67 / 107
過去を乗り越えて
11
しおりを挟む
提案というのは偽装恋愛、恋のリハビリのことだよね。
さすがに言われた時は戸惑った。
でも、自分で考えてそれを受け入れたんだ。
「そんなことないです。私は立花さんの優しさに触れて心が満たされていました。偽装じゃなくて本当の彼氏だったらよかったのに……と何度も思うようになっていました」
私の言葉に立花さんは驚いて目を見開いた。
昴くんにフラれてから、恋をすることに臆病になっていた。
でも、私は立花さんのお陰で前を向くことができて、好きな人だってできた。
久しぶりに芽生えた恋心だったのに自分で無理やり蓋をしてしまったんだ。
もう二度と気持ちを伝えずに後悔したくない。
「あの日、立花さんの口から"マキ"という名前を聞いて私は勘違いしました。きっと立花さんの気になっている人なんだと。それで、私は邪魔したらいけないと思って偽装恋愛の解消を言い出しました。でも本心はすごく後悔しました」
「河野さん、それって……」
好きな人の幸せを考えて身を引いた、なんていうのは建前だ。
「私から解消を言い出したくせに、何をしていても立花さんのことを考えてしまう自分に嫌気がさしました。こんなことなら、"マキ"という存在に怯えず、気持ちを伝えればよかったと」
私は小さく息をはくと、真っ直ぐに立花さんを見つめ言葉を紡いだ。
「私は、立花さんのことが好きです」
気持ちを告げた途端、立花さんは微動だにせずに私をじっと見つめている。
えっと、私は今、告白をしたよね。
何の反応もしない立花さんに不安を覚える。
「あの……」
私が声をかけると、立花さんがハッとすると顔がみるみるうちに赤く染まっていった。
「いや、ごめん。あ、ごめんじゃなくて。ちょっと待って。これはヤバイな」
ごめん?
ヤバい?
これは私の告白に対する返事なんだろうか。
グルグルとマイナス思考が私を支配していき、不安な気持ちで立花さんを見た。
「ホント、可愛すぎて参るよ」
私の身体は立花さんの腕の中にいた。
一気に鼓動が跳ね上がる。
これって……。
「夢じゃないよな」
私が考えていたことを立花さんが口にする。
抱きしめている腕を緩めると、顔を近づけてきて額と額がぶつかる。
絡まり合う視線に心臓は高鳴り、顔が熱を帯びる。
全く逸らされない立花さんの瞳に視線の行き場をどうしようかと思っていたら、私の唇に柔らかな感触があった。
一瞬、頭の中が真っ白になって自分の身に何が起きたのか分からなかった。
でも、すぐにキスされているんだと気づく。
「おーい、大丈夫?」
目を見開いたまま固まっていたら、立花さんがクスクスと笑いながら私の頬を人差し指でつついた。
さすがに言われた時は戸惑った。
でも、自分で考えてそれを受け入れたんだ。
「そんなことないです。私は立花さんの優しさに触れて心が満たされていました。偽装じゃなくて本当の彼氏だったらよかったのに……と何度も思うようになっていました」
私の言葉に立花さんは驚いて目を見開いた。
昴くんにフラれてから、恋をすることに臆病になっていた。
でも、私は立花さんのお陰で前を向くことができて、好きな人だってできた。
久しぶりに芽生えた恋心だったのに自分で無理やり蓋をしてしまったんだ。
もう二度と気持ちを伝えずに後悔したくない。
「あの日、立花さんの口から"マキ"という名前を聞いて私は勘違いしました。きっと立花さんの気になっている人なんだと。それで、私は邪魔したらいけないと思って偽装恋愛の解消を言い出しました。でも本心はすごく後悔しました」
「河野さん、それって……」
好きな人の幸せを考えて身を引いた、なんていうのは建前だ。
「私から解消を言い出したくせに、何をしていても立花さんのことを考えてしまう自分に嫌気がさしました。こんなことなら、"マキ"という存在に怯えず、気持ちを伝えればよかったと」
私は小さく息をはくと、真っ直ぐに立花さんを見つめ言葉を紡いだ。
「私は、立花さんのことが好きです」
気持ちを告げた途端、立花さんは微動だにせずに私をじっと見つめている。
えっと、私は今、告白をしたよね。
何の反応もしない立花さんに不安を覚える。
「あの……」
私が声をかけると、立花さんがハッとすると顔がみるみるうちに赤く染まっていった。
「いや、ごめん。あ、ごめんじゃなくて。ちょっと待って。これはヤバイな」
ごめん?
ヤバい?
これは私の告白に対する返事なんだろうか。
グルグルとマイナス思考が私を支配していき、不安な気持ちで立花さんを見た。
「ホント、可愛すぎて参るよ」
私の身体は立花さんの腕の中にいた。
一気に鼓動が跳ね上がる。
これって……。
「夢じゃないよな」
私が考えていたことを立花さんが口にする。
抱きしめている腕を緩めると、顔を近づけてきて額と額がぶつかる。
絡まり合う視線に心臓は高鳴り、顔が熱を帯びる。
全く逸らされない立花さんの瞳に視線の行き場をどうしようかと思っていたら、私の唇に柔らかな感触があった。
一瞬、頭の中が真っ白になって自分の身に何が起きたのか分からなかった。
でも、すぐにキスされているんだと気づく。
「おーい、大丈夫?」
目を見開いたまま固まっていたら、立花さんがクスクスと笑いながら私の頬を人差し指でつついた。
35
あなたにおすすめの小説
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?
好きの手前と、さよならの向こう
茶ノ畑おーど
恋愛
数年前の失恋の痛みを抱えたまま、淡々と日々を過ごしていた社会人・中町ヒロト。
そんな彼の前に、不器用ながら真っすぐな後輩・明坂キリカが配属される。
小悪魔的な新人女子や、忘れられない元恋人も現れ、
ヒロトの平穏な日常は静かに崩れ、やがて過去と心の傷が再び揺らぎ始める――。
仕事と恋、すれ違いと再生。
交錯する想いの中で、彼は“本当に守りたいもの”を選び取れるのか。
――――――
※【20:30】の毎日更新になります。
ストーリーや展開等、色々と試行錯誤しながら執筆していますが、楽しんでいただけると嬉しいです。
不器用な大人たちに行く末を、温かく見守ってあげてください。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる