おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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25.水無瀬京介の苦悩

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帰宅した水無瀬は、一直線に仏壇の前に向かった。

和室に置かれた小さな仏壇の前に正座し、妻の写真を手に取った。

「絢子・・・彼女の瞳は君そっくりだったよ。その上、君と同じことを言う。」

水無瀬は涙で肩を震わせた。

楓との会話は、昔、妻が寝込んだ時の会話を再生したようだった。

寝込んでいるというのに、水無瀬の心配をする。

水無瀬には楓が絢子に重なって見え、冷徹にしてきた心が急激に熱くなった。

「絢子・・」

絢子の満面の笑みは、水無瀬が撮ったものだった。

きっと楓は笑顔も似ているのだろう。思い浮かんだことが水無瀬を更に苦しめた。

 一番冷徹にならなければならない相手に、決意が大きく揺らぐ。

「君を見ているようだった・・・」

指先で絢子の笑顔をなぞった。

水無瀬はあの時、どれだけ望んでも、もう触れることができない絢子に、楓に触れることで触れられる気がした。

「会いたいなぁ・・・君の笑顔がもう一度見たいよ・・・」

突然奪われた最愛の人。絢子の亡骸を抱いて慟哭を響かせたあの日から、継ぎ接ぎをして無理矢理動かしてきた心が、崩れ落ちていく。

「君は怒るだろうね・・・こんな俺を見たら・・・父親としても失格だ・・・」

それでも、二人を殺めた犯人を裁くため、進まなければならなかった。

「あいつを裁けたら、すぐにそっちに行くから・・・」

楓に接触するのは危険だ。楓は絢子でなければ、絢子の代わりにもならないのだから。

水無瀬は心を留めようと、絢子の遺影を抱き締めた。

あの日のように。
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