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騎士への道
王立ベルヘイム騎士養成学校4
しおりを挟む「今日から、このクラスで共に学ぶ事になる鷹津航太くんだ。彼は伝説の風のmyth knight……順調にいけば、3週間しか共に学べない。吸収出来る事は、彼からしっかり吸収するんだぞ。席は……とりあえず、彼女の隣でいいかな?」
よろしくお願いします……そう言って頭を下げた航太は、クラス担任の指差す方に視線を向けた。
自分の席の隣の女性……その顔や肌の色に見覚えがある。
「彼女……は?」
「ん? やはり、彼女の隣では嫌か? なら、一つ席を持って来よう」
航太の言葉に先生は頷くと、教壇近くの生徒に机と席を持って来るように指示を出す。
「あ、いや……大丈夫です。別に嫌とか、そういうんじゃないんで」
席を立とうとした生徒を制して、航太は足早に褐色の女性の横の席に辿り着き、そして座る。
「鷹津航太だ。よろしくな」
右手を差し出した航太の顔を冷め切った表情で見た褐色の女性は、直ぐに航太から視線を逸らす。
「イングリス・フォルシアンです。嫌なら、無理しなくても席を……」
「イングリスか! カッコイイ名前だな! ゼークなんてアムルサイトって名前だから、頑なにゼークって呼ばせるんだよなぁ……あ、イングリスって呼んでいいか? フォルシアンもカッケーけど、イングリスの方が呼びやすいしな!」
会話中に声を被されて、更に矢継ぎ早に話してくる航太の言葉に、イングリスは思わず頷いた。
「オッケーだな。じゃあ、イングリスって呼ぶぞ! オレの事は航太でも航でも鷹でも、好きな様に呼んでくれ! せっかくお隣りだし、分からない事は教えてくれよ!」
「あの……私の事ご存知なさそうなので、一応言っておきますが……」
「人間とヨトゥンの混血って話なら聞いてるぞ。それ以外の話なら聞くが、その話ならお断りだ」
イングリスは目を大きく見開き、驚きの表情で航太を見る。
「なんだよ? 初対面で好きか嫌いかなんて分かんねーだろ? でも、最初から邪険にする必要もねぇ。性格的に気に入らなけりゃ、お互いに離れていくし、気に入れば仲良くなる……それで良いだろ? 最初から毛嫌いしてたら、本当に大切な出会いを見逃す可能性があるからな」
航太はそう言うと、再び右手を差し出す。
「いえ、そんな事より……私と仲良くすると、他の生徒と仲良く出来なくなりますよ。本当に大切な出会いを逃す事になるんじゃないですか?」
「なる程……イングリスとオレが仲良くしていて、それを理由に嫌われるなら、そいつとは仲良くならなくていいや。あー……でも、イングリスの性格が悪くて周りに迷惑かけまくってる事を知っていて、それでも仲良くしてるって言うんなら話は別だが、オレ自身がイングリスの事をまだ良く知らないからな。せっかく隣同士になったんだ。いがみ合う必要も無いだろ」
ほらっ、と差し出される航太の右手に、イングリスは渋々握手する。
「ちょっと、そんな汚らわしい奴と握手なんてしない方がいいよ。早く手を洗った方がいいわ」
「ん? 身体の中を流れている血が仮に汚くても、表面に出てなきゃ大丈夫だ。排泄後に手洗いしてない手だと言うなら……うん、手を洗うな」
暫くの沈黙の後、イングリスが思わず吹き出した。
「おい、せっかく忠告してやってんのに、その態度はなんだ? Sクラスの神剣のおかげで有名人になったからって、偉そうにしてんじゃねーぞ!」
忠告してきた女子生徒の後ろにいた男子生徒が突然立ち上がり、航太の机を思い切り叩いて威嚇する。
「あー、スマンスマン。忠告してくれて、ありがたいとは思っているよ。ただオレ自身が、人間でもヨトゥンでも神でも、あまり気にしてねぇってだけの話だよ。これまでも、色んな奴に出会ってきたからな」
「ふーん……敵の血が混じってる奴と仲良くするって言うんなら、あなたも私達の敵……って事になるけど、いいかしら?」
金髪で容姿端麗の……明らかにクラスの勝ち組であろう女子生徒が声を出す。
が……整った制服に綺麗な髪飾り……傷一つない二の腕……ここが騎士養成学校である事を忘れる様な身形に、航太は唖然とする。
そして、幼稚な物言い……航太はベルヘイムの未来が不安になった。
「とりあえず、オレが誰と仲良くするかは置いといて……だ。このクラスで三週間も何を学べば良いか、不安になってきたぜ……」
ボソッと呟いた声を聞き逃さなかった生徒達が、航太とイングリスの机の周りを取り囲む。
それを無言で見守る教師……
ベルヘイム国内ではヨトゥンは絶対悪……その事を、航太は痛感していた……
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