雫物語~鳳凰戦型~

くろぷり

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それぞれの旅立ち

魔導師マーリン2

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「これだけの力……旅を続けるにしても、色々と厄介でしょう。昨日の轟音の正体……あれは貴方が戦っていた音だと思いますが、あれだけの戦闘で目撃者がいない筈がない。その力を脅威に感じる国が、必ず部隊を差し向けてきましょう」

「だから、なんだ? どこの国の部隊だろうが、我が君と私に敵う訳がない!」

頭を垂れて話すマーリンを見下ろしながら、シェルクードが語気を強める。

「あなたはともかく……確かに、負ける要素は無いと思います。しかし、その赤き剣を汚したくないと言うのであれば、些か厄介でしょう。素手で大軍を相手にするのは骨が折れます」

「確かにな……そいつが、もう少し使えるなら話は別だが、口だけで実力が伴っていない」

シェルクードとは違い、紅の剣を携える騎士の声は静かで冷静だ。

「いや……我が君と比べられたら、誰もが雑魚扱いになります! 私とて、そこら辺の騎士より強い!」

「だ……そうだ。それで、貴様には何か良い案があるのかな? そこの雑魚より雑魚の連中が群がって来ない策が?」

地面に頭を付けている為マーリンの表情は読み取れないが、してやったり……そんな表情をしていたかもしれない。

「いえ……どうしても群がっては来るでしょう。なので、備えるしか方法はありません。この場所……暗き森ミュルクヴィズは、人間もヨトゥンも、あまり近寄りません。戦略的な要所でもなく、農作物が採れる訳でもない。そして、一つ目の巨人が住む危険な地域です。なので、この地に国を建国してしまうのです」

「なるほど、それは丁度いい! 我が君……この魔法使いの言う通り、国を創ってしまいましょう! 世界征服への第一歩です!」

国を創る……そんな突拍子のない策に乗せるにはどうするか……頭を回転させていたマーリンは、シェルクードの言葉に驚いて思わず頭を上げてしまった。

「我々は国を創ろうと思い、どうしようか考えていたところだったんだよ! 確かに、この地に国を創るのは悪くない!」

「世界征服を企んでるのは、貴様だけだろ。オレは安住の地があれば、それでいい。それで、貴様が国を創ってくれるのか?」

頭の悪そうに声を弾ませるシェルクードを睨むように横目で見た紅の剣を携える騎士は、マーリンに視線を移す。

「そろそろ、立ち上がっていいぞ。下を向いて喋るのも、少々疲れた」

「はっ……申し訳ありません!」

既に配下のように振る舞うマーリンは、立ち上がって一礼すると口を開く。

「国を創る為には、この地を平定する事が必要になります。その為には、一つ目の巨人を統べる王……アレン・マックミーナを殺さずに倒して欲しいのです。一つ目の巨人は、知能はあるが野蛮です。そして、強い者に従う習性があります。私はアレン・マックミーナと一度戦い、互角でした。だから一つ目の巨人は、私に手を出して来ないのです」

「他の国の部隊と戦う事は厄介だ……とか言いながら、我が君に化け物退治させようって魂胆か? それも充分厄介な気がするがな……自分の住む場所の安全の為に利用しようって腹か? コイツ、やはり殺しておきましょう!」

再びグングニールを構えるシェルクードを呆れた顔で睨んだ紅の剣を携える騎士は、大きな溜息をついた。

「無限に湧いてくる部隊を倒し続けるより、よっぽどマシだ。この魔法使いと互角と言うなら、さほど問題ない。だが、オレに仕事をさせている間、貴様はどうするんだ? 返答によっては、その案に乗ってやってもいい」

「アレン・マックミーナを倒し、一つ目の巨人を飼い馴らしたとしても、国としては脆弱です。そもそも不気味な巨人がいる国など、人は集まらないでしょう」

マーリンは一呼吸置くと、紅の剣を携える騎士の目の前の空間に映像を映し出す。

その映像には、小高い丘の地面に鞘に収まった黄金の剣が突き刺さっている様子が見える。

「これは聖剣エクスカリバー。何者にも抜けないと言われている、伝説の聖剣です。アレン・マックミーナを倒した後に、この聖剣を引き抜く事が出来れば、貴方は伝説の王として認められるでしょう。その為の下準備を行う時間を下さい」

「貴様、ふざけているのか! 何者にも抜けない剣なら、我が君でも抜けない可能性がある。そうなったら、我が君が笑い者になる。そうなった時、覚悟は出来てるんだろうな!」

マーリンの首元までグングニールの槍先を近付けて、シェルクードは怒りを露にした。

「なんて事ありません。私の魔法で抜けなくなっているだけですからね。エクスカリバーの鞘には、傷付いた身体を一瞬で治す力があります。私は、自らの主として認めた者に受け取って欲しかったのです。それが、正に今……私は各地を周り、聖剣エクスカリバーを抜ける者が現れたと噂を流して参ります」

「オレがアレン・マックミーナを倒し、一つ目の巨人を手馴づけたタイミングで貴様が戻って来てエクスカリバーを引き抜く……と言う筋書かきか……」

紅の剣を携える騎士の言葉に頷いたマーリンは、再び方膝を付いて頭を垂れる。

「その通りでございます。自分で言うのも何ですが、私の名はそこそこ有名です。私が見守る中でエクスカリバーを引き抜けば、世界中に良いアピールになります。そして人種や種族によって差別されない国として、建国を宣言するのです。そうすれば自然と人が集まり、他国も簡単に手出し出来なくなるでしょう」

「なるほど……な。ノープランで国を創ろうとしてた誰かよりも、遥かにマシな話だ。じゃあ、とっとと一つ目の巨人とやらを仲間にしに行くか。新たな剣が手に入るならば、それに越した事はない」

歩き出そうとする紅の剣を携える騎士に、マーリンは声をかけた。

「主よ……名はなんと申されるのですか?」

「さぁな……名など忘れてしまった」

自分の名前など興味ない……心も冷めているような口調に、マーリンはそう感じる。

「では……アーサー・ペンドラゴンと名乗られてはいかがでしょう。聖剣を持つ者として、私が啓示を受けた名前です」

「好きに呼んで構わん。名など、さほど興味ない」

そう言うと、アーサーは再び歩き出す。

「槍使い、アーサー様を頼むぞ。私は、弟子と共に下準備をする」

「魔法使い、偉そうにするなよ! 我が君の最初の配下が私だという事を忘れるな!」

シェルクードは、アーサーの後ろを歩き始めた……

そこまで思い出すと、マーリンは再びルナに視線を向ける。

奇妙なモノだ……アーサーを慕う者が、自らの弟子になりたいと尋ねて来た。

普段は弟子などとらないし、禁術を使うなど似ての外だ。

しかしマーリンはアーサーの為にルナを弟子にし、最愛の弟子であるガラードを旅に出す。

自らの主を探せ……聖剣エクスカリバーを抜ける者こそ、主君に相応しいと伝えて……

聖剣使いのガラードが、エクスカリバーを抜ける者を主とすると触れ回れば、自然と人が集まるだろう。

マーリンは、静かにその場を離れた……
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