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素直に気持ちを伝える

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「美桜、うちの会社の雰囲気はどうだ?」

いきなりの質問に面食らいながらも、職場の様子を思い出す。

「いいと思うよ。みんな明るいし、社員同士が仲がいいよね。そんなにたくさんの人と話した訳じゃないけど、みんな優しい人が多いし」

「そうか。基本、いい人ばかりだけど美桜に声をかけてくる男がいたら気をつけるんだぞ。というか、そんなやつがいたら俺に報告しろ」

「私に声をかける人なんていないよ」

テツの言葉に呆れてしまう。

「そんなの分からないだろ。俺は美桜のことが好きなんだ。俺以外にお前を口説くやつがいたら排除するから」

私はテツの言葉に顔がボッと赤くなる。
そういうことをサラッと言わないで欲しい。

「そんな可愛い顔するなよ。襲いたくなるだろ」

「な、なにを……」

「なぁ、少しは俺のこと意識してくれてるの?」

耳元で囁くように言ってくる。
その声が甘さを含んでいるような気がした。

テツの言葉に過剰に反応したり、その姿を無意識に目で追っている私がいる。
意識するなと言われても意識してしまう。
テツは百戦錬磨かもしれないけど、こっちはそういう方面に免疫がないからホントに困る。
視線を隣に向けると、いたずらに笑うテツと目が合った。

「そっか。なるほどね」

何がなるほどなのよ!と突っ込みたいけど、私の表情を見たら一目瞭然だったのかもしれない。
テツのことを意識しているって……。
それはそれで悔しい。
文句の一言でも言おうとした時、電話の着信音が聞こえた。

「あ、俺か……」

テツがスマホを取り出し、画面を見て一瞬眉間にシワを寄せた。

「ごめん、ちょっと出る」

私に謝罪したあと、テツは電話に出た。

「もしもし」

いつもよりも低い声で私と話す時とは全然違う。

「は?いきなりなんだよ。仕事の話じゃねえのかよ。俺が誰と一緒に住もうとお前には関係ないだろ」

舌打ちと共にテツの声は苛立ちを含んでいる。
誰と話しているのか、内容でピンときた。
堂島さんだ。

「マジでしつこい。アイツは俺の彼女だよ。嘘じゃねぇ。仕事じゃないなら電話してくるな」

強い口調で言い放つ。
話を聞くつもりはないけど、聞こえてしまう。
彼女って私のこと……だよね?
確かに私はテツの彼女ではない。

「いい加減、やめてくれ。迷惑なんだよ。お前とは仕事以外で話すことは一切ない。じゃあ」

電話が終わった時、ちょうどタクシーもマンションの前についた。
少しイライラしているテツに声をかけることも出来なくて、無言のまま部屋に戻った。
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