愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

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32話 弟子

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街外れの道は入り組んでいて、見慣れた建物も少なく、まるで迷路を進んでいるようだった。
アイザックが隣にいなければ、確実に途中で迷っていたと思う。そんな不安を飲み込みながら歩いていると、目的の店がついに見えてきた。

「よく歩いたな。ここが爺さんの店だ」

古びた木の外壁に、年季の入った看板。ぱっと見は普通の雑貨屋で、ここに凄腕の錬金術師がいるとは到底思えない。
アイザックが先に中へ入り、店の奥へ向かって声を放つ。

「おーい!爺さんいるか?」

その声に反応して、ひょこっと顔を出したのは──若い男だった。
黄土色の耳とふわふわのしっぽが揺れている。どう見ても“お爺さん”ではない。

「うわ、アイザックさんじゃないですか!今日はお休みですけど、どうしたんですか?」

「ベンさんに頼まれてきた。奥さんが発情期に入ったらしくてな。」

あっけらかんと話すアイザックに、青年は「ああ、なるほど」と頷くと、俺たちの方を見て目を丸くした。

「それで、どっちが太一君ですか?」

あまりの展開に俺と歩夢はぽかんとしたまま、慌てて挨拶する。

「君が太一君で、こっちが歩夢くんだね!あの耳飾りを作ったのがこんな可愛らしい子だなんてびっくりだよ!今、爺ちゃん呼んでくるね!」

勢いそのままに奥へ消えていき、しばらくして本物の“爺さん”を連れて戻ってきた。

「おぉ来たか。待たせてしまってすまんの。それとアイザックの旦那、久しぶりじゃな。」

「元気そうで何よりだ。」

現れた老人は、背筋が伸び、金の瞳がぎらりと光る狐族の長。年齢を感じさせるのは白い髭くらいで、全体から熟練の気配が漂っていた。

「わしが店の当主ヨーゼフじゃ。以後お見知りおきを。」

「太一です。こっちは弟の歩夢。今日はお邪魔します」

挨拶を済ませ、俺たちは工房へ案内される。

室内には宝石のついた指輪、耳飾り、見たことのない装飾品が整然と並んでいて、どれも強烈な魔力をまとっていた。思わず息をのむ。

「さて、太一君。わしに会って聞きたいことがあるんじゃろう?」

「えっと……質問があったというより、同じ錬金術師として作品を見てみたかったんです。俺の耳飾りみたいに、転移魔法を組み込める人の…」

「なるほど。それなら好きなだけ見ていくといい。ただし──わしからも頼みがある。」

「? 俺にできることであれば…」

少し身構えた俺に、ヨーゼフはにやりと目を細める。

「君が練成しているところを、わしに見せてくれんかの?」

「そんなことでいいんですか?」

拍子抜けしつつも材料を借り、いつも作っている指輪を練成することにした。

魔力を込めると練成陣が淡く光りはじめ、模様が浮かび上がる。光は完成に近づくにつれ小さく収束して、やがて指輪が姿を現す。

「ほぉ…。あの緻密な練成陣を、この速さで…将来有望じゃな。」

「こりゃすげぇ…、人気が出るのも納得だ」

二人が感心したように俺の指輪を見ていると、ヨーゼフは突然、とんでもないことを言った。

「お前さん、わしの弟子にならんか?」

「えっ…?」

頭が真っ白になる。
隣では孫らしき青年が「爺ちゃん弟子取らないんじゃなかったの?!」と興奮している。

俺は、じわじわ自分の中で、胸が高ぶっていくのを感じた。

「よろしくお願いします」

迷わず言葉が出た。

ヨーゼフは満足げに頷く。

「よし、決まりじゃ。楽しみが増えたわい。」

それからというもの、俺とヨーゼフは工房の片隅で延々と錬金術談義を続けた。
歩夢はというと、孫の青年と意気投合したらしく、隅っこで笑いながら話している。

気づけば、工房全体が穏やかで、温かい空気に包まれていた。
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