おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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33.瑠璃川湊の事情

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英語でスピーチするために、カリキュラムが変更されて、私は瑠璃川先生の短期集中授業を受けていた。

大きいホワイトボードがあるのに、二人掛けの長机を一つ並べただけの教室。

先生は紅茶やジュースとお菓子を用意してくれていて、まるで優雅なアフタヌーンティーを戴きながら王子様とお喋りをしているような感覚だ。

「先生、できる気がしない。」

「大丈夫。自信を持って。細かいイントネーションを直せば、どんなスピーチでも対応できるから。」

先生がこの調子だからまだ頑張れているけど、淡々とした授業だったら耐えられなかった。

英語の長文を眺めながら、心底そう思った。

「楓ちゃんは工業英語の文章が読めるから強いよ。」

「翻訳なんて大抵翻訳システムを頼ってたよ。」

「頼ることは何も悪くないよ?だって、翻訳した単語も自然に覚えるでしょ?」

先生はどこまでも肯定してくれる。英語が大の苦手だった中学時代に出会いたかった。

向かいに座る先生は、横を向いて足を組み、テキストを眺めた。

「工業英語ってすっごく固いよね。ビジネス英語の類だから当然なんだけど。」

「私、中学英語ですらついていけなかったから、そうなのかわからない。」

「そんなに英語が苦手だったのに、なんでプログラマーになろうと思ったの?」

「馬鹿だったんだよ。プログラマーになったら英語をしなくて済むって思ったの。」

「えっ?どうして…?」

「私も当時の自分を問い質したい。なんで自殺したんだって。」

「楓ちゃんちょっと変なところあるよね。」

「変わってるは良く言われた。」

「予測不可能なところがあるって意味。水無瀬さん一人のために、全世界へのスピーチも引き受けちゃうし。大揉めだよ、守り手。」

「そうだろうね。明さんと詠川先生には辛い立場を引き受けてもらって申し訳ないと思ってるの。」

「守り手の役割はそれだから、申し訳ないと思う必要はないと思うよ。そもそも政府が見つける前に巫女を保護できなかった守り手が悪い。政府に保護されてしまってから、ギャーギャー騒いだって後の祭りだよ。」

先生はキッパリ物事を言う人だ。キラキラだけじゃないところが尚好感が持てる。発言も中立な立場を守っている。

「紫々井先生達が君に仕えることができてるのだって、君が折衷案を通したからなんだから、救済されてマシだったと思わないと。」

先生は優雅に紅茶を飲んだ。

「紫々井先生達はまだしも、他の守り手達に政府に協力することをとやかく言われたら言ってやんな。じゃあなんで、先に保護してくれなかったんですかって。」

その言葉は覚えておこう。明さん達に申し訳ないから使いたくないけど。

私はマカロンを頬張った。

「先生はなんで政府の要請を受け入れたの?私一人の講師なんて勿体ないよ。」

「女の子達に囲まれる生活に疲れてたんだ。」

「凄く納得いく答え…」

「恋人ができても、飽きられて捨てられちゃうんだ。王子様はもうお腹いっぱいだって。それで傷心した俺はここで可愛いお姫様一人の講師をしてる訳。」

先生には申し訳ないけどそれはわかる気がする。

「ここは俺を囲む女の子達が居ないから、本当に引き受けて良かったよ。お姫様も、俺に目がハートじゃないしね。」

それはただ単に圧倒的な王子様オーラに気圧されてるだけだけど。

「俺に惚れちゃダメだよ?嬉しいけどね。」

先生はそう言って悪戯に笑った。本当に心臓に悪かった。
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