわけがない。
それに家族として初めてのイベントごとだ。心の奥が温かくなる。
俺が言う前に、歩夢がぽつりと口を開いた。
「ぼ、僕、お祭り行ったことないから……行ってみたいです。家族みんなで」
「俺も。皆で行ってみたい」
俺たちの気持ちを聞いたリサさんとベンさんは、ぱっと柔らかく表情を明るくした。
「 決まりね! お祭りまでに準備しなくちゃ!」
リサさんは張り切って動き出し、ベンさんはその姿を見て微笑んでいる。
その空気に俺と歩夢もつられてほのぼのしていると、ベンさんがふいにこちらを向いた。
「そういえば太一くん、ひとつ頼み事があるんだが……いいだろうか?」
「全然いいけど、俺でもできること?」
そうおして詳しく聞けば、銀細工の依頼だった。
そんなの断る理由などなく、俺は快く引き受け、すぐに製作に取り掛かった。
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side 錬金術師
わしはしがない店の錬金術師じゃ。
ある休日、コンコン、と戸を叩く音。
孫が対応をしにいくが、すぐにわしへの来客だと知る。
「爺ちゃん! ベンの旦那と奥さんが来たよー!」
そう声を掛けられ、わしは作業場から店先へ向かった。
「いやぁ、これはこれは。待たせて悪かったのう。今日は何の用かね?」
「お久しぶりです。急に申し訳ない。実は頼み事がありまして……」
内容を聞き、わしはふむと頷いた。
「……なるほど。それでしたら一時間ほどいただくが、よろしいかね?」
「えぇ、大丈夫ですわ。一時間で本当に平気かしら?」
「舐めてもらっちゃ困る。これでも現役の錬金術師ですからな」
そう言い残して作業に戻り、集中して組み上げていく。
一時間後、完成品を二人に手渡すと、満足そうに目を細めた。
「さすがですね。転移魔法を組み込める錬金術師なんて、あなたくらいです」
「本当にすごいわ。これで、あの子たちとのお祭りも楽しめるわね!」
二人の笑顔は、噂に聞いた“義息子”の存在を物語っていた。
この街で、ここまで嬉しそうな二人を見るのは珍しい。
ふと大事なことを思い出す。
「ああ、そうじゃった。ひとつ注意点がある。これはわしが一から作った器じゃなく、誰かの作った器に追加で付与しておる。ゆえに……そうじゃな、二回ほど転移魔法を使えば器が耐えきれず壊れてしまうじゃろう」
「承知しました。本当にありがとうございます。代金はこちらで足りますか?」
「こりゃ…、ちと多くないか?」
手渡された布袋を確認すると、明らかに多すぎる金。
わしが返そうとすると、「いつも世話になっているから」と押し切られ、二人は店を出て行った。
それにしても、あの耳飾り……。
あんな繊細な細工、作れる者はそうおらん。
一体誰が作ったんじゃろうか。
そんなことを考えながら、わしはまた作業場へ戻った。
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