おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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98.高辻奏の配慮

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書物を読み漁っても手掛かりを見付けられず、私は過去の巫女が残した品々を持ってきてもらって、それを使ったトライアンドエラーを繰り返した。
勿論何が起こるか分からないから、グラウンドで雅楽代さんと雪野さん、詠川先生と紫々井先生が見守る中で行った。
詠川先生は、次々に巫女関連の貴重らしい物が壊れるから目眩を起こして、少し離れたところの紫々井先生の横に座って見守る事となった。
壊した品々が散乱して途方に暮れていたら、いつの間にか奏くんが隣に来ていて、しゃがんで陶器の欠片を摘んだ。

「凄い。扱うのが怖いほど魔力が篭っていたのに、完全に抜けてる。」
「それは過去の巫女の魔力を吸い取ったら何か起こるんじゃないかと思って。」
「で、魔力を抜かれて砕けたと。」
「うん。」
「詠川先生と紫々井先生の横を通ったんだけど、詠川先生、品物のリスト見ながら悲しみに打ちひしがれてたよ。」
「申し訳ない・・・」
「俺は、また作ればいいじゃんって思うけど。」
「それ詠川先生の前で言っちゃダメだよ。」
「ダメなの?」
「ダメだよ。巫女が作った物は全て、奏くんにとっての猫丸ねこまると同じように大切な物なんだから。歴史的な価値も付いてるし。」

奏くんは腰に携えた刀を見た。
魔刀まとう猫丸。凄く強力な刀で、猫丸が主と認めた者が高辻家の当主になるという。
これを聞いた時は、抜いたら勇者になるやつだ、と感動した。高辻家じゃないとダメだとか、条件が色々あるらしく、奏くん曰く面倒臭い刀だそうだ。

「・・・分かってて破壊しまくってる楓ちゃん鬼畜じゃん。」

酷い言いようだけど、これは私も思ってるから否定できなかった。

「これさ、いつまで続けるの?歴代の巫女が残した物を破壊し尽くすまで?」
「流石にそこまでは・・・」

しない、とは言えなかった。やる事がもうこれしか無いのだから。

「この倍壊したら詠川先生ぶっ倒れるよ。」
「だよね・・・」
「詠川先生、巫女様が作った物だからって繰り返し呟いてた。」
「そっか・・・」

 頑張ったけど、結局詠川先生と紫々井先生とは、瑠璃川先生との様な関係は築けなかった。
諦めたら心は軽くなったけど、悲しみと虚無感に襲われた。
瑠璃川先生と伊海先生が支えてくれたからこうして前を向けているけど、二人が居なかったら私は絶望していたことだろう。

「まあいいじゃん。もしかしたら直せるかもよ?」
「粉々だよ?」
「楓ちゃんは理を変える力があるんだから、できるんじゃない。」
「そうかな・・・。みんな理を変えられるって言ってたけど、私にはさっぱりわからないよ。」
「・・・楓ちゃん、前なら直ぐに試してたのに、どうしたの?」
「えっ・・・」

言われて気付いた。私はその気力も失っているんだ。

「そうだね・・・やらないと・・・」
「気が進んだらでいいじゃん。この施設の中で暮らしてても、楓ちゃんが元のメンタルに戻せるなら。できないなら、こっそり外に出てみる?出してあげるよ?」

奏くんが無邪気に微笑んでみせた。
自然と私の頬も緩む。

「ふふっ、ありがとう。」
「あ、もしかして、今の気の沈みって生理も関係してる?だったら言わないと。ここはキツくない?そうだ、生理中は連れ出せないから前もって」

私にも、手が先に出ることなんてあるんだ。正確には頭だけど。
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