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対決、そしてこれからもずっと
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「美桜ちゃん、悪いんだけど会議室の片付けお願いしてもいい?」
「はい、分かりました」
副社長から声をかけられ、そちらに視線を向けた。
会議室から打ち合わせを終えた人達がゾロゾロと出てきている。
みんなが出るのを待ってから片付けをしよう。
「あ、それともうひとつお願いがあって」
「なんでしょうか?」
「来週の金曜に弁当が必要なんだけど、美桜ちゃんが前に働いていた惣菜店で注文してもらってもいい?あそこの弁当は美味しくて好評だから」
「もちろんです!」
おじさんの味を褒められ嬉しくなる。
よく賄いで食べていたけど、本当に絶品だ。
「メニューって分かる?」
「はい。ネットでも見れるので」
私はスマホを取り出し、ブックマークしていたお店のホームページを開く。
お弁当のメニューのところをタップしていたら副社長がスマホを覗き込んできた。
「へぇ、たくさん種類があるね。前は緑ちゃんにお任せだったから」
耳元で副社長が喋り、その近さにドギマギしてしまう。
今更ながら、パソコンでホームページを開けばよかったと思ったけど後の祭りだ。
「あの、よければ……」
手に持っていたスマホを副社長に渡そうとしたら、バシッと何か叩く音が聞こえた。
「イテッ」
副社長が頭を擦りながら私から離れた。
「哲平、何するんだよ」
「なにって、お前が近すぎたから」
「だからって叩くことないだろ、叩くことは!」
シレッと答えるテツに副社長は恨みがましい視線を向ける。
「美桜、今日はどこかで食事してから帰ろうか」
テツは副社長を無視して、私に話しかけてくるのでギョッとした。
仕事中に人前でそれを言うのはナシでしょ。
周りを見ると恵利さんと目が合い、ニヤリと口許に笑みを浮かべていた。
やっぱり聞かれてたー!
テツにはそういう話があるならメッセージで送ってと言っているのにどうして口に出して言うのよ。
恥ずかしさで穴があったら入りたい気分だ。
「おいこら!俺は無視か?」
副社長がテツの頭をグリグリと触る。
その手を嫌そうに払うと、テツは大袈裟にため息をつき急に畏まった喋り方をする。
「副社長、こんなところでサボってないで仕事に戻られたらどうですか?」
「はぁ?俺がサボってるなら哲平もだろ!仕事中にイチャイチャするな」
「普通の会話をしただけで、別にイチャイチャなんてしてません」
「ホント、生意気なのは大人になっても変わらないな」
「大きなお世話です」
「はいはい、そこまで。あんたたち二人は仲がいいんだか悪いんだか。美桜ちゃんの仕事の邪魔だから、さっさと自分の持ち場に戻りなさい」
社長が手をパン、と叩きその場をおさめる。
社長はいつの間にか、私のことは"美桜ちゃん”と名前で呼んでくれるようになっていた。
さん付けより、距離が近くなった気がして嬉しかった。
副社長は肩を竦め、自分の席に向かった。
お弁当のメニューは印刷して副社長に渡せばいいかと思い、パソコンのマウスに手をかけた。
「美桜、またあとで連絡する」
テツは私にそっと耳打ちしてきた。
まだいたのかー!
ジロッと睨むと、テツは何事もなかったかのように笑い背を向けた。
私はその後ろ姿を見て大きくため息をついた。
「美桜ちゃん、悪いんだけど会議室の片付けお願いしてもいい?」
「はい、分かりました」
副社長から声をかけられ、そちらに視線を向けた。
会議室から打ち合わせを終えた人達がゾロゾロと出てきている。
みんなが出るのを待ってから片付けをしよう。
「あ、それともうひとつお願いがあって」
「なんでしょうか?」
「来週の金曜に弁当が必要なんだけど、美桜ちゃんが前に働いていた惣菜店で注文してもらってもいい?あそこの弁当は美味しくて好評だから」
「もちろんです!」
おじさんの味を褒められ嬉しくなる。
よく賄いで食べていたけど、本当に絶品だ。
「メニューって分かる?」
「はい。ネットでも見れるので」
私はスマホを取り出し、ブックマークしていたお店のホームページを開く。
お弁当のメニューのところをタップしていたら副社長がスマホを覗き込んできた。
「へぇ、たくさん種類があるね。前は緑ちゃんにお任せだったから」
耳元で副社長が喋り、その近さにドギマギしてしまう。
今更ながら、パソコンでホームページを開けばよかったと思ったけど後の祭りだ。
「あの、よければ……」
手に持っていたスマホを副社長に渡そうとしたら、バシッと何か叩く音が聞こえた。
「イテッ」
副社長が頭を擦りながら私から離れた。
「哲平、何するんだよ」
「なにって、お前が近すぎたから」
「だからって叩くことないだろ、叩くことは!」
シレッと答えるテツに副社長は恨みがましい視線を向ける。
「美桜、今日はどこかで食事してから帰ろうか」
テツは副社長を無視して、私に話しかけてくるのでギョッとした。
仕事中に人前でそれを言うのはナシでしょ。
周りを見ると恵利さんと目が合い、ニヤリと口許に笑みを浮かべていた。
やっぱり聞かれてたー!
テツにはそういう話があるならメッセージで送ってと言っているのにどうして口に出して言うのよ。
恥ずかしさで穴があったら入りたい気分だ。
「おいこら!俺は無視か?」
副社長がテツの頭をグリグリと触る。
その手を嫌そうに払うと、テツは大袈裟にため息をつき急に畏まった喋り方をする。
「副社長、こんなところでサボってないで仕事に戻られたらどうですか?」
「はぁ?俺がサボってるなら哲平もだろ!仕事中にイチャイチャするな」
「普通の会話をしただけで、別にイチャイチャなんてしてません」
「ホント、生意気なのは大人になっても変わらないな」
「大きなお世話です」
「はいはい、そこまで。あんたたち二人は仲がいいんだか悪いんだか。美桜ちゃんの仕事の邪魔だから、さっさと自分の持ち場に戻りなさい」
社長が手をパン、と叩きその場をおさめる。
社長はいつの間にか、私のことは"美桜ちゃん”と名前で呼んでくれるようになっていた。
さん付けより、距離が近くなった気がして嬉しかった。
副社長は肩を竦め、自分の席に向かった。
お弁当のメニューは印刷して副社長に渡せばいいかと思い、パソコンのマウスに手をかけた。
「美桜、またあとで連絡する」
テツは私にそっと耳打ちしてきた。
まだいたのかー!
ジロッと睨むと、テツは何事もなかったかのように笑い背を向けた。
私はその後ろ姿を見て大きくため息をついた。
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