おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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30.誰が為の決断か

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授業が始まって二週間経った今日、私はダイニングのテーブルで、詠川さんと明さんに挟まれ、向かいには水無瀬さんという配置で座っていた。

まるで三者面談だ。

「五日後、巫女の存在を公表し、神凪さんには全世界に向けた生放送で声明を発表して頂きたい。」

「この情勢不安の折に?」

「ですから、公表を急ぐべきだとの総理のご判断です。」

「巫女様、これは政治利用です。」

「日本の外交を有利にする為のこの時期の発表や。」

私にはまだ世界情勢がどうのとかわからないから、正直周りの意見を聞かないと判断できない。でも、双方が激しく反発してるものだから、公平な判断材料にならなくて困っていた。

だから私は自分の行動指針を持とうと決めた。

「水無瀬さん。」

「はい。」

「それをしたら、水無瀬さんのしたいことはできますか?」

水無瀬さんは表情を強ばらせた。

「楓さん?」

「私、水無瀬さんがしたいことがそれでできるなら、やります。」

雪野さんが無表情を崩したことに気を取られて良く見なかったけど、水無瀬さんは一瞬辛そうな顔をした。

「楓さん、よく考えてください!これは巫女様の政治利用です!」

「政府は巫女様のことを道具としか見てない!ここで政府の要求を飲んだら・・・!」

「水無瀬さんの願いが叶ったら、水無瀬さんは楽になるんでしょう?だったらやります。水無瀬さんの願いが叶うまで。」

「巫女様!!」

「信用したらあかん!政府は」

「信用してないよ。でも、水無瀬さんの力にはなりたい。」

「巫女様、目先の事ではなく、先のことを考えなければなりません。ここで要求を飲んでしまったら漬けあがります。」

「水無瀬さん。私を利用すればできるんですよね?やりたい何かが。」

「巫女様!!」

詠川さんが声を荒らげて机を叩いた。

「考え直してください。何が目的なのかもわからないのに、ご自分の一生に関わる問題を協力できるならやると決めるのは向こう見ず過ぎます。」

「水無瀬さんの願いが叶えばやめます。」

「楓さん、賢い選択やない。」

「私、自分の進むべき道がどこなのかわからない。守り手と政府は対極に位置してて、全部が極端な二択になってて判断が付かないの。それで、自分の指針を持とうと思ったの。私は誰かの役に立つのが嬉しくてプログラマーになった。だから、役に立ちたいと思える人の役に立てるなら、役に立てる選択肢を選ぶ。」

水無瀬さんが笑って、何かを吐き出そうとする様に溜息を吐いた。

「とんだお人好しですね。信用していない人間の願いを叶えたいだなんて。好都合ですが。」

「楓さん!」

「決めたことです。」

「俺は、そんなに信用できひんかった?」

「違うよ。指針を持っただけ。守り手が私を守るために行動すると決めている様に。」

「巫女様、これまでの巫女様は幾度となく同じ決断で政府に苦しめられています。同じてつを踏むことになります。」

「もし私に残酷な未来が待っていても、私は行動指針を変えません。だって、自由もプログラマーとしての人生もアイデンティティも失ってしまった私にはこれしかないから。」

詠川先生も明さんも、それ以上は説得をしなかった。

「ありがとうございます。では直ぐに準備を進めます。明後日には総理とお会いして頂きますので、おねがいいたします。」

「わかりました。」

玄関のドアを閉める音がして、私の緊張の糸は切れた。
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