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素直に気持ちを伝える

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「内緒にしとくじゃねぇよ。お前が勝手に喋り出したんだろ。これ以上、余計なことを言うな」

「はいはい。王子様の仰せのままに」

「王子様?」

私が聞き返すと、副社長はニッコリ笑う。

「哲平は見事な王子様フェイスだから、うちの会社の女子社員がこっそりそう呼んでいるんだ」

テツは苦虫を噛みつぶしたような、不愉快極まりない顔をしていた。
こっそりという割には副社長はテツの前で話しているけど。
でも、テツの表情を見ると、そう呼ばれていることを知っているのが理解できた。

***

緑さんにお別れの挨拶をした後、私はテツと一緒にタクシーに乗り込んだ。

やっぱり最後は泣いてしまった。
短い期間だったけど、ここまで縁さんと距離が近くなるとは思わなかった。
私が勝手に慕っていたんだけど。

緑さんは泣いてる私に「いつでも連絡して。私も連絡するからまたご飯食べに行こうね」と言ってくれた。
まだ緑さんと繋がれることにホッとした。

流れる景色を見ていたら突然、右肩に重みを感じた。
テツが私の肩に頭をのせるようにもたれかかっていたからだ。

「マジで疲れた」

「ちょっと離れてよ」

右腕を動かしてテツをどかせようとした。

「少しぐらいいいだろ。海里の相手をするのも楽じゃないんだ」

そんなの私に言われたって困るんだけど。
それより、テツと副社長とのやり取りの方が気になった。

「ねぇ、副社長はいとこなんだよね?」

「あぁ」

「副社長のこと、どう思ってるの?」

二人の仲があまりよくないように見えたので聞いてみた。

「おい!まさか、海里のことが気になってるんじゃないだろうな」

私の肩にのせていた頭を勢いよく持ち上げ、ジロリと睨んでくる。

「何勘違いしてるの?そんな訳ないでしょ。テツが副社長のことを邪険にしているように見えたから聞いただけだよ」

どうして私が副社長のことを気になってるという発想になるんだろう。
遠回しに聞いたのに、ダイレクトに言うことになったじゃない。

「それならいいけど。昔から海里にからかわれて何度嫌な思いをしたか分からない。アイツ、外面はいいけど性格はひねくれてるからな。お調子者を装って実は腹黒で策士なところがあるから、俺は仕事以外では海里と極力関わりたくないんだ。アイツに何か言われてもスルーしろよ。ろくなことを言わないんだから」

不機嫌な表情で忠告してきた。
外面がいいというのは、どこかで聞いた言葉だ。
そういえば、社長もテツのことを外面がいいと言っていた。
テツと副社長、似ているところがあるのかもしれないなと思ったのは秘密だ。

言いたいことを言ってスッキリしたのか、テツは再び私の肩にもたれ掛かってきた。
タクシーという密室の中、逃げようにもそれができない。
最近のテツは二人きりになると、やたら私に触れてきたりスキンシップをとってくるから困るんだ。
テツの体温を感じ、ドキドキしてしまう。
いつも私だけ翻弄されている気がする。
ジト目を向けた時、テツがゆったりとした口調で聞いてきた。

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