時を喰らう館:天才高校生探偵、神藤葉羽の難解推理

葉羽

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10章

深紅の真実

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葉羽は、自室の暖炉の前に座り、彩由美にこれまでの推理を説明していた。窓の外では、激しい雨が降り続いており、雷鳴が轟くたびに、部屋の灯りが揺らめいた。暖炉の火が、二人の顔を赤く照らし、影を長く伸ばしていた。

「…つまり、犯人は、長期間に渡って雅也さんにVRゴーグルを装着させ、仮想現実空間での体験を現実世界の記憶と混同させていたんですね」

彩由美は、葉羽の説明を真剣な表情で聞いていた。彼女の瞳には、事件の真相への好奇心と、同時に、犯人の冷酷さに対する恐怖が映し出されていた。

「そうだ。犯人は、仮想現実空間で雅也さんに偽の記憶を植え付け、現実世界での行動を操作していた。雅也さんの日記に書かれていた奇妙な夢は、実はVR空間での体験だったんだ」

葉羽は、暖炉の薪をくべながら、静かに語り続けた。

「そして、犯人は、クロノスの花の精油を使って、雅也さんの時間感覚を操作し、錯視立体、鏡、照明、プロジェクションマッピングを駆使して、完璧な密室トリックを作り上げた。雅也さんは、犯人の巧妙な罠にはまり、自ら地下室の密室へと入り込んでしまったんだ」

葉羽は、一枚の写真を彩由美に見せた。それは、VR空間の隠し部屋で見つけた、雅也ともう一人の男が写っている写真だった。

「この男が、事件の鍵を握っている。彼は、天堂家の遠い親戚で、過去に起きたある事件で、雅也さんと深い因縁を持つ人物だ。彼の名は、朽木蒼司(くちき そうじ)。今回の事件の真犯人だ」

彩由美は、写真に写る蒼司の顔を見て、息を呑んだ。蒼司の顔には、深い憎しみと、狂気的なまでの執念が刻まれていた。

「朽木蒼司…彼が、全てを仕組んだんですね」

彩由美は、震える声で呟いた。

「そうだ。蒼司は、過去に雅也さんによって人生を狂わされ、復讐の機会を伺っていた。そして、VR技術とクロノスの花を利用した、完璧な復讐計画を実行に移したんだ」

葉羽は、これまでの調査で得た証拠と、自身の推理を基に、事件の全貌を解き明かした。時間、視覚、嗅覚、仮想現実――全てのピースが繋がり、一つの真実にたどり着いた。

「でも、一つだけ分からないことがある。蒼司の目的は、雅也さんへの復讐だけだったのだろうか? 彼の復讐計画は、あまりにも大掛かりで、複雑すぎる。まるで、何か別の目的があるかのように……」

葉羽は、まだ解明されていない謎に、思考を巡らせた。

その時、玄関のチャイムが鳴った。葉羽は、彩由美に待機するよう指示し、玄関へと向かった。ドアを開けると、そこに立っていたのは、白銀零士だった。彼の顔は青白く、目は血走っていた。

「神藤君、話がある。君が推理したことは、全て間違っている」

零士は、低い声でそう言った。彼の言葉は、まるで氷のように冷たく、葉羽の心に不吉な影を落とした。
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