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105.雪野智久の意思
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雪野は、お前の部隊だけでも動け、と言う意味だと受け取った。
傭兵集団の雅楽代と違い、司令官の命令が絶対である雪野でも、簡単に頷く事はできなかった。
雪野の脳裏に、冷たくなった水無瀬を抱いて泣き叫ぶ、あの時の楓の姿が浮かぶ。
「・・・自分も、その時は今では無いと思います。」
それは雪野にとって勇気ある返答だった。
「楓様はこの世界より遥かに治安の良い世界で生まれ育ちました。日本でさえ大量殺人は珍しくなく、朝見送った大切な人が二度と帰らないことに怯えるこの世界を受け入れるには、到底時間が足りません。楓様を眠らせて避難場所に運びませんか。」
尾長谷は大きな溜息を吐いた。
『どっちにもそう言われたんじゃ仕方ないな。分かったよ。智久の案を採用する。』
雅楽代と雪野は一先ず安堵した。
『戦闘は智久のチームが前衛。薫のチームはサポートに回れ。智久のチームはこの機会に戦闘に慣れた方が良い。』
「「了解。」」
二人は素早く部下達に指示を送った。
「詠川先生、結界を後退させて戦う場所の確保と、戦闘のサポートをお願いします。楓様は眠らせて安全な場所へ移動させます。」
「わかりました。」
詠川も楓を眠らせる意味を瞬時に理解し、腰に携えている薄いケースに手を添えた。
A5半の本のサイズのそれは、上に向けて少し開くと、詠川が念じた本を別空間から取り出せる、理の巫女と詠川の祖先が作った唯一無二の道具だった。
詠川は取り出された本を手に取って開くと、一説を朗読し、その効果を結界に反映させた。
雅楽代と雪野は左手で鞘を握り、刀に力を込める。
「妖狐刀玉藻前」
雅楽代が鯉口を切ると、雅楽代の顔の上半分に白い狐の半面が現れた。
同時に、九本の尻尾と狐の耳が現れる。
「神刀鬼神阿修羅」
そう呟いた雪野が刀を抜くと、刃は轟々と燃える炎に覆われ、雪野の瞳は炎と同じ朱色に染まった。
続けて雪野は体に宿る術を呼び出す"口上"と呼ばれる呪文を唱える。
「余の名は影帝。影を持ちしもの皆余の傀儡。逃げられぬ力にひれ伏せ。この時より血の舞う宴に興じようぞ。」
雪野の影から黒い手の様なものが伸び、雪野の体に絡み付いた。
「反影の興、三。反地加速。」
雪野の体に絡み付いた影が、雪乃を敵に向けて投げ飛ばし、雪野は刀を振りかざした。
雅楽代はそれに合わせて部下に指示を送りながらサポートに回る。
その戦いは順調だった。楓が魔力の殻を破るまでは。
傭兵集団の雅楽代と違い、司令官の命令が絶対である雪野でも、簡単に頷く事はできなかった。
雪野の脳裏に、冷たくなった水無瀬を抱いて泣き叫ぶ、あの時の楓の姿が浮かぶ。
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「楓様はこの世界より遥かに治安の良い世界で生まれ育ちました。日本でさえ大量殺人は珍しくなく、朝見送った大切な人が二度と帰らないことに怯えるこの世界を受け入れるには、到底時間が足りません。楓様を眠らせて避難場所に運びませんか。」
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雅楽代はそれに合わせて部下に指示を送りながらサポートに回る。
その戦いは順調だった。楓が魔力の殻を破るまでは。
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