2 / 65
それぞれの旅立ち
ガラード・エレイン1
しおりを挟む
「ふーっ! さて、そこの教会で飯でも貰うかな。腹減った腹減った!」
土で濁った池の水で髪を洗っていた青年は、大きく伸びをすると近くの教会に向かって歩き出した。
精悍な顔立ちとは似つかわしくないボサボサの髪、薄汚れた服の上に栄える金色の剣と鞘。
浮浪者なのか貴族なのか……謎の風貌の青年の名は、ガラード・エレイン。
ブレスタ・グランロッドの子供であり、ガラバ・グランロッドとは異母兄弟になる。
湖の妖精の計略によってブレスタは妻ではない女性と一夜を共にし、生まれたガラードはグランロッド家の名誉を守る為に赤子の時に修道院に預けられてしまう。
その修道院に通っていた魔術師マーリンに引き取られ、騎士としての教育を受けたガラードは、己の主を探す旅に出ている。
18の誕生日を迎えたガラードは、マーリンから己の主君を探す旅に出ろと突然言い渡された。
訳も分からず家を放り出されたガラードは、当ての無い旅の真っ最中だ。
それでも、ガラードの顔に悲壮感は無い。
親同然で育ててくれた魔術師マーリンは、意味の無い事はしないという確信があった。
この旅にも、何か意味があるのだろう……そう信じているからこそ、明るく旅を続けられる。
と言っても、行った事のある修道院や教会をグルグルと回っているだけなのだが……
その日も、子供の頃に訪れた事のある教会に厄介になろうと決めていた。
「神父さん、いるかい? 飯を分けて欲しいんだけど……」
ガラードは修道院や教会で生活を送っていたため、躊躇いなく扉を開ける事が出来る。
いつものように、食事を恵んで貰おうと教会の中に入って行く。
教会というものは、厳かで静かな場所のはず……しかし、何か騒がしい。
「おい、止めておけよ! 殺されちまうぜ!」
「何人も殺られてんだから、何も危険な事しなくても……」
そんな言葉を無視して、1人の騎士が教会の隅に立ててある盾を手にとった。
「馬鹿馬鹿しい。この盾を盗まれない為に、教会の人間がデマを流してんだろ! 騙されてんだよ! それに、この地方にオレより強い騎士はいない。神父さんよ、盾は頂くぜ!」
白に輝く綺麗な盾を手に取った騎士は、無言で見つめる神父を横目に、そのまま教会の外に出て行く。
ガラードはイマイチ事態が飲み込めずに、騎士の出て行った扉に視線を向ける。
「神父さん、お久しぶりです。で、一体何があったんですか?」
子供の頃に遊んでくれた神父さんを見つけて、ガラードは声をかけた。
「ああ、久しぶりだな。立派な青年になったが、もう少し清潔にした方がいい」
ガラードの姿を見た神父は懐かしさに目を細めるも、あまりにも汚い身なりに呆れ顔になる。
「まったく、マーリン殿も父親役をかって出たのなら、しっかりしてくれないと……」
「いや、神父さん。これはオレの問題さ……師匠が悪い訳じゃない。それで、あの盾は?」
ガラードは、騎士が持って行った大きな盾が気になっていた。
「ああ……数日前から、教会の隅に置かれていたんだ。誰かが持って来たのか……とにかく、あの盾を持ち出すと白の騎士が現れて戦いを挑んでくるんだよ。それが出鱈目に強くて……既に何人かの騎士が犠牲になった」
「へぇ~。じゃあ、ちょっくら見てくるか。少し気になるし……盾さえ持たなきゃ、大丈夫なんだろ?」
呼び止めようとする神父を無視して、ガラードは盾を持って行った騎士を追って教会の外に出る。
「本当に出やがったな! 貴様、何者だ!」
教会の外で、直ぐに盾を持って行った騎士に追いついた。
盾を持つ騎士の目の前には、白の鎧と白の兜に身を包んだ騎士が馬上で槍を構えている。
「あの白い騎士……構えに隙がない。こりゃ、強そうだな……」
ガラードは呟くと、暫く戦いを見守る事にした。
先に仕掛けたのは、盾を持つ騎士だ!
自らの半身程もある大きな盾で上半身を隠し、白騎士に迫っていく。
自らの間合いに入ったのだろう……動かない白騎士に対し、不用意に盾から身体を出して剣を振る。
その一瞬を、白騎士は見逃さなかった。
盾から身体の出た場所………右の胸を目掛けて、無駄なモーションも無く鋭い突きを見舞う。
「ぐはぁ!」
盾を持つ騎士は右胸を貫かれ、その手から盾と剣が落ち、身体も大地に崩れ落ちる。
「まじか! おい……あんた、大丈夫か!」
ガラードが倒れた騎士に近付いた時には、白騎士の姿は既に消えていた。
「一体、何者だ? だいたい、馬の蹄の音すら聞こえなかったぞ……どうやって消えた?」
ガラードは気になったが、今は胸から大量出血をしている騎士を助けなければならない。
自らの服が血で汚れるのも構わず、ガラードは騎士を引きづりながら教会まで運んだ。
「だから止めろって言ったんだ! 言わんこっちゃない!」
盾を持ち出すのを止めてた男が、頭を抱える。
「神父さん、何とか血を止めてやってくれ! 心臓の逆側だ。直ぐに止血すれば、助かるだろ! オレは、あの白い騎士の正体を確かめる!」
そう言うと、ガラードは教会の外に落ちている白い盾を拾いに走った。
「お前………今の見てたんだろ? 何やってんだ!」
教会の中から、男が叫ぶ。
「ああ……だが奴の存在は不気味だし、放置しとく訳にもいかんだろ? それに、盾の秘密も気になるしな……」
白く輝く盾を構えたガラードは、十字架を模倣したとしか思えない自らの愛剣カリバーンの金色の鞘を握りしめた。
土で濁った池の水で髪を洗っていた青年は、大きく伸びをすると近くの教会に向かって歩き出した。
精悍な顔立ちとは似つかわしくないボサボサの髪、薄汚れた服の上に栄える金色の剣と鞘。
浮浪者なのか貴族なのか……謎の風貌の青年の名は、ガラード・エレイン。
ブレスタ・グランロッドの子供であり、ガラバ・グランロッドとは異母兄弟になる。
湖の妖精の計略によってブレスタは妻ではない女性と一夜を共にし、生まれたガラードはグランロッド家の名誉を守る為に赤子の時に修道院に預けられてしまう。
その修道院に通っていた魔術師マーリンに引き取られ、騎士としての教育を受けたガラードは、己の主を探す旅に出ている。
18の誕生日を迎えたガラードは、マーリンから己の主君を探す旅に出ろと突然言い渡された。
訳も分からず家を放り出されたガラードは、当ての無い旅の真っ最中だ。
それでも、ガラードの顔に悲壮感は無い。
親同然で育ててくれた魔術師マーリンは、意味の無い事はしないという確信があった。
この旅にも、何か意味があるのだろう……そう信じているからこそ、明るく旅を続けられる。
と言っても、行った事のある修道院や教会をグルグルと回っているだけなのだが……
その日も、子供の頃に訪れた事のある教会に厄介になろうと決めていた。
「神父さん、いるかい? 飯を分けて欲しいんだけど……」
ガラードは修道院や教会で生活を送っていたため、躊躇いなく扉を開ける事が出来る。
いつものように、食事を恵んで貰おうと教会の中に入って行く。
教会というものは、厳かで静かな場所のはず……しかし、何か騒がしい。
「おい、止めておけよ! 殺されちまうぜ!」
「何人も殺られてんだから、何も危険な事しなくても……」
そんな言葉を無視して、1人の騎士が教会の隅に立ててある盾を手にとった。
「馬鹿馬鹿しい。この盾を盗まれない為に、教会の人間がデマを流してんだろ! 騙されてんだよ! それに、この地方にオレより強い騎士はいない。神父さんよ、盾は頂くぜ!」
白に輝く綺麗な盾を手に取った騎士は、無言で見つめる神父を横目に、そのまま教会の外に出て行く。
ガラードはイマイチ事態が飲み込めずに、騎士の出て行った扉に視線を向ける。
「神父さん、お久しぶりです。で、一体何があったんですか?」
子供の頃に遊んでくれた神父さんを見つけて、ガラードは声をかけた。
「ああ、久しぶりだな。立派な青年になったが、もう少し清潔にした方がいい」
ガラードの姿を見た神父は懐かしさに目を細めるも、あまりにも汚い身なりに呆れ顔になる。
「まったく、マーリン殿も父親役をかって出たのなら、しっかりしてくれないと……」
「いや、神父さん。これはオレの問題さ……師匠が悪い訳じゃない。それで、あの盾は?」
ガラードは、騎士が持って行った大きな盾が気になっていた。
「ああ……数日前から、教会の隅に置かれていたんだ。誰かが持って来たのか……とにかく、あの盾を持ち出すと白の騎士が現れて戦いを挑んでくるんだよ。それが出鱈目に強くて……既に何人かの騎士が犠牲になった」
「へぇ~。じゃあ、ちょっくら見てくるか。少し気になるし……盾さえ持たなきゃ、大丈夫なんだろ?」
呼び止めようとする神父を無視して、ガラードは盾を持って行った騎士を追って教会の外に出る。
「本当に出やがったな! 貴様、何者だ!」
教会の外で、直ぐに盾を持って行った騎士に追いついた。
盾を持つ騎士の目の前には、白の鎧と白の兜に身を包んだ騎士が馬上で槍を構えている。
「あの白い騎士……構えに隙がない。こりゃ、強そうだな……」
ガラードは呟くと、暫く戦いを見守る事にした。
先に仕掛けたのは、盾を持つ騎士だ!
自らの半身程もある大きな盾で上半身を隠し、白騎士に迫っていく。
自らの間合いに入ったのだろう……動かない白騎士に対し、不用意に盾から身体を出して剣を振る。
その一瞬を、白騎士は見逃さなかった。
盾から身体の出た場所………右の胸を目掛けて、無駄なモーションも無く鋭い突きを見舞う。
「ぐはぁ!」
盾を持つ騎士は右胸を貫かれ、その手から盾と剣が落ち、身体も大地に崩れ落ちる。
「まじか! おい……あんた、大丈夫か!」
ガラードが倒れた騎士に近付いた時には、白騎士の姿は既に消えていた。
「一体、何者だ? だいたい、馬の蹄の音すら聞こえなかったぞ……どうやって消えた?」
ガラードは気になったが、今は胸から大量出血をしている騎士を助けなければならない。
自らの服が血で汚れるのも構わず、ガラードは騎士を引きづりながら教会まで運んだ。
「だから止めろって言ったんだ! 言わんこっちゃない!」
盾を持ち出すのを止めてた男が、頭を抱える。
「神父さん、何とか血を止めてやってくれ! 心臓の逆側だ。直ぐに止血すれば、助かるだろ! オレは、あの白い騎士の正体を確かめる!」
そう言うと、ガラードは教会の外に落ちている白い盾を拾いに走った。
「お前………今の見てたんだろ? 何やってんだ!」
教会の中から、男が叫ぶ。
「ああ……だが奴の存在は不気味だし、放置しとく訳にもいかんだろ? それに、盾の秘密も気になるしな……」
白く輝く盾を構えたガラードは、十字架を模倣したとしか思えない自らの愛剣カリバーンの金色の鞘を握りしめた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる