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2人のフィアナ騎士
特訓の日々
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「うぉりゃあああぁぁ!」
航太の叫びが、空を裂いた。
全身全霊を込めた剣が、猛烈な勢いでゼークへと襲いかかる。
のだが……ゼークはまるで風のように航太の渾身の一撃を受け流し、その刃は虚しく空を斬った。
航太の足元がぐらつき、汗が流れ落ち土埃が舞う。
たった一瞬の攻防だけで、航太の息はすでに乱れていた。
航太たちがベルヘイム軍に加わる決断を下してから、過酷な一週間が過ぎていた。
行軍の合間に設けられた模擬訓練は、まるで終わりなき試練のようだった。
昼はゼークの隊で骨身を削る訓練に身を投じ、夜は神剣を握りアルパスターとの実戦さながらの戦いに挑む。
身体は今まで経験した事もない疲労で、悲鳴を上げていた。
毎夜8時間以上もの眠りを貪っても筋肉は硬直し、疲れは重く纏わりついたままだった。
それでも、彼らは耐えていた。
普段ならとうに折れていただろう心を支えたのは、オゼス村で見た地獄のような光景だった。
あの惨劇が、3人の胸に燃える何かを刻み込んでいた。
そして、ガイエンとの戦闘で感じた力の差……
そのガイエンの凶刃にかかり、大切な2人の人を失ったティアの苦悩……
様々な思いが、3人を掻き立てていた。
「よーし! 一旦、休憩にしよっか!」
ゼークの声が響き渡り、隊員たちの動きが止まる。
「ふぅ……死ぬほど……疲れた……」
絵美が震える手でハンドタオルを握り、額に滴る汗を拭った。
タオルが汗を吸い、彼女の吐息が白く揺れる。
冷たい風が訓練場を吹き抜ける中、彼女の頬はまだ紅潮していた。
「たった一週間で……みんな、信じられないくらい強くなったね! 本当は基礎から訓練した方がいいんだけど、時間が無いから実戦形式で叩き込んでいくしかないの。それでも、皆んな理解が早くて助かるわ!」
ゼークは、眩しい笑顔で3人を見つめた。
その美しい顔には、汗の滴も流れていない。
自分達より動き回っていた筈のゼークの涼しい顔を見て、3人は愕然とする。
「まぢかよ……ゼークの身体、どうなってんだ? Myth Knightの方が格上とか何とか言ってたが、神剣持ってる奴より能力者だろ! 剣の動きなんて見えねぇし、風の力を使った攻撃すら当たらねぇし……」
「ホント……それに、私達の相手しながら他の人の訓練も見てたでしょ? 若いのに、人望もあるし……ゼークって、私達より若いよね?」
「高校生ぐらいに見えるよねぇ……外人さんって、結構老けて見えるのにさぁ! 普通に女子高生って言われても、全然違和感ないよ! Myth Knightじゃなくても、メチャ強いし!」
絵美が目を輝かせ、ゼークを見つめた。
その視線には、純粋な憧れが溢れている。
「ちょっと……老けて見えるって、失礼じゃない? 確かに、智美と絵美の肌って凄く綺麗だけど……貴女達の国の美容技術って、どうなってるのよ? 同じ様なお肌の手入れが出来れば、私だって……」
それまで指揮官として凛とした態度のゼークが、不満そうな顔をして頬を膨らませる。
その姿に、智美と絵美が吹き出した。
「ちょっと、笑わせないでよ! やっぱりスキンケアは、全ての女性の課題だわ……老けてるって、絵美の語彙力が無いだけよ。大人っポイって事……逆に言うと、私達は子供っぽく見られやすいから……」
女子達がワーキャー言いながら話をする横で、航太は雄大な自然に視線を移す。
アルパスターが軍全体に彼らを紹介した日から、すべてが変わった。
Myth Knight……神剣に選ばれた者たちとして、航太たちは一夜にして英雄と崇められる事になる。
だが……その名は希望であると同時に、重い鎖でもあった。
神剣を手に戦うことは、この世界の人々の未来を背負うこと。
航太は、その重圧を骨の髄まで感じていた。
それでも、心のどこかで優越感が疼いた。
ただの大学生だった自分が、今や運命に選ばれた存在なのだ。
航太は無意識に拳を握り、力こぶを膨らませる。
「オレが神剣を使いこなして、悲しみを背負う全ての人々を……この手で救ってみせる!」
その声に、熱と決意がほとばしる。
「きゃっ! ちょっと、航ちゃん! 急に大声出さないでくれる?」
「1人で黄昏れてると思ったら、急に大声出すんだもん……何を考えてるのかと思えば、気合い入れすぎだよ! 」
智美が航太の肩を叩き、軽く笑った。
「戦うのは、私達だけじゃない。ゼークも、ゼーク隊の兵隊さん達も戦ってくれる。私達より強い人達が、周りを固めてくれている。出来る事を、頑張っていこ!」
「そうだな……ゼークの家系は、代々ベルヘイムの近衛って話だったよな? 剣術ってヤツが、血に刻まれてるんだ。エリートとか、サラブレッドって事だよな?」
航太はわざと棘を込めて言ったが、その言葉の裏には隠しきれない敬意があった。
ゼークの若さでこの強さ……それは並外れた努力の結晶だと、誰よりも航太が理解していた。
「そうね……私は、強くなきゃいけないんだ……神剣が私を認めてくれなくても、それでも強く……」
ゼークは誰にも聞こえない声で、本当に小さい声で呟いた。
「ちょっと、アホ航太! 性格の悪さが出まくってるよ! サイテー!」
「サイテーのゴミ野郎でしゅ~。ゴミ箱に投げ入れて、焼却しちまいましゅよ~。ファイア! デシュファイア!」
ゼークの声を遮る様に絵美は力を込めて航太の肩を叩き、ガーゴはデシュファイア……と叫びながら航太の顔を羽でペチペチしている。
疲労感の充満していた訓練場の空気が、一瞬で和らいだ。
ゼークは軽く笑い、そしてゆっくりと立ち上がる。
風が彼女の髪を揺らし、鋭い瞳が遠くを貫く。
「私には、7国の騎士シクステン・ゼークの血が流れている。強くなきゃいけない……神剣が無くたって、この旅で死ぬ運命だとしたって……」
その呟きは風に溶け、誰の耳にも届かない。
だがその声には、深い覚悟と孤独が滲んでいた。
「伝令! 伝令です!」
突然、土煙を巻き上げながら1人の兵士が駆け込んできた。
息も絶え絶えに、彼は叫ぶ。
「ロキ軍の先鋒隊が方向を変え、我が軍に迫ってきます! さらに後方からは、ガイエン軍が急接近中です!」
その言葉に、訓練場が凍りついた。
ゼークの顔に、暗い影が差す。
「フェルグスの……部隊……だよね……」
彼女の声は低く、抑えきれぬ感情が震えていた。
「私が……戦う……」
複雑な思いを湛えた瞳が、遠くの地平線を見つめる。
剣の柄を握り締めた手が、震える……
震えが周りに気付かれないように、ゼークは無意識に柄から手を離した。
絶望を呼ぶ戦いが、暗い影と共に歩み寄って来ていた……
航太の叫びが、空を裂いた。
全身全霊を込めた剣が、猛烈な勢いでゼークへと襲いかかる。
のだが……ゼークはまるで風のように航太の渾身の一撃を受け流し、その刃は虚しく空を斬った。
航太の足元がぐらつき、汗が流れ落ち土埃が舞う。
たった一瞬の攻防だけで、航太の息はすでに乱れていた。
航太たちがベルヘイム軍に加わる決断を下してから、過酷な一週間が過ぎていた。
行軍の合間に設けられた模擬訓練は、まるで終わりなき試練のようだった。
昼はゼークの隊で骨身を削る訓練に身を投じ、夜は神剣を握りアルパスターとの実戦さながらの戦いに挑む。
身体は今まで経験した事もない疲労で、悲鳴を上げていた。
毎夜8時間以上もの眠りを貪っても筋肉は硬直し、疲れは重く纏わりついたままだった。
それでも、彼らは耐えていた。
普段ならとうに折れていただろう心を支えたのは、オゼス村で見た地獄のような光景だった。
あの惨劇が、3人の胸に燃える何かを刻み込んでいた。
そして、ガイエンとの戦闘で感じた力の差……
そのガイエンの凶刃にかかり、大切な2人の人を失ったティアの苦悩……
様々な思いが、3人を掻き立てていた。
「よーし! 一旦、休憩にしよっか!」
ゼークの声が響き渡り、隊員たちの動きが止まる。
「ふぅ……死ぬほど……疲れた……」
絵美が震える手でハンドタオルを握り、額に滴る汗を拭った。
タオルが汗を吸い、彼女の吐息が白く揺れる。
冷たい風が訓練場を吹き抜ける中、彼女の頬はまだ紅潮していた。
「たった一週間で……みんな、信じられないくらい強くなったね! 本当は基礎から訓練した方がいいんだけど、時間が無いから実戦形式で叩き込んでいくしかないの。それでも、皆んな理解が早くて助かるわ!」
ゼークは、眩しい笑顔で3人を見つめた。
その美しい顔には、汗の滴も流れていない。
自分達より動き回っていた筈のゼークの涼しい顔を見て、3人は愕然とする。
「まぢかよ……ゼークの身体、どうなってんだ? Myth Knightの方が格上とか何とか言ってたが、神剣持ってる奴より能力者だろ! 剣の動きなんて見えねぇし、風の力を使った攻撃すら当たらねぇし……」
「ホント……それに、私達の相手しながら他の人の訓練も見てたでしょ? 若いのに、人望もあるし……ゼークって、私達より若いよね?」
「高校生ぐらいに見えるよねぇ……外人さんって、結構老けて見えるのにさぁ! 普通に女子高生って言われても、全然違和感ないよ! Myth Knightじゃなくても、メチャ強いし!」
絵美が目を輝かせ、ゼークを見つめた。
その視線には、純粋な憧れが溢れている。
「ちょっと……老けて見えるって、失礼じゃない? 確かに、智美と絵美の肌って凄く綺麗だけど……貴女達の国の美容技術って、どうなってるのよ? 同じ様なお肌の手入れが出来れば、私だって……」
それまで指揮官として凛とした態度のゼークが、不満そうな顔をして頬を膨らませる。
その姿に、智美と絵美が吹き出した。
「ちょっと、笑わせないでよ! やっぱりスキンケアは、全ての女性の課題だわ……老けてるって、絵美の語彙力が無いだけよ。大人っポイって事……逆に言うと、私達は子供っぽく見られやすいから……」
女子達がワーキャー言いながら話をする横で、航太は雄大な自然に視線を移す。
アルパスターが軍全体に彼らを紹介した日から、すべてが変わった。
Myth Knight……神剣に選ばれた者たちとして、航太たちは一夜にして英雄と崇められる事になる。
だが……その名は希望であると同時に、重い鎖でもあった。
神剣を手に戦うことは、この世界の人々の未来を背負うこと。
航太は、その重圧を骨の髄まで感じていた。
それでも、心のどこかで優越感が疼いた。
ただの大学生だった自分が、今や運命に選ばれた存在なのだ。
航太は無意識に拳を握り、力こぶを膨らませる。
「オレが神剣を使いこなして、悲しみを背負う全ての人々を……この手で救ってみせる!」
その声に、熱と決意がほとばしる。
「きゃっ! ちょっと、航ちゃん! 急に大声出さないでくれる?」
「1人で黄昏れてると思ったら、急に大声出すんだもん……何を考えてるのかと思えば、気合い入れすぎだよ! 」
智美が航太の肩を叩き、軽く笑った。
「戦うのは、私達だけじゃない。ゼークも、ゼーク隊の兵隊さん達も戦ってくれる。私達より強い人達が、周りを固めてくれている。出来る事を、頑張っていこ!」
「そうだな……ゼークの家系は、代々ベルヘイムの近衛って話だったよな? 剣術ってヤツが、血に刻まれてるんだ。エリートとか、サラブレッドって事だよな?」
航太はわざと棘を込めて言ったが、その言葉の裏には隠しきれない敬意があった。
ゼークの若さでこの強さ……それは並外れた努力の結晶だと、誰よりも航太が理解していた。
「そうね……私は、強くなきゃいけないんだ……神剣が私を認めてくれなくても、それでも強く……」
ゼークは誰にも聞こえない声で、本当に小さい声で呟いた。
「ちょっと、アホ航太! 性格の悪さが出まくってるよ! サイテー!」
「サイテーのゴミ野郎でしゅ~。ゴミ箱に投げ入れて、焼却しちまいましゅよ~。ファイア! デシュファイア!」
ゼークの声を遮る様に絵美は力を込めて航太の肩を叩き、ガーゴはデシュファイア……と叫びながら航太の顔を羽でペチペチしている。
疲労感の充満していた訓練場の空気が、一瞬で和らいだ。
ゼークは軽く笑い、そしてゆっくりと立ち上がる。
風が彼女の髪を揺らし、鋭い瞳が遠くを貫く。
「私には、7国の騎士シクステン・ゼークの血が流れている。強くなきゃいけない……神剣が無くたって、この旅で死ぬ運命だとしたって……」
その呟きは風に溶け、誰の耳にも届かない。
だがその声には、深い覚悟と孤独が滲んでいた。
「伝令! 伝令です!」
突然、土煙を巻き上げながら1人の兵士が駆け込んできた。
息も絶え絶えに、彼は叫ぶ。
「ロキ軍の先鋒隊が方向を変え、我が軍に迫ってきます! さらに後方からは、ガイエン軍が急接近中です!」
その言葉に、訓練場が凍りついた。
ゼークの顔に、暗い影が差す。
「フェルグスの……部隊……だよね……」
彼女の声は低く、抑えきれぬ感情が震えていた。
「私が……戦う……」
複雑な思いを湛えた瞳が、遠くの地平線を見つめる。
剣の柄を握り締めた手が、震える……
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