次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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過去を乗り越えて

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情報が多すぎて理解するのに時間がかかる。
少し整理しよう。

お兄ちゃんと昴くんと立花さんは友人で、私が学生時代、実は立花さんと会っていた。
そして私が昴くんにフラれた現場を立花さんに見られていた。
まさか、そんなところを見られているとは思わなくて頭を抱えたくなった。
立花さんが告白を断る場面に私が遭遇し、私がフラれた場面に立花さんが遭遇していた。
いったい何の巡り合わせなんだろう。

それより、私のことが気になっていたってどういうことなんだろう。
額面通りに受けとると、完全に勘違いしてしまう。
聞くのが怖い。
だけど、ここまで来たら思っていることを全て聞いてスッキリするべきだと思った。
精一杯の勇気を振り絞って口を開いた。

「それはどういうことですか?立花さんには好きな人がいます、よね?そんな風に言われると勘違いしてしまいます」
「勘違いじゃないよ。俺の好きな人は河野さん、君だ」
「嘘……」

真っ直ぐに見つめられて紡がれた言葉が信じられなくて、本音がポロリとこぼれ落ちる。
立花さんが私のことを好き?

「嘘じゃないよ。河野さんがマキに振られたとき、今にも泣きそうになっているのを見て俺ならそんな顔はさせないのにと思ったんだ。その時はどうしてそんな風に思ったのか分からなかった。でも、海外に行ってから、ふとした時に河野さんのことが気になっていた。もう泣いていないだろうか、と」

海外にいた時に私のことを考えてくれていたという言葉を聞いて、胸がギュッと締め付けられた。

「月日が経ち、こっちに戻ってきて驚いたよ。河野さんが同じ会社で働いているんだから。響也から何も聞かされていなかったから余計にね。そして、偶然にも同じプロジェクトメンバーに選ばれて素直に嬉しかった」

フッと頬を緩める。

「一緒に仕事をするようになって、君と宮沢くんの距離が近いことが気になった。同期だから仲がいいのか、とかモヤモヤして。この感情は嫉妬だと気付いた時、俺は河野さんのことが好きなんだと改めて自覚した。というか、バーで会った時から俺は河野さんに惹かれていたんだと思う」

真っ直ぐな言葉が私の心を射抜く。
どうしよう、嬉しくてたまらない。

「打ち合わせとかで事務的な会話は何度かしたことはあったけど、どうにかして距離を詰めていきたいなと考えていたんだ。そしたら、あんな場面で河野さんと遭遇するとは思わなかったよ。でも、そのお陰で君と話せる口実が出来た」

きっと、金城さんが立花さんに告白している場に遭遇したことを言っているんだろう。
確かにあの出来事がないと立花さんと一緒に食事に行くことはなかったと思う。

「河野さんと話をして、マキとのことがトラウマになっていることを知った。どうにかしてそれを払拭してあげたいと思ってあんな提案をしたんだ。まぁ、河野さんにとっては迷惑な提案だっただろうけど」

立花さんは苦笑いする。
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